昨日の朝、経済通の同僚アーニーからメールが届きました。Seekingalpha.com という投資通が読むサイトの記事リンクが貼ってあります。タイトルは、
Japan’s Unsustainable Debt Burden: Playing With Fire
持続不能な日本の負債:危険な火遊び(拙訳ですが)
この記事は、「日本の経済は国民の貯蓄高が下支えしている」という通説を全くの幻想であるとし、このまま手をこまねいていると債務はコントロール不能な状態に突入しかねないと指摘しています。アーニーが、これにコメントを付け加えます。
Japan’s problems are high debt taken on during last 10 years to stimulate their stagnant, deflationary economy and their aging population (the ratio of retired to productive citizens is getting out of whack).
前半はともかく、この最後のカッコ内が引っかかりました。Out of whack (アウト・オブ・ワック)というフレーズは今まで何度も聞いてますが、一度もきちんと意味を確認したことが無かったのです。「既に引退した人の数と就業人口との比がOut of whack になりつつある」とアーニーは言っているのですが、それってどういうこと?
さっそくwhack の意味を調べたところ、「強く叩くこと、またその音(ぴしゃり)」と訳されています(ちなみに、もぐら叩きゲームは “Whack-A-Mole” と呼ぶそうです)。じゃ、Out of whack は?と続けて調査すると、「調子が狂って、具合が悪くて」となっています。
The copy machine is out of whack.
コピー機が故障してる。
My back is out of whack.
背中の調子が悪い。
なんでだ?「ワック(ぴしゃりと強打)」にアウト・オブを加えても、そんな意味にはならないでしょ。
で、いつものように同僚たちに聞いてみます。まずシャノン。
「知らないわ。なんでかしら。」
次に物知りのディック。
「分かんないな。クレイジーな英語表現のひとつだね。全く意味の繋がりが見えないよな。」
最後にステヴ。
「ただそう言うんだよ。意味?さあね。」
気持ち悪いので、仕事中に調査続行。10分後、ようやく語源を探し当てました。
Whack はもともと、物を叩く時に出る音から来た擬音語であろう、とのこと。18世紀に、盗賊どもが犯罪で得た報酬の分け前をwhack と呼んだことから、「Agreement(合意)」という意味でも使われるようになります。その後、 “In fine whack” という、合意にある、つまり「良い状態」を指すフレーズが生まれます。で、Out of whack が逆の意味で使われ始めた、とのこと。
ふ~ん、なるほどねえ。随分な紆余曲折を経ていたのね。アーニーのメールの最後の文章は、こうなると思います。
“The ratio of retired to productive citizens is getting out of whack.”
「既に引退した人の数と就業人口とのバランスが崩れつつある。」
毎度のことだけど、この言葉をしょっちゅう使っているアメリカ人たちが誰ひとりとしてまともに説明出来なかった事実の方が、語源そのものよりも面白かったです。
2011年11月29日火曜日
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トランプが最近プエルトリコのニュースで使っていました。参考になりました。語源がわかると覚え安いですよね。
返信削除感心しない使い方でした。日本語にどう訳されたのでしょうね?
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