サウスカロライナ支社のテッドが、協力会社のアレックスとのやり取りメールを転送してきました。プロジェクトのスケジュールを更新する上で、協力会社の情報は不可欠。アレックスとの顔繋ぎをはからってくれたのです。興味深かったのは、彼らの対話の一部。
まず、テッドがこんな要請をしています。
Can you give us some written summary on a bi-weekly basis?
バイウィークリーで(進行中の業務の)概要を報告してくれないか?
アレックスの返信がこれ。
You said bi-weekly. That's twice a week. Did you mean every two weeks to send an update ?
バイウィークリーって書いてたけど、そりゃ週に二回ってことだよね。それとも隔週で報告しろって意味だったの?
これに対し、テッドが冗談混じりに切り返します。
Alex, bi-weekly is every two weeks, but if you would prefer to do updates twice a week that would be acceptable.
アレックス、バイウィークリーは隔週のことだよ。でも、もしそうしたいなら週に二度報告してくれても構わないよ。
この “Biweekly” という単語は実に紛らわしく、辞書を引くと「隔週」と「週二回」という全く違う訳が、仲良く肩を並べているのです。そんないい加減な話があるでしょうか?
ちょうどラスベガスから出張していた同僚のエリカに、どちらが正しいか聞いてみました。
「それは隔週でしょ。私たちの給料もバイウィークリーに支払われてるじゃない。」
それから少し考えて、
「ちょっと待って。でも、週二回という意味で使われてるのを聞いたことがあるわ。辞書引いてみるわね。」
オンラインの辞書で意味を確認したエリカが、息を呑みました。
「あら。両方正しいみたいよ。え?どういうことかしら?」
まるで狐につままれたような表情。
この後、マリアとエドも加わって議論したのですが、辞書に二つ意味が載っている以上、どちらか一方に軍配を挙げるわけには行きません。誤解が生じないよう、隔週の場合は “Every two weeks”、週二回の場合は “Twice a week” と言い換えた方が得策だろう、という結論に達しました。
「俺は週に二回給料貰っても構わないけどな。」
とエド。
「私も!」
と嬉しそうに笑うエリカ。
いや、そういう話じゃないんだけど…。
2012年3月29日木曜日
2012年3月27日火曜日
This Sunday? Next Sunday? 今度の日曜
昨日の電話会議中、次回の打ち合わせのスケジュール調整をしていた時、誰かが
“What about next Wednesday?”
「次の水曜ではどう?」
と言いました。昨日は月曜。素直に考えれば、これは明らかに明後日のことです。しかし予想通り、
「それは今週のこと?それとも来週のこと?」
という確認の質問が飛び交いました。
このnext (次の)という言葉ですが、単純なようで実は混乱の元になることの多い単語なのです。理由は簡単。それは、「翌週の」という意味にも取れるから。それなら“This Wednesday” ではどうなのか?これまた、「ついこないだの水曜」という過去の話でも使えるし、「今週の」とも解釈出来る。一体アメリカ人は、どう判断しているのでしょうか?
会議が終了し、給湯コーナーに行った際、総務のトレイシーに意見を聞いてみました。すると私の質問を聞き終わらないうちに、「よくぞ聞いてくれた」という表情で、
「そうそうそうそう。私、いつも聞き返すのよ。それは今週の水曜のこと?それとも来週?って。」
「そうでしょ。例えば今日の段階でNext Sunday と言ったら、大抵の人は今度の週末の日曜を思い浮かべるけど、金曜の午後になって、Next Sunday にパーティーやるから来てよ、と言われたら迷うよね。」
トレイシーは、ちょうど隣にいたIT担当のエリックに、
「あなただったらどう受け取る?」
と尋ねました。
「俺なら今週末の日曜だと思うな。Next ってさ、次に来るってことだろ。」
「私は来週だと思う。だって今週なら This Sunday って言うはずだもの。」
「意見が分かれるね。」
と私。
「駄目な言語よね、英語って。」
と笑うトレイシー。
で、10分ほど話し合った後に出した我々の結論がこれ。
This Sunday とか Next Sundayは紛らわしいので、「This coming Sunday(今度の日曜)」とか「Sunday, the following week(来週の日曜)」などと長めに表現する。もしくは「Sunday, the 30th 」などと日付を添えて明確化するべし。
“What about next Wednesday?”
「次の水曜ではどう?」
と言いました。昨日は月曜。素直に考えれば、これは明らかに明後日のことです。しかし予想通り、
「それは今週のこと?それとも来週のこと?」
という確認の質問が飛び交いました。
このnext (次の)という言葉ですが、単純なようで実は混乱の元になることの多い単語なのです。理由は簡単。それは、「翌週の」という意味にも取れるから。それなら“This Wednesday” ではどうなのか?これまた、「ついこないだの水曜」という過去の話でも使えるし、「今週の」とも解釈出来る。一体アメリカ人は、どう判断しているのでしょうか?
会議が終了し、給湯コーナーに行った際、総務のトレイシーに意見を聞いてみました。すると私の質問を聞き終わらないうちに、「よくぞ聞いてくれた」という表情で、
「そうそうそうそう。私、いつも聞き返すのよ。それは今週の水曜のこと?それとも来週?って。」
「そうでしょ。例えば今日の段階でNext Sunday と言ったら、大抵の人は今度の週末の日曜を思い浮かべるけど、金曜の午後になって、Next Sunday にパーティーやるから来てよ、と言われたら迷うよね。」
トレイシーは、ちょうど隣にいたIT担当のエリックに、
「あなただったらどう受け取る?」
と尋ねました。
「俺なら今週末の日曜だと思うな。Next ってさ、次に来るってことだろ。」
「私は来週だと思う。だって今週なら This Sunday って言うはずだもの。」
「意見が分かれるね。」
と私。
「駄目な言語よね、英語って。」
と笑うトレイシー。
で、10分ほど話し合った後に出した我々の結論がこれ。
This Sunday とか Next Sundayは紛らわしいので、「This coming Sunday(今度の日曜)」とか「Sunday, the following week(来週の日曜)」などと長めに表現する。もしくは「Sunday, the 30th 」などと日付を添えて明確化するべし。
2012年3月22日木曜日
Don’t drink the Kool-Aid. 鵜呑みにするなよ。
水曜の昼過ぎ、三回目のフロリダ出張から帰って来ました。今回は月曜と火曜の二日間だけだったのですが、「シンスケがいるうちにカタをつけるぞ」ということで、両日とも12時間くらいぶっ通しで働きました。さらには、「寝る前にホテルの部屋でやっちゃってくれ」と宿題もたっぷり出され、もうフラフラ。こうなると、逆にどんどんハイになって来て、「もうホテルに戻らなくてもいいよ。このまま夜明けまで作業続けようよ。」なんていう心境になります。
火曜日には、サウスカロライナからお偉方のスティーブが飛んできて合流。会議テーブルの向かい側に座り、新規プロジェクト獲得のための議論をプロジェクト・チームと続けました。私もスケジュール作りをしながら聞くともなく聞いていたら、こんなセリフが飛び出しました。
“So I said to him, don’t drink the Kool-Aid.”
「だから俺は言ってやったんだよ。クールエイドは飲むなってね。」
思わずピクッと反応する私。クールエイド(Kool-Aid)というのは、アメリカ人なら誰でも知ってる粉末清涼飲料(水に溶かして飲む、あれですね)。1927年の登場以来、ずっと人気を保っている超ロングセラー商品です。しかしそれは分かるとしても、どうして唐突に飲み物の名前が仕事の話に割り込んで来たの?
その晩は、9時近くなって現場事務所を後にしました。スティーブと並んで駐車場に向かいながら、恐る恐る聞いてみました。
「さっき、クールエイドは飲むなってセリフが出ましたよね。あれ、どういう意味なんですか?」
するとスティーブが軽く笑い、
「ああ、そういえばそんな話をしたね。あれはさ、見たこと聞いたことをそのまま受け入れるなって意味なんだよ。ほら、ジョーンズタウンの事件があったでしょ。」
「ジョーンズタウンの事件」とは、南米ガイアナで1978年に起きたカルト教団の集団自殺のこと。「人民寺院」の教祖ジム・ジョーンズが、シアン化合物を入れた飲料水を信者たちに飲ませて900人以上を死に至らせたという陰惨な事件。この出来事から、「誰かの思想や哲学を無批判に受け入れる」ことを “Drinking the Koo-Aid” と表現するようになったのですね。実際には、この事件で使われた「飲料水」は Flavor Aid だったのですが、クールエイドの方が商品として有名だったために、すげ替えられてしまったのだとか。また、生き残った信者の証言によると、銃を突きつけられて無理やり飲まされた人も多くいたとのことで、このフレーズで事件の全貌を説明するのは適切じゃないようです。
そんなわけで、元ネタが異常に暗いのが気になるものの、今回の出張で新しいイディオムを仕入れることが出来ました。私の和訳はこれ。
“Don’t drink the Kool-Aid.”
「鵜呑みにするなよ。」
火曜日には、サウスカロライナからお偉方のスティーブが飛んできて合流。会議テーブルの向かい側に座り、新規プロジェクト獲得のための議論をプロジェクト・チームと続けました。私もスケジュール作りをしながら聞くともなく聞いていたら、こんなセリフが飛び出しました。
“So I said to him, don’t drink the Kool-Aid.”
「だから俺は言ってやったんだよ。クールエイドは飲むなってね。」
思わずピクッと反応する私。クールエイド(Kool-Aid)というのは、アメリカ人なら誰でも知ってる粉末清涼飲料(水に溶かして飲む、あれですね)。1927年の登場以来、ずっと人気を保っている超ロングセラー商品です。しかしそれは分かるとしても、どうして唐突に飲み物の名前が仕事の話に割り込んで来たの?
その晩は、9時近くなって現場事務所を後にしました。スティーブと並んで駐車場に向かいながら、恐る恐る聞いてみました。
「さっき、クールエイドは飲むなってセリフが出ましたよね。あれ、どういう意味なんですか?」
するとスティーブが軽く笑い、
「ああ、そういえばそんな話をしたね。あれはさ、見たこと聞いたことをそのまま受け入れるなって意味なんだよ。ほら、ジョーンズタウンの事件があったでしょ。」
「ジョーンズタウンの事件」とは、南米ガイアナで1978年に起きたカルト教団の集団自殺のこと。「人民寺院」の教祖ジム・ジョーンズが、シアン化合物を入れた飲料水を信者たちに飲ませて900人以上を死に至らせたという陰惨な事件。この出来事から、「誰かの思想や哲学を無批判に受け入れる」ことを “Drinking the Koo-Aid” と表現するようになったのですね。実際には、この事件で使われた「飲料水」は Flavor Aid だったのですが、クールエイドの方が商品として有名だったために、すげ替えられてしまったのだとか。また、生き残った信者の証言によると、銃を突きつけられて無理やり飲まされた人も多くいたとのことで、このフレーズで事件の全貌を説明するのは適切じゃないようです。
そんなわけで、元ネタが異常に暗いのが気になるものの、今回の出張で新しいイディオムを仕入れることが出来ました。私の和訳はこれ。
“Don’t drink the Kool-Aid.”
「鵜呑みにするなよ。」
2012年3月18日日曜日
Cheesy ベタな
一昨日は久しぶりに同僚ディックとランチへ行きました。彼は一言一言しっかり考えながら話す男で、一緒にいると、必ずと言って良いほど新しい英語表現を学べます。
今回の話題は映画。アメリカって最近、考えさせられる映画が少ないよね、という話で意気投合。薄っぺらな作品を立て続けに何本も観ると、ハリウッド映画はもう暫くいいやって気になる、と。
「トランスフォーマーだってさ、作り方によってはもっと深い作品にも出来たはずだと思うんだよね。」
と、ディック。その次に彼が言ったセリフにピクッとなりました。
“I’m tired of cheesy happy endings.”
「cheesyなハッピーエンドにはもううんざりだよ。」
このチーズィー(字義通りには「チーズっぽい」)という単語、以前から何度も聞いているのですが、どういう場面で使われるのかがよく飲み込めずにいました。昔、上司のリンダに、高速道路設計チームの新しいロゴを見せたところ、
“That’s cheesy.”
とコメントされ、どうしてここでチーズが出てくるの?と意味を尋ねたのですが、何か「説明する価値も無い」みたいな対応をされて釈然としないまま諦めた経験があります。このロゴは、高速道路が地平線まで続いた先に太陽が照っている、という素人くさいデザインで、褒めるのはもちろん、こき下ろす価値すら無いようなものでした。
今回ちゃんと調べてみて分かったのですが、19世紀のイギリスでは、チーズそのものが小さかったこともあり、cheesy は「良質な、高級なもの」を指す言葉だったそうです。
後にチーズがアメリカに渡ると、商品が大型化するとともに、もともとの意味は薄れて行ったそうです。その後、アメリカの学生の間で「無知でまぬけな人」という俗語として流行り、これが「安っぽい、質の悪い」という意味に変わったのだと。
これまでに私が聞いた様々な用例を総合すると、「クサい、ダサい、安っぽい、陳腐な、ひねりのない」という和訳が適していると思うのですが、今回のディックのセリフに限って言えば、「ベタな」が一番しっくり来る気がします。
“I’m tired of cheesy happy endings.”
「ベタなハッピーエンドにはもううんざりだよ。」
今回の話題は映画。アメリカって最近、考えさせられる映画が少ないよね、という話で意気投合。薄っぺらな作品を立て続けに何本も観ると、ハリウッド映画はもう暫くいいやって気になる、と。
「トランスフォーマーだってさ、作り方によってはもっと深い作品にも出来たはずだと思うんだよね。」
と、ディック。その次に彼が言ったセリフにピクッとなりました。
“I’m tired of cheesy happy endings.”
「cheesyなハッピーエンドにはもううんざりだよ。」
このチーズィー(字義通りには「チーズっぽい」)という単語、以前から何度も聞いているのですが、どういう場面で使われるのかがよく飲み込めずにいました。昔、上司のリンダに、高速道路設計チームの新しいロゴを見せたところ、
“That’s cheesy.”
とコメントされ、どうしてここでチーズが出てくるの?と意味を尋ねたのですが、何か「説明する価値も無い」みたいな対応をされて釈然としないまま諦めた経験があります。このロゴは、高速道路が地平線まで続いた先に太陽が照っている、という素人くさいデザインで、褒めるのはもちろん、こき下ろす価値すら無いようなものでした。
今回ちゃんと調べてみて分かったのですが、19世紀のイギリスでは、チーズそのものが小さかったこともあり、cheesy は「良質な、高級なもの」を指す言葉だったそうです。
後にチーズがアメリカに渡ると、商品が大型化するとともに、もともとの意味は薄れて行ったそうです。その後、アメリカの学生の間で「無知でまぬけな人」という俗語として流行り、これが「安っぽい、質の悪い」という意味に変わったのだと。
これまでに私が聞いた様々な用例を総合すると、「クサい、ダサい、安っぽい、陳腐な、ひねりのない」という和訳が適していると思うのですが、今回のディックのセリフに限って言えば、「ベタな」が一番しっくり来る気がします。
“I’m tired of cheesy happy endings.”
「ベタなハッピーエンドにはもううんざりだよ。」
2012年3月16日金曜日
Play devil’s advocate 敢えていちゃもんをつける
ここ最近、フロリダのプロジェクトにすっかり忙殺されています。手がけているスケジュールの完成が延び延びになっていて、今度の日曜にまた出張(三度目)することになりました。本来なら二度目の出張でけりをつけるはずだったのですが、プロジェクト・チームの主要メンバーが皆忙しすぎて、せっかく私が現地に飛んでも打ち合わせる時間がなかなか取れないんです。工事の現場というのは次々と不測の事態が発生するのが常で、私の滞在中、PMのルーもCMのマイクも、どたばたと出入りを繰り返していました。
一昨日、その二人と電話会議をしたのですが、
“How are you?”
とまず挨拶を投げかけた私に対し、ルーが忌々しげな声でゆっくりと、
“F**k!”
「ファ~ック!」
と吐き捨て、ちょっと間を置いてから。
“That’s all I can say.”
「俺に言えるのはそれだけだ。」
と付け足しました。一拍置いてマイクが、
“Good.”
「いいね。」
と落ち着いた声で合いの手を入れます。…ナンナンダこの会話?
現地に飛んでみて分かったのは、まさに「事件は現場で起きている」のであって、みんな毎日恐ろしいほどのプレッシャーに堪えて働いているということ。更には、既に殺人的な忙しさだというのに、毎週お偉方のスティーブがやって来て、進行中のプロジェクトに絡めた新たな仕事をどうやって獲得するかというテーマで連日打ち合わせを繰り返していました。スティーブがズバズバと内角を抉るような鋭い質問や指摘をルーに投げ続けていたところ、ただでさえ熱くなりやすい彼の顔が、みるみる上気して行きました。ルーがいきり立って反論し始めたのに気付き、スティーブがニコニコ笑いながらこう言いました。
“Don’t get me wrong. I’m just playing devil’s advocate.”
「誤解しないでくれよ。俺は悪魔の擁護者を演じているだけなんだから。」
この、devil’s advocate というのは、しょっちゅう会話に登場するフレーズです。advocate(アドボケイト)は「弁護者、擁護者」という意味。「悪魔のサイドにつく」というのは、「反対の立場に立つ」ということ。論理の欠陥を指摘することで相手に補強するチャンスを与え、結果的により強固な議論を完成させるのに貢献することになる、そういう話ですね。意訳すると、こういうことでしょうか。
“I’m just playing devil’s advocate.”
「俺は敢えていちゃもんつけてるだけなんだよ。」
己の信ずるところを、臆することなく人前で主張する練習を幼い頃から積み重ねるアメリカ人ですから、公然と反論されるのなんて慣れっこだと思ってました。でもやっぱり人間なので、感情的になることもあるのですね。「俺は味方として反論してんだよ」と相手に伝え、建設的な雰囲気を醸し出すのに便利なイディオムだと思いました。
一昨日、その二人と電話会議をしたのですが、
“How are you?”
とまず挨拶を投げかけた私に対し、ルーが忌々しげな声でゆっくりと、
“F**k!”
「ファ~ック!」
と吐き捨て、ちょっと間を置いてから。
“That’s all I can say.”
「俺に言えるのはそれだけだ。」
と付け足しました。一拍置いてマイクが、
“Good.”
「いいね。」
と落ち着いた声で合いの手を入れます。…ナンナンダこの会話?
現地に飛んでみて分かったのは、まさに「事件は現場で起きている」のであって、みんな毎日恐ろしいほどのプレッシャーに堪えて働いているということ。更には、既に殺人的な忙しさだというのに、毎週お偉方のスティーブがやって来て、進行中のプロジェクトに絡めた新たな仕事をどうやって獲得するかというテーマで連日打ち合わせを繰り返していました。スティーブがズバズバと内角を抉るような鋭い質問や指摘をルーに投げ続けていたところ、ただでさえ熱くなりやすい彼の顔が、みるみる上気して行きました。ルーがいきり立って反論し始めたのに気付き、スティーブがニコニコ笑いながらこう言いました。
“Don’t get me wrong. I’m just playing devil’s advocate.”
「誤解しないでくれよ。俺は悪魔の擁護者を演じているだけなんだから。」
この、devil’s advocate というのは、しょっちゅう会話に登場するフレーズです。advocate(アドボケイト)は「弁護者、擁護者」という意味。「悪魔のサイドにつく」というのは、「反対の立場に立つ」ということ。論理の欠陥を指摘することで相手に補強するチャンスを与え、結果的により強固な議論を完成させるのに貢献することになる、そういう話ですね。意訳すると、こういうことでしょうか。
“I’m just playing devil’s advocate.”
「俺は敢えていちゃもんつけてるだけなんだよ。」
己の信ずるところを、臆することなく人前で主張する練習を幼い頃から積み重ねるアメリカ人ですから、公然と反論されるのなんて慣れっこだと思ってました。でもやっぱり人間なので、感情的になることもあるのですね。「俺は味方として反論してんだよ」と相手に伝え、建設的な雰囲気を醸し出すのに便利なイディオムだと思いました。
2012年3月9日金曜日
チップの相場
二度目のフロリダ出張から今朝戻りました。今回も、4日連続で現場事務所に朝から晩まで缶詰状態。しかもほとんどのメンバーが同じホテルに寝泊りしてるので、朝食でも晩飯でも誰かしらと顔を合わせることになります。まるで学生時代の合宿。意識して一人の時間を作らないと、若干息が詰まります。
さて、そのホテルですが、宿泊期間中ずっと使える「朝食無料クーポン」をチェックインの際に渡され、毎朝これを一階のレストランに持参してタダ飯を頂いてました。ここで悩ましいのが、チップ(tip)。渡米してそろそろ12年になろうとしているのに、未だにこの習慣に馴染めません。通常レストランで食事する場合は、税金(8%前後)の二倍強(20%程度)をチップとして足しています。アメリカ人に尋ねると、それくらいで良いんじゃない?言われます。しかし、今回のケースはタダ飯なわけです。一体いくら置けばいいの?良く分からないので、皿の横にひっそりと1ドル札を置いて、不安なままそそくさと立ち去る毎日。
最終日の朝、レストランに行ってみると、サウスカロライナから来ているスティーブとテッドが座っていて、一緒に食べようと促されました。同じテーブルについたところ、程なくデイブとマイクもやって来て、五人で談笑しつつ朝食をとります。食事が済んだ時、私は部屋に財布を置いて来てしまったことに気付き、慌てました。しかし同時に、20ドル札と5ドル札しか入っていなかったことも思い出し、今回はまあチップ払わなくてもいいか、とあっさり諦めました。コーヒーもジュースもセルフ・サービスコーナーで注いで来てるんだし、と。
ところが、同席していた4人の男たちは立ち上がり際、まるで申し合わせたようなタイミングでポケットや財布から1ドル札の束を取り出し、バサバサとテーブル上に放り出したのです。まるでトランプ遊びで、捨てられるカードを選り分けて場に投げる速さを競うみたいに。ざっと見たところ、ひとり最低でも3ドルは出しています。一銭も払わなかった私はあまりのきまり悪さに、誰が咎めたわけでもないのですが、
「あ、部屋に財布置いてきちゃった。」
と周りに聞こえるか聞こえないかの小声でひとり言い訳していました。
部屋に帰って歯を磨きながら、激しく後悔。そうだ、チップというのはサービスに対する報酬なんだから、たとえ食事が無料でもそれなりの額を払わなきゃいかんのだった!そもそも、財布に1ドル札が一枚も入っていない状況を作っちゃいけないな、と深く反省。アメリカはカード社会だと言われるけど、チップをきちんと払うためには、充分な枚数の1ドル札を常時携帯している必要があります。早速その晩ウォルマートへ出かけ、レジで20ドルを1ドル札に崩してもらいました。
今朝、ホテルの部屋に3ドル置いてチェックアウト。バスルームの掃除やベッドメイクなんて、そもそも値札の付いていないサービスなので、レストランの時みたいにチップの額を単純計算出来ません。だから、3ドルが相場として正解なのかどうかは未だに不明です。それでもとにかく、「1ドル札を切らしているのでチップを置けない」状況だけは脱したので、幾分か気が楽になりました。
フロリダを発ったのが現地時間で朝6時(カリフォルニア時間で午前3時)。10時前にはサンディエゴ空港に到着。ダウンタウンまで市営バスが走っていることが分かっていたので、少しオフィスに寄って仕事して行こうと、初めてのバス利用を試みました。次の便の到着を待ちつつバス停に立って時刻表を眺めていたら、こんな表示を発見。
「運賃は2ドル25セントです。つり銭の出ないよう願います。」
ガーン!25セントなんて無いぞ。そこまで細かいの持ち歩かないといけないのか?昨晩1ドル札まで崩したのに、その先までは考えなかった!仕方ないのでタクシーを拾ったのですが(10ドル+チップ3ドル)、よく考えたら、3ドル出して「おつりは結構です」って言えば良かった。
さて、そのホテルですが、宿泊期間中ずっと使える「朝食無料クーポン」をチェックインの際に渡され、毎朝これを一階のレストランに持参してタダ飯を頂いてました。ここで悩ましいのが、チップ(tip)。渡米してそろそろ12年になろうとしているのに、未だにこの習慣に馴染めません。通常レストランで食事する場合は、税金(8%前後)の二倍強(20%程度)をチップとして足しています。アメリカ人に尋ねると、それくらいで良いんじゃない?言われます。しかし、今回のケースはタダ飯なわけです。一体いくら置けばいいの?良く分からないので、皿の横にひっそりと1ドル札を置いて、不安なままそそくさと立ち去る毎日。
最終日の朝、レストランに行ってみると、サウスカロライナから来ているスティーブとテッドが座っていて、一緒に食べようと促されました。同じテーブルについたところ、程なくデイブとマイクもやって来て、五人で談笑しつつ朝食をとります。食事が済んだ時、私は部屋に財布を置いて来てしまったことに気付き、慌てました。しかし同時に、20ドル札と5ドル札しか入っていなかったことも思い出し、今回はまあチップ払わなくてもいいか、とあっさり諦めました。コーヒーもジュースもセルフ・サービスコーナーで注いで来てるんだし、と。
ところが、同席していた4人の男たちは立ち上がり際、まるで申し合わせたようなタイミングでポケットや財布から1ドル札の束を取り出し、バサバサとテーブル上に放り出したのです。まるでトランプ遊びで、捨てられるカードを選り分けて場に投げる速さを競うみたいに。ざっと見たところ、ひとり最低でも3ドルは出しています。一銭も払わなかった私はあまりのきまり悪さに、誰が咎めたわけでもないのですが、
「あ、部屋に財布置いてきちゃった。」
と周りに聞こえるか聞こえないかの小声でひとり言い訳していました。
部屋に帰って歯を磨きながら、激しく後悔。そうだ、チップというのはサービスに対する報酬なんだから、たとえ食事が無料でもそれなりの額を払わなきゃいかんのだった!そもそも、財布に1ドル札が一枚も入っていない状況を作っちゃいけないな、と深く反省。アメリカはカード社会だと言われるけど、チップをきちんと払うためには、充分な枚数の1ドル札を常時携帯している必要があります。早速その晩ウォルマートへ出かけ、レジで20ドルを1ドル札に崩してもらいました。
今朝、ホテルの部屋に3ドル置いてチェックアウト。バスルームの掃除やベッドメイクなんて、そもそも値札の付いていないサービスなので、レストランの時みたいにチップの額を単純計算出来ません。だから、3ドルが相場として正解なのかどうかは未だに不明です。それでもとにかく、「1ドル札を切らしているのでチップを置けない」状況だけは脱したので、幾分か気が楽になりました。
フロリダを発ったのが現地時間で朝6時(カリフォルニア時間で午前3時)。10時前にはサンディエゴ空港に到着。ダウンタウンまで市営バスが走っていることが分かっていたので、少しオフィスに寄って仕事して行こうと、初めてのバス利用を試みました。次の便の到着を待ちつつバス停に立って時刻表を眺めていたら、こんな表示を発見。
「運賃は2ドル25セントです。つり銭の出ないよう願います。」
ガーン!25セントなんて無いぞ。そこまで細かいの持ち歩かないといけないのか?昨晩1ドル札まで崩したのに、その先までは考えなかった!仕方ないのでタクシーを拾ったのですが(10ドル+チップ3ドル)、よく考えたら、3ドル出して「おつりは結構です」って言えば良かった。
2012年3月6日火曜日
2012年3月3日土曜日
Cascade the message down メッセージを(次々と)転送する
先日、オンタリオ支社のモーガン(白人女性です)から南カリフォルニアの経理担当者に向けたメールが転送されて来ました。元々は、カリフォルニアのファイナンス部門を統括するトムが発信したもの。彼の文章は、こんな一節で締め括られています。
“I politely request that you cascade this message down to appropriate personnel in your department as I may have missed a critical person.”
「このメッセージを組織内で適宜カスケード・ダウンして下さい。誰か送り先に入れるのを忘れてしまったかもしれないので。」
こんな風に、トムの文章っていつもお洒落なんです。
Cascadeという言葉ですが、階段状に次々と流れ落ちる小さな滝のことを意味しています。Cascade something down で、何かを次々と転送していく、ということですね。これまで組織ベースでお知らせメールを送る際、「必要に応じて転送して下さい」という時はforward という単語を使っていたのですが、この言葉ひとつだと「次々と転送して組織の末端まで行き渡らせる」というニュアンスが出せません。いいのを頂きました。
それにしても、こんな表現を目にするのは初めてで、普通に使われてるのか不安になりました。昨日の午後、同僚マリアにこの話をしたところ、
「すご~い。あたしそんなクールな表現、使ったことないな。今度使おうっと。」
としきりに感心しています。
「トムってさ、インテリの匂いがするよね。」
と私。
「そうそう。いつも細かく神経を張り巡らせてる感じ。」
マリアはここで、先日の電話会議での出来事を話してくれました。
「私、オンタリオ支社のモーガンに連絡しておきますって発言した時、どういうわけか、モーガン・フリーマン(映画俳優の名前)って口走っちゃったのよ。10人以上参加者がいたんだけど、誰一人として突っ込まなかったのね。私もすぐに、あれは自分の気のせいで、本当はちゃんとモーガンって言ったんだわ、って思い直してたの。そしたらトムからメールが入ってね。モーガン・フリーマンって誰のこと?だって。それで私、やっぱりしくじってたんだ、って判ったの。彼はこういうの、聞き逃さないのよね。」
いやマリア、みんな聞き逃さなかったと思うぞ…。
“I politely request that you cascade this message down to appropriate personnel in your department as I may have missed a critical person.”
「このメッセージを組織内で適宜カスケード・ダウンして下さい。誰か送り先に入れるのを忘れてしまったかもしれないので。」
こんな風に、トムの文章っていつもお洒落なんです。
Cascadeという言葉ですが、階段状に次々と流れ落ちる小さな滝のことを意味しています。Cascade something down で、何かを次々と転送していく、ということですね。これまで組織ベースでお知らせメールを送る際、「必要に応じて転送して下さい」という時はforward という単語を使っていたのですが、この言葉ひとつだと「次々と転送して組織の末端まで行き渡らせる」というニュアンスが出せません。いいのを頂きました。
それにしても、こんな表現を目にするのは初めてで、普通に使われてるのか不安になりました。昨日の午後、同僚マリアにこの話をしたところ、
「すご~い。あたしそんなクールな表現、使ったことないな。今度使おうっと。」
としきりに感心しています。
「トムってさ、インテリの匂いがするよね。」
と私。
「そうそう。いつも細かく神経を張り巡らせてる感じ。」
マリアはここで、先日の電話会議での出来事を話してくれました。
「私、オンタリオ支社のモーガンに連絡しておきますって発言した時、どういうわけか、モーガン・フリーマン(映画俳優の名前)って口走っちゃったのよ。10人以上参加者がいたんだけど、誰一人として突っ込まなかったのね。私もすぐに、あれは自分の気のせいで、本当はちゃんとモーガンって言ったんだわ、って思い直してたの。そしたらトムからメールが入ってね。モーガン・フリーマンって誰のこと?だって。それで私、やっぱりしくじってたんだ、って判ったの。彼はこういうの、聞き逃さないのよね。」
いやマリア、みんな聞き逃さなかったと思うぞ…。
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