今日の午後、トイレから戻ってみると、向かいの席でシャノンが大笑いしています。
「聞いてよ。カンチーがフロッピーディスク知らないっていうの。」
彼女の隣で、若いカンチーが当惑気味に笑っています。
「嘘だろ。見たことも無いの?」
「無いです。」
驚嘆して立ちすくむ私。
「それって何に使うものなの?」
と私の二つ隣から二十代半ばのテイラーが質問を投げかけます。
「USBスティックとかと同じ?」
「う~ん、まあ機能としては同じだけど、そもそもデータ容量が桁違いなんだよね。」
左隣の席では、最近24歳になったばかりのブリトニーが、全く話についていけない様子でただただキョトンとしています。
「おいおい本当かよ。君たち誰もフロッピーディスクを知らないっていうの?」
「じゃあレーザーディスクは?」
首を振りながら顔をしかめるカンチーを見て、再び大笑いのシャノン。
「世の中で売られてた物なんですか?」
「売られてたよ!高値でね。そいつで映画を観た時は高画質に感動したもんだ。」
「あ、これこれ。」
と、シャノンが自分のコンピュータ画面を指さしてカンチーに見せます。どうやら、話しながら画像検索していたようです。
「これがフロッピーディスク。コンピュータで仕事した後、データを入れて保管してたの。これよりちょっと前は、もっとサイズが大きかったんですって。」
シャノンもさすがに5インチ版を使った経験は無いのだと。
「いやあ、3.5インチ版が出た時は感動したよ。こんなに小さくなったのに容量が倍増したぞってね。」
三十年前に職場で目の当たりにした技術革新が活き活きと蘇り、感動を新たにした私。
「動画とか入れてたんですか?」
とカンチー。
「動画なんか無いよ!たとえあっても到底おさまらなかっただろうし。」
いやんなっちゃうなあ。なんだなんだこの激しいギャップは?滅茶苦茶年寄り気分にさせられるじゃないか。シャノンと顔を見合わせ、苦笑い。
「そうそう、大判だった時は手で簡単に曲げられる程柔らかかったのよ。それでフロッピーって呼ばれてたんだものね。」
え?あ、そうか、なるほどね。Flopはそもそも「バタバタ動く、揺れる」という動詞だから、Floppy(形容詞)は「柔らかい、ペラペラの」となる。初期のフロッピーディスクの性質を、端的に表現した英単語だったのですね。知らなかったぜぇ。というか、名前の意味をちゃんと考えてみたことすらなかった…。
「おぉ、おぉ、おお~~~~~っ!」
三十年の時を超えた(今じゃ全く役に立たない)新発見にじわじわと気持ちが高ぶって来て、思わず部下たちの前で声を上げてしまいました。心の中の「ガッテン」ボタンを、何度も繰り返し押しながら。