先日のジムの送別会で、昨年転職してわが社を去ったメリッサと再会しました。彼女は凄腕のエンジニアであると同時に、有能なプロジェクト・マネジャーとしても知られていました。新しい会社に入って一年も経たないうちに、南カリフォルニアを統括するPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)の長を任され、我々元同僚を感心させたほど。ところがこの新しいポジションがかなりの激務らしく、私の最近のメールに二週間も返信出来なかったほど。
数ヶ月前、彼女の新居に家族で招待された際、最初は恥ずかしがっていた4歳の娘シルビアが、我々の帰り際に綺麗なお姫様の衣装に着替えてダンスを披露してくれました。その四歳児が先日、顔を紅潮させて小さなこぶしを机に叩きつけたのだそうです。
「ママ!うちで仕事するのヤメテよ!」
このところ、あまりの忙しさに仕事を持ち帰って週末もパソコンに向かっていたメリッサ。それがどれだけ娘を傷つけていたか、この時初めて気がついたのです。両手で胸をおさえてメリッサが苦しげに言いました。
“That was a wake-up call.”
この表現、最近よく耳にするのですが、一般にはホテルでフロントに「朝5時に起こしてね」とお願いするモーニングコール(これは和製英語)のことです。でも、今回メリッサが意味していたのは、固い表現だと「警鐘」。こりゃやばいぞ、と思わせる報せですね。柔らかい言い方だと、「これにはギクリとして我に返ったわよ」というところでしょうか。
母親であり妻でありつつフルタイムで働く女性というのは、こういう苦しさを避けて通れないのでしょう。母親であるだけでも充分大変なのに!私なんかは、こういう立場にいる女性は無条件で敬服してしまいます。能天気にタラタラ仕事してて、ほんとに申し訳ない。
2010年9月25日土曜日
2010年9月22日水曜日
Under the gun 切羽詰って
5年以上の付き合いになる熟練PMのジムが、ワシントンDCのオフィスに転勤することが決まりました。かつて一緒に仕事した仲間が集まってオレンジ郡のレストランで送別会を催すことになり、昨日の夕方、出張先のロングビーチから現地に向かいました。ところが、高速道路が予想以上に渋滞していて、駐車場に車を停めた時は既に集合時間を5分ほど回っていました。急いでいたにも関わらず、車を降りる前に何気なく携帯電話をチェックしたところ、メッセージが入っています。南カリフォルニア地区の上下水道部門長、クリスからでした。
I’m sort of under the gun and need to talk to you right away. Can you give me a call?
ちょっと切羽詰ってるんだ。今すぐ話したい。電話くれるか?
この Under the gun という表現は、直訳すれば「銃を突きつけられてる」で、「切羽詰った」「プレッシャーのかかった」状況を指します。まるで「24」のジャック・バウアーが、武装した敵グループに捕えられた仲間からのSOSを受けた時のような感じ。迷わず折り返し電話をかけましたよ。
というわけで、すぐに返事が欲しい時は、この I’m under the gun. という一言をメッセージの冒頭で使うと効果的だということが分かりました。
I’m sort of under the gun and need to talk to you right away. Can you give me a call?
ちょっと切羽詰ってるんだ。今すぐ話したい。電話くれるか?
この Under the gun という表現は、直訳すれば「銃を突きつけられてる」で、「切羽詰った」「プレッシャーのかかった」状況を指します。まるで「24」のジャック・バウアーが、武装した敵グループに捕えられた仲間からのSOSを受けた時のような感じ。迷わず折り返し電話をかけましたよ。
というわけで、すぐに返事が欲しい時は、この I’m under the gun. という一言をメッセージの冒頭で使うと効果的だということが分かりました。
2010年9月20日月曜日
Up to Snuff お眼鏡に適う
熟練PMのジムが先日、フロリダ在住のチームメートに宛てて、こんなメールを送りました。
Our client has added another layer of review on our invoices and we have had to accept short payments because receipts have not been up to snuff.
クライアントは請求書を念入りにチェックするため、人を増やした。彼らの基準を満たさなかったため、満額支払われなかった請求書もある。
そして、「出張の際は、食事しても駐車場で料金を払っても、必ず明細入りのレシートを貰っておくこと」という注意を付け足しました。
ジムの使ったこの Not up to snuff ですが、語源を調べると、Snuff というのは「嗅ぎタバコ」もしくは「においをクンクン嗅ぐ人」という意味でした。昔、嗅ぎタバコを吸う人というのは地位が高く裕福で、いわゆる「違いが分かる」人だとされていたようです。そういう人のお眼鏡に適うのが Up to snuff で、Not up to snuff は「基準に満たない」ということになったのだそうです。
ところでこの表現を調べている過程で、Snuff というのはムーミンに出てくるスナフキンの「スナフ」だということを知りました。原語でのスヌスムムリクも、「嗅ぎたばこを吸う男」という意味だそうです。彼の孤独な後姿、かっこよかったなあ。いかにも「違いが分かりそうな」男でした。
Our client has added another layer of review on our invoices and we have had to accept short payments because receipts have not been up to snuff.
クライアントは請求書を念入りにチェックするため、人を増やした。彼らの基準を満たさなかったため、満額支払われなかった請求書もある。
そして、「出張の際は、食事しても駐車場で料金を払っても、必ず明細入りのレシートを貰っておくこと」という注意を付け足しました。
ジムの使ったこの Not up to snuff ですが、語源を調べると、Snuff というのは「嗅ぎタバコ」もしくは「においをクンクン嗅ぐ人」という意味でした。昔、嗅ぎタバコを吸う人というのは地位が高く裕福で、いわゆる「違いが分かる」人だとされていたようです。そういう人のお眼鏡に適うのが Up to snuff で、Not up to snuff は「基準に満たない」ということになったのだそうです。
ところでこの表現を調べている過程で、Snuff というのはムーミンに出てくるスナフキンの「スナフ」だということを知りました。原語でのスヌスムムリクも、「嗅ぎたばこを吸う男」という意味だそうです。彼の孤独な後姿、かっこよかったなあ。いかにも「違いが分かりそうな」男でした。
2010年9月19日日曜日
アメリカで武者修行 第24話 このままおめおめと引き下がれないわ。
2003年7月中旬。ケヴィンは実家のあるオークランドで結婚式を挙げた後、新婚旅行に出かけるために二週間の休みを取りました。ほぼ同時に、私も週末を挟んで三日間だけ有給休暇を取り、東海岸へ飛びました。義理の両親と合流し、家族五人のドライブ旅行です。まずはヴァージニア州ノーフォークに飛び、義父母の知り合いで、海辺の豪邸に住む老夫婦の家に二泊させてもらいました。翌日はペンシルバニア州ランカスターという、アーミッシュで有名な街へ行きました。アーミッシュとは、質素な生活様式を貫くキリスト教徒。電気は一切利用せず、冷蔵庫はガス式、アイロンは圧縮空気式という徹底ぶり。もちろん自動車は使わず、馬車か自転車で移動します。時速80キロで車が突っ走る道路の脇を、トコトコと行き交う馬車を何度も目にしました。電気も電話も、もちろんインターネットもない生活なんて、今の自分には耐えられそうもないなあと思いました。デジカメの充電が切れて記念写真が撮れず、地団太踏んで悔しがっていた妻も、きっと私と同意見でしょう。そして最終日の日暮れ前、ニューヨークのワールド・トレード・センター跡地に到着しました。新しいビルの基礎工事が既に始まっていて、まるで巨大隕石が落ちた後のように、広大な面積の地面が深くえぐれていました。
さてその翌日、ニューアークの空港で義父母と別れ帰途につきました。ところが、飛行機に乗り込んだ途端雷雨が激しくなり、待機状態が長時間続きます。結局、飛び立ったのは三時間後の午後五時でした。中継地のクリーブランドでは、一日一本しか無いサンディエゴ行きが既に飛び立った後で、翌日の夕方まで便はないとのこと。しかたなくこの地で一泊することになりました。空港の公衆電話から職場に電話すると、老フィルが
「そりゃまた退屈なところで足止めを食ったもんだな。」
と愉快そうに笑いました。
「仕事の方は順調だよ。せっかく一日延びたんだ。夏休みを最後まで楽しんで来るんだな。」
一日遅れで帰宅し、翌朝は早起きしていつもより一時間早く職場に入りました。さっそく溜まったメールのチェックを開始。すると、何かただならぬ雰囲気のやりとりがいくつか混じっていることに気付きました。どうやら留守中に事件が起きたみたいだな、と覚り、ちょうど出勤してきたフィルに尋ねました。彼の口から飛び出したのは、我々JVにとって最悪のニュースでした。
「火曜の夕方、有料区間道路の設計契約が破棄されたんだよ。お前さんとの電話を切ったすぐ後だった。」
現在進めている無料区間の道路設計はあと半年で終わる見込みですが、有料道路の設計が始まればあと三年は食い繋げる予定でした。元請けのORGから毎日ギリギリと絞り上げられながらもこれまで我慢してきたのは、予算数十億の有料道路設計業務を目の前にちらつかされていたからなんです。正式なゴーサインを今か今かと待ちながら従順に働いて来て、ちょうど無料区間の設計が峠を越えたところだった我々に、ORGは契約書のTermination for Convenience (いかなる都合によっても中途で契約破棄できる)条項を適用し、あっさりと三行半を叩きつけたのです。有料区間の仕事が無いと分かれば、50名以上いる現在のチームは、どう考えても所帯が大き過ぎます。
「これからどうなっちゃうんですかね。」
とフィルに聞くと、
「さっぱり分からんよ。今日明日中に解雇ということはないだろうが、お前さんもわしも尻に火がついたことだけは確かだな。」
と答えました。
続いてリンダが現れたので話しに行くと、
「訴訟に向けて行動開始よ。このままおめおめと引き下がれないわ。」
と鼻息を荒くしています。
「あちらの都合でいつでも契約破棄できるという条項がある以上、勝ち目はないんじゃないですか?」
と聞くと、
「手はあるわ。それにこういうのはタイミングが大事なの。すぐにクレーム文書を作るわよ。今日中に証拠書類をまとめあげて、明日の朝一番でクラウディオとマイクに上げましょう。」
休み明けだというのに、結局夜11時まで残業する羽目になりました。
翌週の月曜、新婚旅行から帰ってきたケヴィンにとっても、契約破棄のニュースは衝撃でした。彼は結婚を機にサンディエゴで家を買おうとしていたのです。あわてて購入計画を中止し、アパートの月借りを検討することにしました。
「なんて週だ。結婚して帰ってきたら、いきなり職の危機とはな。」
さらに、三人の契約社員が私の留守中にひっそりと解雇されていたことも聞かされ、気持ちが沈みました。ウォーキング仲間のカルヴァンもそのうちの一人でした。都市施設担当のニキータがやってきて、怒りをぶちまけました。
「カルヴァンの話を聞いた?彼、契約破棄事件の日はお休みだったからニュースを知らなかったの。次の日出社してコンピュータを使おうとしたらログイン出来ないのよ。で、何かソフトウェアのトラブルだろうと思って午前中ずっと格闘してたのね。まわりの皆も原因をつきとめようと頑張ったわ。で、一旦諦めて皆と一緒にランチに行ったの。オフィスに戻ってみたら、自分が朝一番でクビになってたことを、上の誰かから知らされたってわけ。こんなひどい仕打ちが許される?」
同じく契約社員であるニキータにとっては、他人事とは思えない話のようです。私も、マネジメント層の冷酷さに腹の底が冷える思いがしました。さっそくカルヴァンの携帯電話に電話してみました。彼はいつもと変わらぬのんびりした声で言いました。
「俺は大丈夫だよ。心配ご無用。次の仕事探しを始めるだけの話さ。」
水曜の午後、ケヴィンが私のキュービクルに来て言いました。
「聞いたか?マイクが今週金曜からまた召集らしいよ。今度は三ヶ月だって。」
「え?なんで?戦争は終わったのに?」
「今度は国土再建の仕事だってさ。」
どうやらイラクに行って建設関係の仕事をするようですが、当の本人も正式配属になるまでは、詳しい目的地も任務も分からないようです。
「彼がいるうちに、今後の身の振り方を相談しなきゃいけないな。さっそくマイクと話してくるよ。」
そう言って彼のオフィスに入って行ったケヴィンは、十分ほどして私のところへ戻って来ました。すっかり打ちのめされた様子です。
「なんてこった。最悪の場合、今月一杯でクビだってさ。」
「何だって?あと三週間しかないじゃない。」
「ああ、まったく参るよ。俺の仕事がほぼ終わりに近づいていることは分かってたけど、現実に最終日を宣告されるのはキツいよ。」
それから少し笑って、
「シンスケはまだ大丈夫だと思うよ。契約の仕事は当分続くだろうからね。それでも念のため、マイクと話しておいた方がいいとは思うけど。」
さっそくマイクのオフィスを訪ねました。
「次の仕事探しを始めるのはいつ頃がいいでしょうか?」
と恐る恐る切り出すと、返ってきたのは「そりゃ今すぐだ。」という答え。
「クラウディオも俺も、お前の仕事振りには満足してる。訴訟の行方次第じゃ、あと一年くらい今のポジションを維持できる可能性もないわけじゃないが、絶対あるという保証も出来ん。仕事探しを早めに開始したって、損にはならんだろ。」
その晩、妻と話し合いました。
「それで、どうするの?何かあてはあるの?」
「残念ながら、現時点では何も無いんだ。僕を採用したボス自身がいなくなっちゃうし、頼みの綱であるケヴィン自身が解雇寸前なんだよ。もうこうなったら、なりふり構わず就職活動を始めるしかないね。」
次の週、ボスのマイクはイラクへ向けて旅立ちました。私もケヴィンも、仕事を続けながら職探しを開始。アメリカで働き始めて9ヶ月。こんな事態を迎えることになるとは、予想もしていなかったのでした。
2010年9月17日金曜日
Persistence pays off. 粘り強さは報われる。
一昨日、ADPという団体からこんな手紙が届きました。
「ご請求いただいた 1,100 ドルは、残念ながらお支払い出来ません。」
つまり、約10万円の支払いを拒絶されたのです。会社を通じてFSA(Flexible Spending Account)というプログラムに参加しているのですが、これを扱っているのがADPという団体。この団体に、一年の初めに一定金額を納め、これを健康保険でカバーされない医療費に充てる、というのがプログラムの趣旨。この掛け金は課税されないので、全部使い切れば税金分得をするけど、使い切らない分は全部ADPに持っていかれる、という仕組み。当然、相手も商売だから、加入者が掛け金を使い切らないようにして儲けを出したいわけで、何かと難癖をつけて支払い申請をはねつけるのです。
「どうしよう。1,100 ドルは大金よ。」
とショックを隠せない様子の妻。「支払いできない」って、そもそも我々の金なのに…。
「大丈夫。任せといて。何とかするから。」
と私。
こういうことは初めてじゃないのです。ADPに限らず、支払いを理不尽に拒否したり、余分な金を騙し取ったりする会社はうんざりする程あります。クレジットカード会社はもとより、銀行もしょっちゅうやらかすし、公共サービスに近い電話会社だってそうなんです(日本では考えられない)。
こんなときモノを言うのは、「クレームレターを素早く書く能力」です。弁護士の上司の下で一日最低二通はクレームレターを書いて来た経験が、こんなところで活かされるわけですね。15分で「何故おたくが耳を揃えて全額払わなければならないのか」を筋道立てて執筆。これを一発FAX送信しました。
そして本日、支払いが行われたのをオンラインで確認しました。諦めずにコツコツとクレームレターを書くこと。これが出来れば、納得の行かない理由で金をむしり取られるリスクを軽減出来ます(怖い国です)。
同僚リチャードの部屋に行ってこのエピソードを披露した時、
「粘り勝ちってやつだよ。」
と言おうとしたのですが、英語が出てこない。何て言えばいいんだろう…?
“Persistence…”(粘り強さは)
と言いかけると、リチャードが
“Pays off.” (報われる。)
と続けてくれました。
Persistence pays off.
粘り強さは報われる。
う~ん、いい言葉だ。
2010年9月15日水曜日
Plain Vanilla ベーシック・タイプ
昔から、甘い物には全くそそられない私ですが、ラホヤにあるジェラート屋「Gelateria Frizzante」は別。大のお気に入りです。特にそこで食べるバニラ・ジェラートは至高の一品。チョコレートやらミントやら、フレーバーは何十種類もあるんだけど、私はずっとバニラ一筋。こんなに美味しいバニラがあるのに、みんなどうしてあんなにゴテゴテと色のついたものを食べたがるのか、不思議で仕方がない。
さて、今朝聴いてたCD本 “Crucial Conversations” に、
It’s just a plain vanilla.
というフレーズが出てきました。プレーンバニラ?バニラ味?ビジネスの話をしている場面で使われたフレーズなので、何だそりゃ?という感じでした。
さっそく、例によって同僚リチャードに質問。
「うん、それは基本形って意味だと思うよ。これといった味付けのない、一番ベーシックなタイプ。」
「じゃさ、僕がもしカローラに乗ってたら、 “My car is just a plain vanilla.” って言える?」
「それはまさにぴったりな例だよ。平凡で、これと言って特徴が無い車っていうことだね。」
う~ん、なんだかちょっと面白くないな。僕にとって、バニラは王様なんだけど…。
さて、今朝聴いてたCD本 “Crucial Conversations” に、
It’s just a plain vanilla.
というフレーズが出てきました。プレーンバニラ?バニラ味?ビジネスの話をしている場面で使われたフレーズなので、何だそりゃ?という感じでした。
さっそく、例によって同僚リチャードに質問。
「うん、それは基本形って意味だと思うよ。これといった味付けのない、一番ベーシックなタイプ。」
「じゃさ、僕がもしカローラに乗ってたら、 “My car is just a plain vanilla.” って言える?」
「それはまさにぴったりな例だよ。平凡で、これと言って特徴が無い車っていうことだね。」
う~ん、なんだかちょっと面白くないな。僕にとって、バニラは王様なんだけど…。
2010年9月14日火曜日
Right on! やったぜ!
サウスカロライナ支社にいる、マークというPMのオンラインレポート作りを手伝うことになりました。お互い、会ったことも話したこともないので、まずはEメールで
「本当にヘルプが必要ですか?」
「ああ、よろしく頼むよ。」
という合意形成があり、それから私がデータ分析とレポート草案作りを行いました。
「草案を送ります。内容が正しければ、これを基にオンラインレポートを作成します。どうでしょう?」
一時間後に彼から送られてきた修正を組み込んで草案を完成し、
「それじゃ、さっそくレポート作成にかかります。提出できる段階になったらまたメールします。」
とEメールを送信。すると、
Right on!
と一言書かれた返事が届きました。「ライトオン」?なんじゃそりゃ。
Right on schedule
予定通りに進んで
みたいに、何か名詞の前に置いて使うのなら分かるのですが、ただのライトオンじゃピンと来ない。ネットで調べたところ、「やったね!」とか「その調子!」とか「異議なし!」などと訳されています。でも、このケースにどれが当てはまるのか決められない。
さっそく、同僚リチャードを訪ねて質問。
「それは、相手への感謝と、嬉しい気持ちとが入り混じった言葉だね。」
「へえ、そうなんだ。でも、 Right と On を繋げただけでそういう意味になるの?脈絡が分からないんだけど…。」
「そうだね。文字面からは想像出来ない、全く訳の分からない表現だね。」
「他に、それに近い言い回しはある?」
「Great! とか Cool! がほぼ同じ意味だと思うな。」
おお、それなら語感がつかめるぞ。
「Right on! は中でもヒップな口語表現だよ。きっとシンスケがメールのやりとりしてるその人は、気さくな感じだと思うな。四角四面の生真面目エンジニアタイプは、そんな言い回しを使わないから。」
なるほど、人となりまでこの表現から窺えるのか。
となると、Right on! の日本語訳は何だろう?
「やったぜ!」
かな?う~ん、どうなんだろ?
「本当にヘルプが必要ですか?」
「ああ、よろしく頼むよ。」
という合意形成があり、それから私がデータ分析とレポート草案作りを行いました。
「草案を送ります。内容が正しければ、これを基にオンラインレポートを作成します。どうでしょう?」
一時間後に彼から送られてきた修正を組み込んで草案を完成し、
「それじゃ、さっそくレポート作成にかかります。提出できる段階になったらまたメールします。」
とEメールを送信。すると、
Right on!
と一言書かれた返事が届きました。「ライトオン」?なんじゃそりゃ。
Right on schedule
予定通りに進んで
みたいに、何か名詞の前に置いて使うのなら分かるのですが、ただのライトオンじゃピンと来ない。ネットで調べたところ、「やったね!」とか「その調子!」とか「異議なし!」などと訳されています。でも、このケースにどれが当てはまるのか決められない。
さっそく、同僚リチャードを訪ねて質問。
「それは、相手への感謝と、嬉しい気持ちとが入り混じった言葉だね。」
「へえ、そうなんだ。でも、 Right と On を繋げただけでそういう意味になるの?脈絡が分からないんだけど…。」
「そうだね。文字面からは想像出来ない、全く訳の分からない表現だね。」
「他に、それに近い言い回しはある?」
「Great! とか Cool! がほぼ同じ意味だと思うな。」
おお、それなら語感がつかめるぞ。
「Right on! は中でもヒップな口語表現だよ。きっとシンスケがメールのやりとりしてるその人は、気さくな感じだと思うな。四角四面の生真面目エンジニアタイプは、そんな言い回しを使わないから。」
なるほど、人となりまでこの表現から窺えるのか。
となると、Right on! の日本語訳は何だろう?
「やったぜ!」
かな?う~ん、どうなんだろ?
2010年9月13日月曜日
アメリカで武者修行 第23話 シンスケに頼んだのはわしだ。
事の始まりは、ある日測量業者から届いた二通の請求書でした。エクセルの一覧表を開いて数字を打ち込んだところ、最後の一通を足したところで契約額を6千ドルほど超えてしまうことに気付いたのです。不審に思い、全ての請求書をファイルから引っ張り出して見直したのですが、ダブりはありません。定石通り、メールで先方に連絡しました。
「最後の請求書は受け入れられません。契約書にもある通り、事前の合意がなければ契約額を超えて支払うことは出来ません。」
すると間もなく、測量業者のアンディから返信が届きました。
「現場でおたくの社員から追加作業を指示されたのでやったまでです。頼んだのはおたくなんだから、払ってもらいます。」
「その指示は、誰から受けたのですか?」
「おそらくケヴィンかマイク(下水道担当)だと思います。」
さっそくケヴィンとマイクに尋ねてみたのですが、そんな指示を出した記憶は無いと言います。
「さあ、一ヶ月以上前の話だからな。そりゃ現場で何か軽く頼んだかもしれない。でも正式に作業指示をした憶えは無いよ。それに、その時彼らがどの程度まで契約額を使い切っていたかなんて、俺たちが知るわけないだろ。」
ケヴィンの言う通りです。仮に作業指示が出されたとしても、そこでアンディが予算不足の話を持ち出していれば、事態の流れは変わっていたでしょう。
老フィルに相談したところ、
「こういう場合はあまり間を置かず、内部調査で明らかになったことを正式文書にして届けた方がいい。」
との考え。さっそく、何故6千ドルが支払えないかをもう一度きちんと書面にし、マイクのサインを貰って送りつけました。しかし数日後にアンディから届いた返信を一読した途端、気分が沈みました。
「あんた達は、下請けイジメをするつもりか。おたくは図体の大きな会社だから分からんだろうが、6千ドルというのは、我々零細にとって大金なんだ。もし払わないというのなら、出るところに出る。おたくらが我々をタダ働きさせた、とカリフォルニア州政府にも届けるからな。」
仕方ないので、再びフィルと作戦会議です。
「契約担当の私から見れば、契約書に書かれていることを守らなかった彼らに非があります。アンディの怒りも理解できるけど、ここで悪しき前例を作るのはどうかと思います。」
「お前さんの言うことはもっともだが、たった6千ドルを出し渋ってプロジェクト全体を危険にさらすというのも、賢い選択とは思えんな。」
「でも、脅迫されて譲歩するというのはどうでしょうか。」
「うむ。まずはアンディと会って話をしようじゃないか。」
翌週アンディを呼び、三人でミーティングを行いました。現場事務所は会議室が不足していて、たった三人のためにわざわざ部屋を予約するのも気が引けます。そこで食堂の大テーブルの隅を使って話し合いました。ひっきりなしに人が出入りするので気は散るのですが、仕方ありません。
アンディとじかにゆっくり話すのは、今回が初めてです。手紙の文面から滲み出ていた彼の怒りはすっかり萎えていて、今では懇願モードに変わっています。
「うちの会社は本当に自転車操業なんですよ。6千ドルのキャッシュが入って来ないとなると、どこかで工面しなければいけません。社員の給料を滞らせるわけにはいきませんからね。何とかしてもらえませんか。」
来る日も来る日も鬼コーチのリンダに厳しく躾けられて来た私です。ここで情にほだされては、これまでの訓練が無になります。
「アンディ、あなたの会社の財務状況が厳しいからといって、事前の合意無しに契約額以上のお金を払うわけにはいかないんですよ。ここにそうはっきり書いてありますよね。」
契約書を広げ、該当する条項を指差して見せました。
「事前の合意はあったんです。それは本当です。」
彼が言い終わる前に、私が畳みかけます。
「ここに、書面での合意、と書かれていますよね。書面にしたんですか?」
アンディが悲鳴に近い高音で反論します。
「でも我々はあそこで測量してたんですよ!追加調査を頼まれるたびに、一旦現場を引き上げて合意書を作成し、両者サインしてからあらためて出動しろって言うんですか?そんなの現実的じゃないでしょう!」
「まあまあ、二人とも。」
老フィルが、穏やかな笑顔で割って入りました。
「アンディの言うことも分かる。大至急やってくれと現場で誰かに追加作業を頼まれれば、嫌とは言えんだろう。でもシンスケの言うことも筋が通っている。ここはどうだろうアンディ、今あんたが我々に話したことを、きちんと書面にして提出してくれないか。作業の内容も日時もなるべく詳しく書いて欲しい。それをもってわしが組織のトップと相談してみようじゃないか。」
この言葉に救われたアンディは、笑顔を取り戻して我々と握手を交わし、事務所をあとにしました。
「フィル、あなたがああ言ってくれなかったら、この会議はまとまらなかったと思います。どうも有難う。」
私はこの老人の人格に、あらためて惚れ込んでいました。もうひとりの上司であるリンダは、いつも「正当な」ことをやろうとする。私にもそうさせようとする。でも正当なことが常に最良の選択とは限らない。フィルはそのことを良く分かっている。長い経験で培って来た、バランス感覚というものでしょう。
その時、食堂の戸口にボスのマイクが現れました。
「シンスケ、さっきのは誰だ?」
彼はちょっと前に食堂に入って来て、我々三人が会議しているのを目撃していたのです。
「測量業者のアンディです。例の6千ドルの支払いの件を話し合っていたんです。」
マイクの顔に、さっと朱がさしました。
「あれは撥ね付けたんじゃなかったのか?」
「それが、まだ彼がゴネてまして…。」
「お前、どうして会議なんか開くんだ?相手につけこませるだけだろうが!」
今にもつかつかとやって来て、胸倉をつかまんばかりに興奮しています。
その時フィルが、食堂中にこだまするほどの大声を上げました。
「下請け担当にわしを任命したのはあんたじゃなかったのか?マイク。」
マイクはギクリとしてフィルを見ました。
「アンディを呼ぶようシンスケに頼んだのはわしだ。その決断について疑問があるのなら、わしにそう言ってくれないか?」
思わず振り向いてフィルの顔を見ると、威圧感のある目つきでマイクを見据えています。
マイクは急に取り繕ったような笑顔になり、
「いやいや、あんたが仕切ってるのならいいんだ。任せるよ。邪魔したな。」
と姿を消しました。まるで普段大人しい老犬が突如として首をもたげてひと唸りし、獰猛なドーベルマンが尻尾を巻いて退散したような、胸のすく一幕でした。
私はしばらくあっけに取られていましたが、
「どうも有難う、フィル。」
と救済に感謝しました。
「おまえさんが礼を言うことはないよ。」
いつもの好々爺に戻ったフィルは、
「さ、仕事に戻ろう。」
と私の肩に手を置きました。
「最後の請求書は受け入れられません。契約書にもある通り、事前の合意がなければ契約額を超えて支払うことは出来ません。」
すると間もなく、測量業者のアンディから返信が届きました。
「現場でおたくの社員から追加作業を指示されたのでやったまでです。頼んだのはおたくなんだから、払ってもらいます。」
「その指示は、誰から受けたのですか?」
「おそらくケヴィンかマイク(下水道担当)だと思います。」
さっそくケヴィンとマイクに尋ねてみたのですが、そんな指示を出した記憶は無いと言います。
「さあ、一ヶ月以上前の話だからな。そりゃ現場で何か軽く頼んだかもしれない。でも正式に作業指示をした憶えは無いよ。それに、その時彼らがどの程度まで契約額を使い切っていたかなんて、俺たちが知るわけないだろ。」
ケヴィンの言う通りです。仮に作業指示が出されたとしても、そこでアンディが予算不足の話を持ち出していれば、事態の流れは変わっていたでしょう。
老フィルに相談したところ、
「こういう場合はあまり間を置かず、内部調査で明らかになったことを正式文書にして届けた方がいい。」
との考え。さっそく、何故6千ドルが支払えないかをもう一度きちんと書面にし、マイクのサインを貰って送りつけました。しかし数日後にアンディから届いた返信を一読した途端、気分が沈みました。
「あんた達は、下請けイジメをするつもりか。おたくは図体の大きな会社だから分からんだろうが、6千ドルというのは、我々零細にとって大金なんだ。もし払わないというのなら、出るところに出る。おたくらが我々をタダ働きさせた、とカリフォルニア州政府にも届けるからな。」
仕方ないので、再びフィルと作戦会議です。
「契約担当の私から見れば、契約書に書かれていることを守らなかった彼らに非があります。アンディの怒りも理解できるけど、ここで悪しき前例を作るのはどうかと思います。」
「お前さんの言うことはもっともだが、たった6千ドルを出し渋ってプロジェクト全体を危険にさらすというのも、賢い選択とは思えんな。」
「でも、脅迫されて譲歩するというのはどうでしょうか。」
「うむ。まずはアンディと会って話をしようじゃないか。」
翌週アンディを呼び、三人でミーティングを行いました。現場事務所は会議室が不足していて、たった三人のためにわざわざ部屋を予約するのも気が引けます。そこで食堂の大テーブルの隅を使って話し合いました。ひっきりなしに人が出入りするので気は散るのですが、仕方ありません。
アンディとじかにゆっくり話すのは、今回が初めてです。手紙の文面から滲み出ていた彼の怒りはすっかり萎えていて、今では懇願モードに変わっています。
「うちの会社は本当に自転車操業なんですよ。6千ドルのキャッシュが入って来ないとなると、どこかで工面しなければいけません。社員の給料を滞らせるわけにはいきませんからね。何とかしてもらえませんか。」
来る日も来る日も鬼コーチのリンダに厳しく躾けられて来た私です。ここで情にほだされては、これまでの訓練が無になります。
「アンディ、あなたの会社の財務状況が厳しいからといって、事前の合意無しに契約額以上のお金を払うわけにはいかないんですよ。ここにそうはっきり書いてありますよね。」
契約書を広げ、該当する条項を指差して見せました。
「事前の合意はあったんです。それは本当です。」
彼が言い終わる前に、私が畳みかけます。
「ここに、書面での合意、と書かれていますよね。書面にしたんですか?」
アンディが悲鳴に近い高音で反論します。
「でも我々はあそこで測量してたんですよ!追加調査を頼まれるたびに、一旦現場を引き上げて合意書を作成し、両者サインしてからあらためて出動しろって言うんですか?そんなの現実的じゃないでしょう!」
「まあまあ、二人とも。」
老フィルが、穏やかな笑顔で割って入りました。
「アンディの言うことも分かる。大至急やってくれと現場で誰かに追加作業を頼まれれば、嫌とは言えんだろう。でもシンスケの言うことも筋が通っている。ここはどうだろうアンディ、今あんたが我々に話したことを、きちんと書面にして提出してくれないか。作業の内容も日時もなるべく詳しく書いて欲しい。それをもってわしが組織のトップと相談してみようじゃないか。」
この言葉に救われたアンディは、笑顔を取り戻して我々と握手を交わし、事務所をあとにしました。
「フィル、あなたがああ言ってくれなかったら、この会議はまとまらなかったと思います。どうも有難う。」
私はこの老人の人格に、あらためて惚れ込んでいました。もうひとりの上司であるリンダは、いつも「正当な」ことをやろうとする。私にもそうさせようとする。でも正当なことが常に最良の選択とは限らない。フィルはそのことを良く分かっている。長い経験で培って来た、バランス感覚というものでしょう。
その時、食堂の戸口にボスのマイクが現れました。
「シンスケ、さっきのは誰だ?」
彼はちょっと前に食堂に入って来て、我々三人が会議しているのを目撃していたのです。
「測量業者のアンディです。例の6千ドルの支払いの件を話し合っていたんです。」
マイクの顔に、さっと朱がさしました。
「あれは撥ね付けたんじゃなかったのか?」
「それが、まだ彼がゴネてまして…。」
「お前、どうして会議なんか開くんだ?相手につけこませるだけだろうが!」
今にもつかつかとやって来て、胸倉をつかまんばかりに興奮しています。
その時フィルが、食堂中にこだまするほどの大声を上げました。
「下請け担当にわしを任命したのはあんたじゃなかったのか?マイク。」
マイクはギクリとしてフィルを見ました。
「アンディを呼ぶようシンスケに頼んだのはわしだ。その決断について疑問があるのなら、わしにそう言ってくれないか?」
思わず振り向いてフィルの顔を見ると、威圧感のある目つきでマイクを見据えています。
マイクは急に取り繕ったような笑顔になり、
「いやいや、あんたが仕切ってるのならいいんだ。任せるよ。邪魔したな。」
と姿を消しました。まるで普段大人しい老犬が突如として首をもたげてひと唸りし、獰猛なドーベルマンが尻尾を巻いて退散したような、胸のすく一幕でした。
私はしばらくあっけに取られていましたが、
「どうも有難う、フィル。」
と救済に感謝しました。
「おまえさんが礼を言うことはないよ。」
いつもの好々爺に戻ったフィルは、
「さ、仕事に戻ろう。」
と私の肩に手を置きました。
2010年9月12日日曜日
Clash, Crash, Crush!
プロジェクトのスケジュールを短縮し、遅れを取り戻す方法として、ファストトラッキング(Fast Tracking)とクラッシング(Crashing)の二つが知られています。ファストトラッキングの方は、本来「設計が終わったら建設を開始する」というように「Aの後にB」という関係にある二つのタスクを平行させてしまうこと。「設計と平行して建設する」みたいに。一方クラッシングは、クリティカル・パスにあるタスクにリソースを投入すること。つまり、遅れの原因になっているタスクにどんどん人なり材料なりを足して作業を加速することですね。
社内のトレーニングで教えていて分かったことですが、ファストトラッキングの方は何となく理解出来るものの、Crashing という英単語がどうしてこういう状況で使われるのか、ネイティブでさえピンと来ない様子でした。Crash を辞書で引くと、「すごい音をたててぶつかる」とか「飛行機が墜落する」という訳が出てきます。確かに、これだけ見ると、上記の状況に当てはまるとは思えません。そこで私は、パーティークラッシャー(Party Crasher)という言葉を使って教えるようにしました。
パーティークラッシャーは、招待されていないパーティーに忍び込んだり、(有名人の場合は)堂々と正面突破したりする人のことを言います。遅れを挽回するためクリティカル・パス上のタスクに駆り出される人たちは、「もともと頼まれていない」ため、これで意味は何とか飲み込めます。
しかし、ネイティブにはそれで良しとしても、我々日本人にはこの Crash という単語の紛らわしさが、完全に解決されたわけじゃありません。同じクラッシュでも、英語にはClash, Crash, Crush と三種類あるのです。昨日辞書で引いて私なりに納得したのですが、これは「ぶつかり方」の違いで分けられます。
Clash: 激しく衝突するけど、ぶつかった相手に食い込んでいないし壊れてもいない。
Crash: 激しく衝突して、ぶつかった相手に食い込んだり自分が壊れたりしている。
Crush: 相手をぐしゃぐしゃにする。
最後のは、空き缶を「グワッシ」と握りつぶすイメージで憶えています。
社内のトレーニングで教えていて分かったことですが、ファストトラッキングの方は何となく理解出来るものの、Crashing という英単語がどうしてこういう状況で使われるのか、ネイティブでさえピンと来ない様子でした。Crash を辞書で引くと、「すごい音をたててぶつかる」とか「飛行機が墜落する」という訳が出てきます。確かに、これだけ見ると、上記の状況に当てはまるとは思えません。そこで私は、パーティークラッシャー(Party Crasher)という言葉を使って教えるようにしました。
パーティークラッシャーは、招待されていないパーティーに忍び込んだり、(有名人の場合は)堂々と正面突破したりする人のことを言います。遅れを挽回するためクリティカル・パス上のタスクに駆り出される人たちは、「もともと頼まれていない」ため、これで意味は何とか飲み込めます。
しかし、ネイティブにはそれで良しとしても、我々日本人にはこの Crash という単語の紛らわしさが、完全に解決されたわけじゃありません。同じクラッシュでも、英語にはClash, Crash, Crush と三種類あるのです。昨日辞書で引いて私なりに納得したのですが、これは「ぶつかり方」の違いで分けられます。
Clash: 激しく衝突するけど、ぶつかった相手に食い込んでいないし壊れてもいない。
Crash: 激しく衝突して、ぶつかった相手に食い込んだり自分が壊れたりしている。
Crush: 相手をぐしゃぐしゃにする。
最後のは、空き缶を「グワッシ」と握りつぶすイメージで憶えています。
2010年9月11日土曜日
ニッピリンダバァ
コンストラクション・マネジャーのトムは、一見、イタリア系マフィア映画に出てくる巨漢の殺し屋風。それなのに、思わず引き込まれるような人懐っこい笑顔で皆に愛されています。ある日給湯室で、
「トムって、典型的な工事屋のイメージから程遠いよね。」
と感心して言うと、
「僕だって、20代の頃は暴れん坊だったんだよ。口の利き方もひどかったし、態度も横柄だった。周りが皆そうだったから、そういうもんだと思ってたんだな。でもね、ある日これは違うって気がついたんだ。こんなのは正しくないって。その日から、すべてが変わったよ。周りの人を心底から愛し始めたんだ。自分の出会う人は皆、Lord (神様)がお作りになった人間なんだと気付いたら、愛さずにはいられなくなったんだな。」
この時初めて、彼が敬虔なクリスチャンであることを知りました。彼は四人の子の父親で、一番上は32歳。今でも全員と会話するの?と聞いたら、
「ああ、みんな何でも話してくれるよ。ベスト・フレンドみたいにね。」
「それはいいね。父親と口をきかない若者だって大勢いるそうだから。でもさ、友達風の父親って、下手するとナメられる危険性もあるよね。」
「うん、そこは大事なところなんだ。もしも少しでもリスペクトに欠けた言動に気付いたら、その瞬間にガツンとやらなきゃ駄目。絶対にやり過ごさないこと。」
そしてこう言ったのです。
You have to ニッピリンダバァ。
最初、彼が何て言ったのか分からず、何度も聞き返しました。続いてスペルも教えてもらいました。
You have to nip it in the bud.
蕾(つぼみ)のうちに摘み取らなきゃ駄目だ。
つまり、「問題の芽は早めに摘み取れ。」という意味ですね。へえ、この表現は一度も聞いたことないな、と面白がってたら、トムは繰り返し「ニッピリンダバァ」と呟き、その響きを楽しんでいました。
こういう初めて聞く表現って、一般に流通しているという確信がない(それまで聞いたことがないのが何よりの証拠な)ため、なかなか使えません。この表現も、「読んだり聞いたりして理解はできるけど、自ら使うことはない表現」の棚に入る運命かな、と思っていました。
一昨日、ボスのリックのオンラインレポート作成を助けていたところ、彼のプロジェクトの今後の予想(ETC)コストが負の値になっていることを発見。
「これ、ちょっとまずいですね。最終予測(EAC)コストが現在までのコストより低く設定されているのが原因です。どうします?今修正しておきますか?まだ月末じゃないので、急ぐ必要はないんですが。」
そう言うと、リックが
「指摘してくれて有難う。今すぐ直しておこう。」
と答えた後、こう言ったのです。
I’d better nip it in the bud before getting a nastygram.
不愉快なEメールを受け取る前に、問題の芽を摘み取っておいた方がいい。
おお、それじゃこれはやっぱり普通に使われてる言葉なんだ!
そんなわけでこの「ニッピリンダバァ」は、私の中の「使える英語表現」にめでたく昇格したのでした。
ちなみに nastygram というのは、telegram の tele 部分を nasty (ひどい、意地の悪い)とすげ替えた言葉で、これも「意地の悪いEメール」という意味でよく使われています。レポートを読んだファイナンスの担当者が「どういうことだ、説明しろ!」と送りつけてくるメールを、ここでは nastygram と呼んでいるわけですね。
「トムって、典型的な工事屋のイメージから程遠いよね。」
と感心して言うと、
「僕だって、20代の頃は暴れん坊だったんだよ。口の利き方もひどかったし、態度も横柄だった。周りが皆そうだったから、そういうもんだと思ってたんだな。でもね、ある日これは違うって気がついたんだ。こんなのは正しくないって。その日から、すべてが変わったよ。周りの人を心底から愛し始めたんだ。自分の出会う人は皆、Lord (神様)がお作りになった人間なんだと気付いたら、愛さずにはいられなくなったんだな。」
この時初めて、彼が敬虔なクリスチャンであることを知りました。彼は四人の子の父親で、一番上は32歳。今でも全員と会話するの?と聞いたら、
「ああ、みんな何でも話してくれるよ。ベスト・フレンドみたいにね。」
「それはいいね。父親と口をきかない若者だって大勢いるそうだから。でもさ、友達風の父親って、下手するとナメられる危険性もあるよね。」
「うん、そこは大事なところなんだ。もしも少しでもリスペクトに欠けた言動に気付いたら、その瞬間にガツンとやらなきゃ駄目。絶対にやり過ごさないこと。」
そしてこう言ったのです。
You have to ニッピリンダバァ。
最初、彼が何て言ったのか分からず、何度も聞き返しました。続いてスペルも教えてもらいました。
You have to nip it in the bud.
蕾(つぼみ)のうちに摘み取らなきゃ駄目だ。
つまり、「問題の芽は早めに摘み取れ。」という意味ですね。へえ、この表現は一度も聞いたことないな、と面白がってたら、トムは繰り返し「ニッピリンダバァ」と呟き、その響きを楽しんでいました。
こういう初めて聞く表現って、一般に流通しているという確信がない(それまで聞いたことがないのが何よりの証拠な)ため、なかなか使えません。この表現も、「読んだり聞いたりして理解はできるけど、自ら使うことはない表現」の棚に入る運命かな、と思っていました。
一昨日、ボスのリックのオンラインレポート作成を助けていたところ、彼のプロジェクトの今後の予想(ETC)コストが負の値になっていることを発見。
「これ、ちょっとまずいですね。最終予測(EAC)コストが現在までのコストより低く設定されているのが原因です。どうします?今修正しておきますか?まだ月末じゃないので、急ぐ必要はないんですが。」
そう言うと、リックが
「指摘してくれて有難う。今すぐ直しておこう。」
と答えた後、こう言ったのです。
I’d better nip it in the bud before getting a nastygram.
不愉快なEメールを受け取る前に、問題の芽を摘み取っておいた方がいい。
おお、それじゃこれはやっぱり普通に使われてる言葉なんだ!
そんなわけでこの「ニッピリンダバァ」は、私の中の「使える英語表現」にめでたく昇格したのでした。
ちなみに nastygram というのは、telegram の tele 部分を nasty (ひどい、意地の悪い)とすげ替えた言葉で、これも「意地の悪いEメール」という意味でよく使われています。レポートを読んだファイナンスの担当者が「どういうことだ、説明しろ!」と送りつけてくるメールを、ここでは nastygram と呼んでいるわけですね。
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