「やあシンスケ、元気か?」
にこやかに握手。彼は珍しくネクタイをしています。ボタンダウンのシャツの襟元からTシャツをのぞかせるスタイルが定着していたので、私がからかい気味に、
「あれ?今日はやけにめかしてますね。」
と言うと、
“I’m going to the lion’s den.”
と答えました。
初めて聞く言い回しです。一瞬分かったような気になり、
「それは面白そうですね。」
と反応したのですが、よくよく考えると意味が分かりません。文字通り訳せば「ライオンの洞窟(巣)に行くんだ」ですが、一体ジョエルは何の話をしてるんだ?
そんな私の表情を読み取ったのか、彼がヒントをくれました。
“On the fourth floor.”
「4階のね。」
ああ、なるほど。4階には上級幹部が集う会議室があるのです。つい先日、北米西部のトップに着任したマイクのオフィスもあります。きっとマイクが就任と同時に配下の幹部を招集し、戦略会議を開くのでしょう。内部からの昇進ではないので、彼の仕事の流儀は未知数。どんな厳しい質問を浴びせられるのか分からないので、さすがのジョエルも緊張を滲ませています。「4階のね。」
あとで同僚のマシューとエリックに、このフレーズの意味を尋ねてみました。
「おっかないところってことだよ。どんな恐ろしい仕打ちを受けるか予想もつかない場所に行く時に使う言い回しだな。」
とのこと。
今日、サンディエゴの同僚ジムにも聞いてみました。
「たとえばさ、サンディエゴ・チャージャーズのファンがオークランド・レイダーズの(凶暴さで有名な)応援団が密集する席に座る時なんかに使える?」
熱狂的フットボール・ファンのジムはさも感心したように、
「それは素晴らしいたとえだね。どんぴしゃだよ。」
とほめてくれました。そんなわけで、私の和訳はこれ。
“I’m going to the lion’s den.”
「敵地に乗り込むんだよ。」
「敵地に乗り込むんだよ。」
どうでしょう?