2013年4月30日火曜日

Get a black eye 評判を落とす

先日、サンディエゴ支社の給湯室で同僚マイケルと話す機会がありました。半年前まで彼は、ある大手の石油会社に安全担当の専門家として二年ほど出向していました。ある日のこと、ビル内に妙な薬品臭が立ち込めているのに気づいたそうです。臭いの元をたどって廊下を進んだところ、実験室で若い社員が一人、二つの溶液を同じ容器に移しているのを発見。とんでもなく「混ぜたらキケン」な薬品だったらしく、即座に中止させて避難を促したそうです。マイケルは適切に溶液処理を施した後、先ほどの社員に会って懇々と諭したのだとか。

「下手すりゃ死んでたんじゃない?その人。」
「うん、危ないところだった。僕の在任中で一番ヤバい事件だったな。」

「きっと彼、二度と同じミスはしないと思うよ。貴重な恐怖体験をしたからね。」
そこで彼がニコッと笑い、こう言いました。

“Without getting a black eye!”
「ブラック・アイをもらうこと無くね。」

対話の相手が話を終わらせる際に、こんな風に茶目っ気たっぷりに(何ならウィンクまでして)慣用句みたいなのをぶち込んで来るパターンって、結構多いんです。困ったことに、意味が分からなくても何となく聞き返せない。だって、まるで「決まったゼ」みたいなトーンなんだもん。

で、別の同僚リチャードの部屋を訪ねます。
「顔を殴られた時に目のまわりが青黒くなるでしょ。それが転じて、不名誉な事件を指すようになったんだと思うよ。評判を落としたり、失敗の責めを負ったりするっていう意味でね。」

「仕事中に使うとしたら、どういう場面が考えられる?」
「Cプロジェクト、知ってるでしょ。新しいPMが引き継ぐ度に首切られてさ、もう何人目かも分からないヤツ。」

「ああ、知ってる、それ。上層部がなりふり構わず人員削減を繰り返した結果、あのプロジェクトにシワ寄せが来たんだよね。」
ため息交じりに、リチャードがこう言いました。

“We got a black eye over that project.”
「うちはあのプロジェクトで評判落としたよ。」
「オッケー。これで意味が理解出来たよ。有難う。」

リチャードの部屋を去ってから、ふと新たな疑問が浮かびました。

Black Eyed Peas って名前のバンドがあるけど、「評判落としたお豆たち」ってことか?
かなり突っ張って尖がった出で立ちを見ると、自分からそこまで卑下したバンド名を名乗るとはとても思えない。う~む、なぞだ

色々調べたところ、アメリカ南部の黒人伝統料理soul food と呼ぶそうです)でよく使われる材料に、Black Eyed Pea という、まるで表面に黒目がプリントされたようなお豆があることが分かりました。彼らは自分たちグループをfood for the soul 「魂の糧」と見なし、soul food とシャレて命名したみたいです

君たち、まぎらわしいぞ!

2013年4月28日日曜日

Congratulations (おめでとう)は何故複数形なのか?

先日、久しぶりにダウンタウン・サンディエゴ支社に出向いた際、廊下でばったりと同僚レベッカに会いました。彼女は先週引退したのですが、それを祝うための会がその日の夕方に予定されていたため、あらためて出社していたのです。

“Congratulations. Happy retirement!”
「引退おめでとうございます。」
「有難う、シンスケ!」

そういう短い挨拶を交わした後、同僚シャノンと出会います。最近暫く会っていなかったので、ちょっと話そうよ、と彼女を座らせました。
あのさ、さっきレベッカと話す機会があってお祝いを言ったんだけどCongratulationがどうしていつも複数形なのか、前々から不思議に思ってたんだ。理由教えてくれる?

「ええ~っ?そんなの考えたことなかった。いっつも複数形だもの。」

しばらく黙った後、彼女がこう説明しました。

もしも単数形だったら寂しいじゃない。お祝いって浴びせるShowerものでしょ。」
後で何人かに同じ質問をしたのですが、みなシャノンと同意見でした。

「あ、そうだ、ところでさ、これはまだ正式発表じゃないんだけど…。」
近況を伝えようと私が話し始めたところ、急にうろたえるシャノン。

「え?やだ。何?やめてよ…。」
「5月に入ったらちゃんと皆に言おうと思ってるんだけど…。」

「やだ!なんなの?聞きたくないかも…。」
これって、転職しようとしている会社員が仲の良い同僚に耳打ちするような切り出し方なのですね。彼女の過剰なリアクションを半ば面白がって、ゆっくりと間を持たせてから最新ニュースを伝えました。
実は数週間前、オレンジ支社環境部門のトップであるクリスピンから、組織変更の計画を告げられたのです。
「シンスケには僕の直属になってもらおうと思うんだ。君のやっていることは、組織全体の業績を左右するだろ。だったらリックの下にいるよりも、僕に直接報告が来るようにした方がいい。今ティルソの下にいる財務系の社員を君の下に動かして、プロジェクト・コントロールのメンバーとして使えるようにトレーニングしてもらいたい。」

後でよく聞いたら、財務系に限らずサポート系の社員5人を私の直属に加える計画だそうで、いきなり大所帯の長になるみたい。クリスピンからこれを聞いたリックが電話をかけて来て、
「良かったな。僕達がずっと話し合ってきた構想がいよいよ実現するってことじゃないか!」

と興奮気味。
「もちろん君みたいな部下を失うのは寂しいけどね。」

そんなわけで、オレンジ支社に出張する回数がこれから増える見込み。

話を聞き終えたシャノンは祝福の笑みを浮かべ、
「コングラチュレイションズ!」


小さく叫びました。

最後の「ズ」に気持ちを込めて

2013年4月22日月曜日

Nonchalant のんちゃら~んと

ラジオやCD本を聴いていると、

「あ、この単語、これまでに何回も聞いてるぞ。後で意味を調べなきゃ!」
と心に決める瞬間が度々訪れます。しかし大抵は運転中なので、目的地に着く頃にはすっかり忘却。で、また同じ単語に出くわして…、という経験を繰り返すわけ。

私にとってそんな単語のひとつが、「のんちゃら~んと」でした。語感が面白いのでずっと気になっていたところ、先日同僚リチャードとBachelor Partyバチェラー・パーティー)に行ったことがあるか」という話題で盛り上がっている最中にこれが飛び出しました。バチェラー・パーティーというのは、男が結婚直前に仲間を招き、独身生活の最期を祝うというもの。南カリフォルニア人の定番は、ラスベガスに繰り出して遊びまくる、というパターンらしく、私も一度お呼びがかかったのですが、都合が合わず欠席しました。

リチャードの出席したパーティーには、若くて綺麗なストリッパーが二人来て、きわどいダンスを披露してくれたそうです。その後、一人ひとりの席にやって来て、目をしっかり合わせて追加サービスを売り込んで来たのだと。

「それがさあ、かなりえげつない行為を並べ立ててそれぞれの料金を言うんだよ。のんちゃら~んと。まるでマクドナルドのカウンターで、客にビッグマックの料金を告げるみたいにさ。」
「おおっ、ちょっと待った!今何て言った?」

今、確かに言ったよな、「のんちゃら~んと」って。さっそくリチャードに解説をお願いしたところ、これは
Nonchalant

というスペルで、「まるで大したことじゃない(no big dealとでもいうような態度」を指すそうです。ネットで確認したところ、これはフランス語由来の単語で、「無頓着な、無関心な、無感動な」などという意味らしい。日本語として聞いた時の語感とかなり近いじゃない!こういう単語、好きなんだよなあ
今日の午後、別の同僚ステヴにも意味を確認しました。

「ビジネス・シーンではどういう使い方をするの?何かいい例文ない?」
彼は数秒間考えた後、こう答えました。

“Mike said that his project tanked. He was being surprisingly nonchalant.”
「マイクは自分のプロジェクトの業績が急に悪化したよと言った。びっくりするくらい、のんちゃら~んと。」
なるほど。動揺して当然、という場面でも全く動じない様子を指すわけね。

というわけで、私の和訳は、これ。

 “He was being surprisingly nonchalant.”
「びっくりするくらいあっけらかんと。」

2013年4月18日木曜日

R.S.V.P. 再び

今朝10時過ぎのこと。同僚のジムが私のオフィスに顔を出します

「交差点の向こう側を警察が封鎖してるぞ。何だろう?」
振り向いて窓の外を見ると、確かにパトカーが道の真ん中で停車しています。初老の婦警さんが車道の真ん中に立ち、進入を試みる車両を止めています。何か事件があったみたい。よくよく見ると、パトカーのドア(運転席側)に、「R.S.V.P.と書いてあります。え?なんで


Répondez s'il vous plaît

というフランス語のフレーズを略したのがこの四字熟語(?)で “Respond please.” つまり、「お返事願います」という意味(以前このブログに書きました)。それはいいとして、なんでパトカーの車体にそんなこと書くの?もしかして、助手席側のドアに別のメッセージが書かれてるのかな

助手席側:「怪しい人を見かけませんでしたか?」
運転席側:「お返事願います。」

いやいや、そんなわけないか。
周囲の同僚に聞いて回ったのですが、意外なことに、だ~れも知りません。ええっ?どうして?一体全体、何の略なんだろう?

仕方ないので、ネットで調査。なんと、答えは至ってシンプルでした。
Retired Senior Volunteer Patrol
「退役ボランティアパトロール隊」

な~るほどね。一件落着!

2013年4月16日火曜日

Accreditation あくれでてーしょん

ここのところ、社内が妙にざわついてます。

PM Accreditation というプログラムの施行が、先月発表されたのです。これは、社員がプロジェクトマネジャーとしての知識や技術を持ち合わせているかどうかをテストし、合格なら正式にPMとして認めようじゃないか、という話ですCertificationサーティフィケーション)が資格の「証明」を指すのに対しAccreditationアクレデテーション)は資格の「認定」を意味しますPMI(プロジェクトマネジメント協会)のような独立機関が個人に対し、PM能力の証明をするのがCertificationサーティフィケーション)で、今回は会社が社員ひとりひとりのPMとしての実力を「認定」するわけですね

プロジェクトの業務内容に精通しているから、とか、クライアントの信頼を受けているから、などという曖昧な理由でPMの座に就くことは金輪際許されない。そういう厳しいメッセージとして受け止めた人達に、戦慄が走りました。現実問題として、今の時点でPMを名乗っている社員もポジションから下ろされる可能性もあるのですから、事は深刻です。

PhD博士号)を持っているからとか、この手の仕事を20もやっているからというだけで、その人間がPMとして優秀であるとは限らない。俺達はビジネスをやってるんだ。この機会にそういう甘えた輩を外して、会社の損失を食い止めるべきだ。」
と歓迎する人と、

「このプログラムが原因で、技術的に優秀な人間が会社を去るかもしれない。」
という懸念を漏らす人がいます。

「シンスケにとっては追い風だよね。PM重視の風潮が高まることで、君にヘルプを求める声も大きくなるだろうからね。」
と言ってくれる人もチラホラ。

私の目下の悩みはAccreditationという単語が発音しにくいことです。この話題が出て意見を求められた時、三回に二回は必ずつっかえてしまうのです
あくれでてーしょん、あくれでてーしょん。

あ~言いにくい!

 

2013年4月10日水曜日

Monday Morning Quarterback 月曜日のスポーツ評論家

今日のお昼、オレンジ支社でマネジャー以上対象の安全講習がありました。私も去年から正式に部下が出来たので、お呼びがかかったのです。北米西部を所轄する安全担当者シェリーが、支社のトップマネジメントも含めた20人ほどの聴衆に向かい、「安全第一、事故ゼロ目標」を訴えます。

我が社では、どんな会議でも出だしに Safety Moment 安全行動喚起に役立つ個人の体験談を披露する会)をすることになっているのですが、今回は建築部門のマネジャーが、こんなエピソードを紹介しました。

「先週クライアントとの会議のためにシカゴへ飛んだんだ。空港から目的地に向かってレンタカーを運転していたら、いきなり繁みから鹿が飛び出して来て、気が付いたら衝突事故さ。幸い怪我はなかったんだけど、とんだ目に会ったよ。あれはどう考えても防ぎようが無かったな。」

これを受けてシェリーが、
「どんな事故でも詳細に分析してみると、防ぐ手立ては必ずいくつか見つかるものです。」

という趣旨の切り返しをしたところ、このマネジャーが半ばいきり立って反論します。
「真昼間に見通しの良い道路を制限速度以下で走っていたんだぜ。前方には充分気をつけてたし。一体どうやったら防げたって言うのか、聞かせてもらいたいな。」

「前後の行動など、事故の背景を充分に調べなければきちんと答えられませんが、何かしら対策は導き出せるはずです。たとえば運転する時間帯を変えるとか。」
間髪を入れず、会議テーブルの反対側の端に座っていた男性社員がこんな言葉を発しました。

“It’s easy to be Monday-morning quarterbacking!”
「月曜の朝のクォーターバックは簡単だよ!」
え?月曜?くぉーたーばっく?なんだそれ?


講習終了後、ボスのリックに解説を求めます。

「それはよく使われるフレーズだよ。ほら、プロフットボールのゲームは大抵日曜の晩にあるでしょ。月曜日の朝のスポーツ番組で、あそこはこういう攻撃をすべきだったとか何とか、解説者たちが侃侃諤諤やってんの見たことない?そこから来てる言い回しなんだ。クォーターバックは試合をコントロールするポジションで、彼の動きひとつがゲームの流れを大きく変えてしまうこともある。だから解説者たちはクォーターバックになり切って、俺ならああしたこうした、とケチをつけるんだ。このフレーズは、過ぎたことを振り返って文句をつけるのは簡単だっていう意味だね。」

な~るほどね~。
「同じ意味合いで、hindsight is 20/20 という表現もあるよHindsightは「後知恵」)。後になって出来事を振り返る時は、急に視力が両眼2.0 になるってね。」

私の疑問はこれですっきり解消したわけですが、危機管理に一家言あるリックは更に続けます。
「僕もシェリーに賛成だな。大事なのは、どこまで真剣に安全対策を考える気があるかってことだと思うよ。防ぎようがなかったって言って諦めてしまえばそこで思考がストップするからね。防ぐ手立ては必ずあるよ。実行するかどうかは別として、鹿が嫌いな超音波みたいなのを出す機械を車に設置するって手もあるんだし。」

「ええっ?そんなモノがあるんですか?」
あとで調べたら、本当にそういう装置、売ってました。

うちのボスってすげ~!

2013年4月8日月曜日

ジャンク・レフリー

息子が通う日本語補習校の同級生で、お母さんが日本人、お父さんがアメリカ人という女の子がいます。このお父さんが私と同い年なのですが、恐らく同年代の平均的男性三人分くらいのエネルギーを持つスーパーパワフル・ガイ。仕事を普通にこなしつつ夜は大学講師を務め、更には二つ目の修士号取得に向けて大学院に通ってます。それだけでもビックリなのに、長男が始めたサッカー教室に付き合ううちに、レフリーの資格まで取ってしまったのだと。少年サッカーのレフリーという仕事は基本的にボランティアなので、わりとどたキャンが多いそうです。でもこのお父さんは律儀な性格で、レフリー役を頼まれるとどんなに多忙でも何とかやりくりして引き受けてしまうのだと。そうしてどんどん頼まれているうちに、昇格しちゃったのだそうです。
始めた頃は奥さんに、
「俺はまだまだジャンク・レフリーだから。」

と言っていたそうなのですが(というのは奥さんの弁)、あっという間にレベルが上がったため、彼女が
「もうジャンクじゃなくなったのね。」

と労ったそうです。すると途端に顔をこわばらせ、
「ジャンクって何だよ?」

と、ぶすっとした表情で尋ねたそうです。
「え?だってあなたがそう言ってたんじゃない。私は素直に、そういう表現があるのね、って思ってたんだけど…。」

慌てる奥さんに、彼がゆっくりとこう説明したそうです。
俺が言ったのは、 adjunct ジャンクレフリーだよ。」

 Adjunct というのは「付属の」とか「補助の」とかいう意味。つまり彼は、自分は「非常勤の」レフリーだと言いたかったのですね。それをジャンク呼ばわりされ、さすがにむっとしたみたい

 こういう聞き間違えって、私も日常茶飯事です。先日も同僚のステヴに、
「アメリカ人はイースター(復活祭)に何をするものなの?」

と尋ねたところ、
「小さい子供がいる家庭なら、エッグハントをするね。庭のあちこちに玉子を隠して、それをちびっ子たちに見つけさせるんだ。」

と話してくれました。

「ああ昔はやってた、うちの子も。でも彼はもう11歳だからね、さすがにエッグハントは卒業かな。僕みたいに、子供が大きくなっちゃった人はどうすればいいの?」

と更に押したところ、彼がこう答えたのです。
“You could die.”
「死ねば?」

へ?それは一体どういうジョーク?ギョッとする私に、

「あ、ダイは D Y E のダイだから。」

と付け加えるステヴあ、なんだ、dye 染める)ね
「イースターには玉子に彩色して飾る人も多いんだ。」

だそうです。彼が言いたかったのは、こういうこと。
“You could dye (eggs).”
「(玉子)に色を塗るのもいいんじゃない?」


まったくもって、英語の達人への道は険しい…。

2013年4月5日金曜日

人骨発見!

数日前の早朝、考古学者の同僚ヘザーからメールが届きました

「折り入って頼みがあるんだけど…。」
今週末締め切りの財務レポート作成をお願いしたい、とのこと。彼女は進行中のプロジェクトを8件ほど抱えているのですが、先週から現場に出てばかりでとてもオフィスワークの時間が取れそうにない、というのです。お安い御用、と四の五の言わずに引き受ける私。先週のスタッフミーティングの席上、確かエリックが、

「ヘザーが夜中の一時半に、クライアントからの電話で起こされた。」
などと話していたのを思い出し、何か一大事が起きているような気がしたのです。さっそく文化財調査チームの若き精鋭ティファニーを訪ね、状況を探ってみることにしました。

「地下鉄工事の現場で、骨が出たのよ。それでヘザーが呼び出されたってわけ。」
「何で夜中に?朝まで待てなかったのかな。」

「そういうプロトコル(決まり)なのよ。土の中から骨が出たら、即刻工事を止めて専門家を現場に呼ぶの。それで、人骨だってことになったらそれがどの時代の骨なのか、周囲にも埋まっている可能性があるのか、なんてことを検討するの。」
「で、人骨だって確認出来たの?」

「そうなのよ。しかもこれが、めちゃくちゃ古い物かもしれないのよ。」
そうして現場から送られた、半ば化石化した骨の写真をコンピュータ・ディスプレイ上に映し出しました。彼女は自分の棚から薄い本を取り出し、パラパラと開いて見せてくれました。ページ上に、人間を含めてありとあらゆる動物の骨の写真が並んでいます。しかも身体の部位別に。

「今回のは大腿骨よ。鹿や馬のと形を較べてみて。人間の骨だって分かるでしょ。」
「ほんとだ。確かにこれは人間のものっぽいね。」

「私、行きたくてしょうがないの。ホテル代は自分で出すから出張させてってお願いしてるのよ。だって人間の骨が出るなんて、本当に稀なことなのよ。」
ティファニーの顔は、興奮で上気しています。

“I’m super-excited!”
「私、チョー舞い上がってるの!」

翌日、同僚リチャードにこの話を伝えたくて彼の部屋を訪ねたら不在。マリアの部屋へ行って彼の居所を聞いてみたら、
現場に出かけてるわ。彼、Desalination (海水淡水化)のプロジェクトに関わってるでしょ。」

「ええっ?あのクールなプロジェクトの現場?いいなあ!」
そういえば、リチャードから前に聞いていました、この話。自分の中で、現場への愛がむくむくと蘇って来るのを感じましす。ここんとこ、ず~っとオフィスワークだもんなあ。そろそろ現場、行きたいなあ。

マリアに人骨発見話を紹介し、現場の仕事には人を「燃えさせる」何かがあるよね、と頷き合いました。
「私も10年くらい前、すごいプロジェクトに参加したのよ。」

それは、スペースシャトル・コロンビアの事故現場での遺物回収プロジェクト。テキサスの僻地に駐留し、NASAや消防隊などとチームを組んで数週間現場の捜索をしたのだと。
「もちろん悲しい出来事だったわ。毎週の経過報告会ではNASAの人たちが声を詰まらせていたけど、すごく大事な任務だったし、NASAの人たちと友達にもなれたし。今まで関わった中で、最高のプロジェクトだったわ。」

数々のクールなプロジェクトの話を聞いて、ものすごく元気が出ました。

やっぱ現場はいいなあ!