2012年8月31日金曜日

Shrug off 受け流す

ここ数日、ラジオのPBS局(公共放送)で共和党大会の様子が延々と流れています。通勤途上の車中で聞くとも無く聞いていたら、ミット・ロムニー大統領候補への応援演説が続いていました。ふと気になったのが、God (神)という単語が何度も何度も、しかもためらいも無く使われていたこと。

“Freedom is not given by the government. Freedom is given by God!”
「自由は政府から与えられるものじゃない。自由は神から授かるものだ!」
みたいに。それはまだ良しとしても、神をHe (彼)と呼んでいるのがひっかかりました。これはつまり、明らかにキリストを指しているのですね。へえ、それってありなのか~。共和党はクリスチャンの集団だというのは知ってたけど、こういう政治集会で、しかも全国放送だっていうのに、平然と神の名を口にするというのは意外でした。
ダウンタウンのオフィスで同僚ミケーラと一緒に弁当を食べた時、彼女にこの話題を振ってみました。

「日本では一度も経験したことないんだよね。政治と宗教は分離させる決まりになってるからね。これってアメリカでは有りなわけ?」
「う~ん、そうね。そこはグレー(gray area)じゃないかしら。タブーってわけじゃないけど、完全にOKとも思えないもの。」
「もしもさ、職場でそういう発言があったらどうする?会議中にさ、ここはキリストのご意思に従おう、とか真面目な顔で誰かが提案したりしてさ。すごく居心地悪い(uncomfortable)でしょ。」

対するミケーラの返答が、これ。

“I would shrug it off.”
「私ならshrug off (シュラグ・オフ)するわね。」
シュラグ(shrug)というのは、「理解出来ない」「知らない」「関心が無い」という場合に肩をすくめる行為(アメリカ人はしょっちゅうそういうジェスチャーを見せます)。これに「離れた、離す」という意味のoff をくっつけたフレーズ。英治郎では、「軽くあしらう」とか「一笑に付す」と訳されています。ミケーラの発言はこう和訳出来ると思います。

“I would shrug it off.”
「私なら受け流すわね。」

この「肩をすくめる」ジェスチャーは非常に便利。「誰々見かけなかった?」と尋ねられた時に無言で肩をすくめれば、「さあね」という返答になります。授業中、教師に質問されて答えられない時、肩をすくめれば「全然分かりません」となります。
これ、日々あまりにも自然にやっているので、日本に一時帰国した時には神経使います。迂闊にこんなジェスチャー出しちゃうと、なんだか「アメリカかぶれ」みたいで顰蹙買うかな、と不安なので。どうなんでしょう?

2012年8月28日火曜日

Cream of the crop 精鋭中の精鋭

ロサンゼルスの巨大プロジェクトが来月からスタートしようとしているのですが、マネジメント・チームからの要請で、プロジェクト・コントロールのサポートをすることになりました。中核メンバーのシェリルが昨日私のところへやって来て、大きなため息をつきました。

「こんなこと、シンスケに知らせてどうなることじゃないんだけど、一応耳に入れておくわね。」
彼女の言うには、あらゆる部署の上層部から「うちの誰々を使ってくれ」とプレッシャーがかかっているのだと。
「まるで池に投げ込まれた餌に群がる魚みたいなのよ。毎日毎日、本当にしつこいの。ほとんど脅迫よ。プロジェクトコントロールのポジションは、特に売り込みが多いわ。」
「え、そうなの?だったら譲ってもいいよ。ここんとこ忙しいんだ。」
「それは駄目よ。このプロジェクトには最高の人材を使うぞってジャックに言われてるんだもの。」

折りしも来月は年度末(我が社の会計年度は10月スタート)。Utilization (稼働率)を出来るだけ上げるよう強烈な圧力が最上層部からかかっていて、皆自分の労働時間をチャージするためのプロジェクト探しに躍起になっているのです。

「現時点で仕事にあぶれてるような人をチームの一員として簡単に受け入れるわけにはいかないでしょ。シンスケのことは複数の人から絶賛つきの推薦があったの。文句無しの採用よ。」
とシェリル。そして彼女がこう続けました。

“Cream always rises to the top.”
直訳すれば、「クリームは必ず表面に浮かんで来る。」・・・なんだそれ?

後で調べたところ、ミルクのクリーム成分は時間が経つと浮き上がるということから、「優秀な人は自ずと頭角を現して来る。」という意味だそうです。うわっ、すごい褒め言葉じゃん。なるほど、クリームというのは「最高の」という意味に使われているのですね。賞味期限切れのミルクをコーヒーに注ぐと表面にぼそぼそとクリーム状の物体が浮いてくるけど、そういうネガティブな意味合いは無いようです。
ここでふと、”Cream of the crop” というフレーズを思い出しました。意味はBest of the best、「精鋭中の精鋭」ですが、私はこのcrop (クロップ)に引っかかります。Crop (農作物)のクリームって一体何なんだ?色々調べたけどどうしても分からないので、こういう質問に大抵明解な解説をしてくれる、同僚エリックを訪ねました。

「う~ん、分からないなあ。ネットで調べてみよう。」
早々に降参するエリック。仕事中なのに随分検索に時間をかけてくれたのですが、結局語源は分からずじまい。

「よく考えてみたら、全く意味不明な言い回しだよね。農作物からクリームなんか出ないもんなあ。」
と全面降伏の態。

「さすがの “Cream of the Crop” エリックでも分からないのかあ。」
とからかうような口調で私が言うと、

Not this time(今回だけはな)。」
とわざと悔しそうな表情を作ってみせる、ノリのいいエリックでした。

2012年8月23日木曜日

Powwow パウワウ!

仕事の性格上あちこちの支社へ出向くことが多いのですが、一週間に一度くらいは自分のオフィスに籠もり、集中して溜まった仕事を片付けます。邪魔されたくない時はドアを閉められるから、効率が良いのですね。

今日も根を詰めて仕事していたところ、同僚マリアが現れ、息を弾ませてこう言いました。

「9月の第一週にアルとクリスとエリカが来るの。もしも都合がつくようだったら、皆でランチに行かない?」
「そいつはすごい!久しぶりの勢ぞろいだね。もちろん一緒に行くよ。」
と興奮する私。

7年前に転属するまで私は、現在マリアが担当している仕事に就いていました。当時の所属部門の構成は次の通り。

エド:直属の上司(現在はマリアの上司)
クリス:エドの上司(ヴァージニア在住)

アル:部門長でクリスの上司(ウィスコンシン在住)
エリカ:同僚(現在ラスベガス在住)

この懐かしいメンバーが一堂に会する機会なんて、滅多にありません。忘れないよう、さっそくカレンダーに予定を打ち込んでおきました。去り際、マリアがちょっと腰を振りながら軽くダンスのジェスチャーを見せてからこう言いました。
“We’re going to have a powwow!”
「さあパウワウよ!」

パウワウ。この単語、前にも何度か聞いたことがありました。会議の前になって出席予定者が、
「パウワウはどこで開かれるんだっけ?」

と尋ねて来たりとか。
今回あらためて調べたところ、語源は「アメリカ先住民族が催す祝祭イベント」。部族が集まって、歌ったり踊ったりギャンブルしたりしながら親交を深めるのだそうです。それが転じて、「仕事のための」会議という意味合いから少し離れ、社交的なニュアンスの「会合」とか「集会」とかいう意味で使われるようになったとのこと。

だいぶ考えたのですが、今回のマリアの発言にはぴったりした和訳が見つかりません。やっと搾り出したのが、これ。

“We’re going to have a powwow!
「さあ楽しい集会よ!」

う~ん、イマイチ…。

2012年8月22日水曜日

My heart skipped a beat. ドキッとしたよ。

火曜日の朝、大ボスのクリスがオレンジ支社のPM達に対して、

「環境部門のQuality Manager にシンスケが就任したことを発表します。」
から始まる一斉メールを送りました。これで遂に正式決定です。早速、去年から私が助っ人として働いてきた別部門のトップ、エリック(及びその周辺の人たち)に、こういうメールを送りました。

“Just to let you know, I accepted this new position in the Orange office. It may slightly increase my hours spent in Orange but should not affect my availability for your people.”
「お知らせですが、オレンジ支社の新しい役職に就くことが決まりました。オレンジに出向く時間が微妙に増えるとは思いますが、本部門の人たちのためのサポートは変わらず続けていけるはずです。」
対するエリックの返信は、こういう文章で始まりました。

“Congratulations Shinsuke!  My heart skipped a beat after reading the first sentence, but I quickly calmed down after reading the second one.”
「おめでとうシンスケ!最初の一文を読んだ後、僕の心臓がビートをスキップしたよ。でも二番目の文章を読んですぐに落ち着いた。」

今回の人事の煽りで、彼の部門への私の貢献度が激減するのでは、と一瞬心配したわけですね。

ところで、この「skipped a beat」のくだりを読んですぐに思い出したのが、KUWATA BAND の名曲「スキップ・ビート(SKIPPED BEAT)」。「すっけべー、すっけべー」連呼のイメージがあまりにも強烈で、「これはスケベな歌なんだ」という記憶しかありませんでした。よくよく考えてみれば、このフレーズにもちゃんとした意味があるんだよな。

Skip は「省略する、とばす」で、a beat が「鼓動一回」だから、skipped a beat は「鼓動が一瞬止まった」となりますね。つまり、エリックの言いたかったのはこういうことでしょう。
“My heart skipped a beat.”
「ドキッとしたよ。」

2012年8月21日火曜日

Have you doctored the schedule? スケジュールをドクターしてくれた?

昨日と今日は、久しぶりにオレンジ支社へ出張。ここのところ姿を見せていなかったので、一通りPMの部屋を回ってご機嫌伺いをしました。すると同僚ジャックが、

「おお、いいところに現れた。ヘルプ頼む!」

と助けを求めて来ました。こういうケースはサービス残業に発展することが多いのですが、今回も夜11時過ぎまでしっかり働かされました。まあこういうピンチにしっかり人助けしておくと、新しいプロジェクトを獲得した際にお声がかかる率が高くなるので、つい頑張ってしまいます(社内営業)。

さて、ジャックのリクエストと同時並行で同僚シェリルから頼まれたのが、スケジュールのレビューと修正。

「何かがおかしいのははっきりしてるんだけど、原因がさっぱり分からないのよ。」
社員の大半はマイクロソフト・プロジェクト(MSP)でスケジュール作りをするのですが、このソフト、実はとても危険な代物なのです。初心者にも使いやすい反面、ユーザーの不用意なミスを平気で見逃してくれちゃうため、完成品が全く使い物にならないケースが多いのです。まるで外面が良くて誰とでも友達になるけど、簡単に人を裏切る奴みたい。プロのスケジュラー達からは、蛇蝎のように嫌われています(建設事業のような複雑なプロジェクトにはお勧めしません)。

今回シェリルが持ち込んできたのは、個別タスクのduration (期間)が「3 days のような整数なのに、WBSの上位にあるタスクのduration が「16.88 days」のような小数になってしまう、という問題。早速メールでファイルを送ってもらい、原因を調べました。で、分かったのが、そこかしこにconstraint(制約)が埋め込まれていたこと。彼女はタスクのスタート日を、自ら記入していたのです。

「ええっ?駄目なの?だってこのタスクがいつ始まるか100%確実に分かってたから、日にちをそのまま打ち込んだのよ。」
「日にちを記入した途端、制約扱いされちゃうんだよ。それ一発で、折角作ったスケジュールがまるまる全部使い物にならなくなるから、気をつけて。打ち込むのは期間だけにしてね。」

と指導します。
午後になって、コンストラクションマネジャーのトムがやって来て、更なる改造を要請して来ました。二人でしこしこ修正した後、様子を見に来たシェリルがこう言いました。

“Have you guys doctored the schedule?”
「スケジュールをドクターしてくれた?」
は?何を聞かれたかよく分からなかったので、解説を求めました。シェリルは笑いながら説明してくれました。
「要するに、病気にかかってたスケジュールを治療してくれたか?ってことよ。」
「へえ。ドクターを動詞として使うこともあるんだね。」
「俗語だからね。あまり正式な場面では使わないわよ。」

これは面白い表現だと思いました。私の和訳はこれ。
“Have you guys doctored the schedule?”
「スケジュールを治してくれた?」

2012年8月19日日曜日

We did our due diligence. 誠意は見せたわよね。

私の担当するプロジェクトの契約額は、現在35ミリオンドル。スタート当初からハイリスク・プロジェクトに指定され、本社のリスク・マネジメント部門から毎月レビューを受けていました。二ヶ月前、テリーのオフィスでの電話会議で、東海岸のジョンがこう言いました。

「シンスケ、テリー、君たちのチームは極めて慎重にプロジェクト・マネジメントを遂行している。過去一年間注意深く見てきたが、不安要素が何も見当たらない。リスク評価レベルを一段落とそうじゃないか。我々が毎月時間を使ってレビューする必要性は考えられないからな。」
なんと、異例のレビュー免除措置です。これには一同驚き喜んだのですが、後でサクラメント支社のサンディ(テリーのボス)が、

「私はプロジェクトの近況を知りたいわ。内々での電話会議を毎月出来ないかしら?」
と要望します。結果、テリーが主催する非公式のレビューが毎月第三金曜日に行われることになりました。

ところが彼女、どうしたことか、先月はこの電話会議をすっぽかしてしまいます。どこか外部の会議に出かけていて、すっかり忘れていたのだと。
そんなことがあったので、今月はあらかじめ彼女に念押しした私。ところが彼女、超多忙のため、またもすっぽかします。後で彼女のオフィスを訪ねた時、これはもともとサンディが要請した会議なんだから、せめて彼女には近況報告しておくべきでは、と進言しました。私が言い終わらぬうちに、テリーは受話器をつかんでサンディに電話をかけていました。そして不在と分かるとメッセージを残し、

「念のため携帯番号にもかけるわね。」
と言った後、即座に携帯番号にかけ直します。またも応答が無かったため、もう一度メッセージを残して切り、こちらを振り向いてこう言いました。

“We did our due diligence.”
「デューデリジェンスはしたわよね。」
この間、約30秒。この人、ほんとに仕事が速い。でも、今の発言の意味は何だ?デューデリジェンス?
そういえば数ヶ月前、かっての大ボスだったアルがウィスコンシンからやって来た時、南アフリカから戻ったばかりだ、という話をしてくれました。この時の彼の出張目的が、その「デューデリジェンス」だったのです。我が社が買収しようとしている会社の資産内容、経営内容を丹念に調べ上げ、買収予定額が適正かどうかの判断に役立てる、という仕事。へえ、そういうのをデューデリジェンスっていうのか、と曖昧に納得していたのですが、今回のテリーの発言で、理解がぐらつきます。
で、さっそく調べてみました。

メリアン・ウェブスターのオンライン辞書には二つ意味が書かれていて、二番目が買収前の財務調査、そして一番目がこれでした。
"The care that a reasonable person exercises to avoid harm to other persons or their property."
「分別ある人が、他人やその所有物に害が及ぶのを避けるために払う配慮」
なるほど。そもそもdue は「当然払われるべき」という意味。Diligence は「勤勉」とか「努力」ですね。当然払われるべき「努力」を払った。つまりテリーが言いたかったのは、サンディに払うべき配慮は払った、ということですね。私の和訳はこれ。

“We did our due diligence.”
「誠意は見せたわよね。」

クールな表現をひとつ憶えました。

2012年8月17日金曜日

We should be more zen. もっと禅にならなきゃ(?)

昨日から、ダウンタウン・サンディエゴ支社のプロジェクト立ち上げを手伝っています。担当のトリーナという女性社員はこの分野の経験が浅く、予算策定に四苦八苦。今朝も2時間くらいかけて手取り足取り教えているうちに、プロジェクトの利益率があまり芳しくないことに気づきました。昼前、別件でテリーと打ち合わせした後、この件について報告したところ、

「知ってるわ。このクライアントに対してはそれがギリギリなのよ。それ以上高い利益率を前提に見積もってたら、今回の仕事は獲れなかったでしょうね。」
と観念顔。

「そういえば昨日、ミケーラから支社のBreak-even point(損益分岐点)引き上げの情報が来てたけど、受け取った?」
「なにそれ、知らないわ。ま、知ってたとしても、このプロジェクトに関してはどうもしようがないわよ。既に限界ギリギリの利益率なんだし、今から改善しろって言われたって何も出来ないわ。それに十月には組織の大改変があるでしょ。支社が今使ってる数字なんて全く無意味になると思うわ。」

テリーはそうまくしたてた後、こんな言葉で締め括りました。
“I’ll go zen with that.”
「私はゼンで行くわ。」

え?何だって?ゼンというのは「禅」のことだろうというのはすぐに察しがついたのですが、意味が今ひとつ分からない。さっそく彼女に説明を求めます。
「心を平静にして、雑事に惑わされないようにするって言いたかったのよ。」

と笑いながら解説してくれるテリーでした。
一旦席に戻ってから、確認のため同僚ステヴにも尋ねました。

Go zenか。その表現は初耳だな。テリー独特のひねりだと思うよ。大体、zen という落ち着きのある単語に、勢いのあるgo という言葉をつけること自体、ユーモラスだもんね。」
「やっぱりね。テリーっぽいなあ。彼女、言葉遊びが得意なんだよね。でもさ、他の人が似たフレーズ使うのも聞いたことがあるんだよね。なんて言ってたか具体的には思い出せないんだけど。君だったらこの単語、どう使う?」

「そうだなあ。」
数秒考えてから、彼がこう言いました。

“We should be more zen about that.”
「そのことについてはもっとゼンになった方がいいね。」

要は、「あまり動揺せずに落ち着いて行こうぜ」ってことでしょう。
「アメリカ人ってさ、禅に対する理解がものすごく浅いくせに、臆面も無くそういうフレーズを使うんだよね。」

とステヴ。人類学者であり、日本への留学経験もある彼は、アメリカ人のそういう軽薄さを恥じている様子。私はそこで慌てて会話を切り上げました。自分は日本人だけど、「禅」のことなんかぜ~んぜん分かりません。このまま深い話にもつれこんだら、こっちが恥かいちゃうよ。

2012年8月15日水曜日

Nudist Resort 裸族の楽園

オフィスの観葉植物に水遣りをしている外部業者のメアリーは、鉱物の採掘が趣味。今日の午後、私のオフィスにやってきて、

「鉱山への道がいくつも閉鎖されちゃってるのよ。」

と話してくれました。なんでも、カリフォルニアのあちこちで山火事が頻発していて、山道を通行禁止にしなければならないほど危険な状態なのだそうです。

「猛暑が続いている上に、ここのところずっと雨が降ってないでしょ。山は極度に乾燥してるのよ。」
「でも、なんで火が点くのかな。原因はタバコ?」
「違うわ。雷よ。」

そうか、雨降らなくても雷は落ちるもんな。それで山火事が起きちゃうとはね…。
「週末、出先から家に戻った時ね、近くの山の裏で火の手が上がってるのが見えたの。もう生きた心地がしなかったわ。」

そう、彼女の住まいは内陸なので、火事の影響を受けやすいのですね。
「昨日のニュースで見たんだけど、北の方でも山火事にやられてるんですって。Wilbur Hot Springsウィルバー温泉)知ってる?Nudist resort(ヌーディストのリゾート)で有名なところだけど、そこにも火が迫っていて、大勢避難してるらしいわよ。」

ええっ?ヌーディストのリゾート?そんなものがこの州にあったの?ヌーディスト・ビーチなら聞いたことあるけど、高原のリゾートまるまる「裸族」用?
メアリーは更に5分ほど私の部屋に留まり、彼女の知り合いで家を消失した人が何人かいるという話をしてくれました。私はその間、吹き出しそうになるのを必死でこらえていました。火事は深刻な天災だし笑い事じゃないのはもちろん分かってるんだけど、すっぽんぽんの人達が何百人も「とりあえず服着なきゃ!服はどこ?」と大慌てでリゾート内を右往左往するイメージ(勝手な想像)が頭の中で止まらなくなってたのです。他の客に服を借りようにも、皆ほとんど持って来てないだろうからなあ。

2012年8月13日月曜日

Summer Picnic Party

土曜日の日中、ダウンタウン・サンディエゴ支社主催のサマー・ピクニック・パーティがあったので、妻と二人で参加しました。場所は、総務のトレーシーが住むアパートとその前庭、及びビーチ。なんと、彼女の自宅前には芝生の広場が広がっていて、それを超えるとすぐビーチなのです。彼女が朝一番で場所取りをしてくれたおかげで、アパートからビーチまで続く広大なエリアを貸切状態。

飲み物や食べ物はケータリング・サービスを使い、参加者はドリンクを手に談笑したり、子供を芝生の上で遊ばせたり、サーフボードを抱えてビーチへ向かったり、と思い思いにくつろぎの時間を過ごします。

トイレを借りようと二階に上がったところ、リビングルームの窓からの景色に絶句しました。水平線に沈む夕陽の写真が彼女のオフィスの壁に貼ってあるのは知ってたんだけど、あれ、自分の家の窓から撮ったのか!

毎日最高に幸せよ!と笑うトレイシー。そりゃそうだ!

2012年8月12日日曜日

Maybe I missed my calling. 職業間違えたかも。

金曜の昼、二週間ぶりに同僚ディックとバーガーラウンジへ行きました。前回のランチでは、私が新たな職務を引き受けるかどうか悩んでいるという話で終わっていたので、彼が「あの件どうなった?」と聞いてきました。やることにしたと告げると、「おめでとう」と祝福されました。

「部下が出来るとは言っても、給料査定やら解雇通告やらはしなくて済むポジションだからね。その分気が楽だよ。」
と私。その時、ディックには直属の部下が15人もいることを思い出しました。

「部下がそれだけ大勢いたら、全員有能というわけにはいかないでしょ。中には問題児もいたりするんじゃない?給料上げてくれとしつこく訴えて来るとかさ。」
「ああ、そりゃ何人かは扱いにくいのもいるね。」
「最近、他の社員がいくらもらってるか、割と簡単に分かるようになったでしょ。あれ、ちょっとまずいよね。」
職種も経験年数も似通った二人の社員の報酬に大きな開きがあることが分かったりすると、感情的なしこりを生む可能性があります。うちの会社は短期間に吸収合併を繰り返したため、同じ職場でも出身会社は様々。金払いの良い会社から来た人とそうでない会社から来た人とで給与に大きな差が出るのは珍しいことではありません。ここ数年のシステム改善の結果、誰でもプロジェクトの財務データにアクセス出来るようになり、同僚がいくら稼いでいるか簡単に分かるようになってしまったのです。

「誰かを名指しで、あいつはこんなに給料もらってるじゃないか、不公平だって文句言ってくる奴もいるよ。」
「やっぱりね。そういう時はどう対処してるの?」
「僕は大抵こう言うんだ。彼と君との能力を正当に較べるため、表を作って来てくれって。技術分野だけでなく、コミュニケーション能力だとか指導力だとか、業務を遂行するために必要な全ての能力を網羅した表をね。それから周りの社員たちに客観的に採点してもらえって。もしもその表が埋められないと言うのであれば、正当な判断のための情報が不十分だということになり、二人の報酬の違いが不当だという主張の裏づけにならない。単なる言いがかり、という話になるだろう。」

私はひどく感心してしまいました。さすがに部下を大勢指導しているだけのことはあります。
“You know what, Dick? You sound like a court lawyer.”
「ディックさあ、今の、まるで法廷弁護士みたいだったぜ。」

と褒めると、笑顔になった彼は、自分はもともとアナリティカルな人間なんだ、と言い、
“Maybe I missed my calling.”

と続けました。
「コーリングをミスしたかも」という発言ですが、この「コーリング」が何かを知らないと、全く意味が分かりませんね。

ずっと以前、オフィスをシェアしていた同僚のデニスが、ウガンダの学校建設プロジェクトにボランティアとして参加することにした、そのために一時休職する、と話してくれたことがありました。驚いた私がその動機を尋ねたところ、彼がこう答えたのです。
“I’m just following my calling.”
「コーリングに従ってるだけだよ。」

デニスは敬虔なクリスチャン。このケースでは、「神のお告げ」ということになります。つまり、

「神の思し召しに従っているだけだよ。」
ですね。

さて、ディックの発言にあった「コーリング」ですが、調べてみたら、「天職」つまり「天から授かった職業」という意味もあったのです。要するに彼が言いたかったのは、こういうことですね。
“Maybe I missed my calling.”
「職業間違えたかも。」

2012年8月7日火曜日

Have a good one! は万能選手

三週間前、夏休みを満喫中の息子から、

「パパはどうしていつも遅いの?早く帰ってボクと遊んでよ。」
という不平を受け、ギクリとしました。確かにここのところ、遅い帰宅が続いていたのです。いつも気がつくと残業が恒常化してるんだよなあ…。

それからというもの、5時半までに社を去るよう努力しています。これまでは大抵ガランとしたオフィス内を見回り、誰も残っていないのを確認した上でドアに鍵をかけて退社していた私。この三週間は、明るいうちに帰っています。
さて、そこではたと気づいたのですが、同僚たちに対する適当な退社時の挨拶が思いつかないのです。

Good bye (さようなら)が使われるのを聞いたことはありません(なにか大仰な感じを受けるからかもしれません)。
Good night (おやすみなさい)はこの場合、ちょっとおかしい気がします。
Have a good day. (良い一日を)は、午前中に誰かと別れる際に使ってます。
See you tomorrow. (また明日)は一番しっくり来るんだけど、毎日あちこちのオフィスを回って仕事している私には、使いにくいフレーズです。
埒が明かないので、帰り際に同僚ステヴをつかまえて質問してみました。

「そうだね。Good night は残業で夜遅くなった時ならぴったりだけど、明るいうちはおかしいよね。」
Good evening. も変だよね。」
「そうだね。夜、誰かに会った時にする挨拶だからね。」

「じゃ、ステヴだったらこういう状況で、同僚にどう挨拶する?夕方とはいえ、まだ明るいでしょ。」
「う~ん、そうだなあ。例えば相手がシェリルだったら、See ya! かな。」

シェリルというのはステヴの仲良しの同僚で、キュービクルの壁越しに、しょっちゅうジョークの飛ばし合いをしています。See ya! See you later! (またね)の短縮形ですね。
「でもさあ、シェリルはステヴの友達だからいいけど、そこまで近しい関係じゃない同僚に対しては使いにくいんじゃない?」
「確かにね。なれなれしい感じだもんね。う~ん、なんて言うかなあ。」

考え込んでしまったステヴ。あまり長居したくなかった私は、お礼を言った後、See ya! とオフィスを後にしました。

さて昨日も、5時半きっかりにオフィスを出ました。エレベーターを待っていた時、誰かが背後から急ぎ足でやって来るのに気づいて振り向くと、話題のシェリルでした。彼女とは仕事上の接点がほとんど無く、過去一年に交わした会話は合計1分くらい。彼女について知っていることといえば、ポーランド系アメリカ人で博士号を持っているということくらい。
こういう相手とエレベーターに二人きりというのは、非常に気まずいのです。で、天気の話などしながら一階へ。そのうち、二人とも交差点の向こうにある同じ駐車場に車を停めていることが判明したため、信号待ちの間、更にぎこちない時間が続きます。どこに住んでいるのかとか通勤時間が長いとか短いとか、どうでもいい話で間を持たせた後、いよいよさよならを言うタイミングを迎えました。
さあどうする?

夏時間のサンディエゴは、5時半でもまだ真昼の明るさです。Good night を言う状況では全くない。See ya! と言うほどの間柄でもない…。
その時、シェリルが笑顔でこう言いました。

“Have a good one!”
お~っ!そうそう、これがあった!Have a good day. とかHave a good night. の最後の部分を、 “one”を使ってボカしちゃうパターン。これは、いついかなる状況でも使えるオールマイティな別れの挨拶なのです。

シェリルのおかげで、便利なフレーズを憶えました。