2011年8月30日火曜日

Tag, you’re it! はいタッチ。あんた鬼ね!

うちのオフィスビル(二階建て)はいくつかに仕切られていて、それぞれのエリアで警報システムが作動するようになっています。最後まで残っている人がアラームをセットしなければなりません。

先日、同僚マリアが夕方5時半頃私の部屋の前まで来て、こう言いました。

“Tag, you’re it!”

これには思わず吹き出しました。タグというのは「レッテルを貼る」という意味で、日本の鬼ごっこに相当する遊びの名前でもあります。鬼のことを “It” と呼び、鬼になっている子が “Tag!” と叫んで誰かにタッチすると、今度はその子が鬼になる、という仕組み。オフィスに最後まで残っていた私に、マリアはこう言いたかったわけです。

“Tag, you’re it!”
「はいタッチ。あなた鬼(アラームをセットする人)ね!」

さて、今朝のこと。経理のジョスリンに、担当プロジェクトの予算変更の電子書類を承認してもらうよう、メールで頼みました。
「金曜日に提出したんだけど、出来たら急いで承認してくれない?」
彼女が承認したらサンディエゴ支社のドンであるテリーが承認し、そのあとロスにいる財務のマイラへ。三人の承認を得て初めて、新予算が有効になるのです。決裁(会社ではこれをworkflow と呼んでいます)がすべてメールで済ませられるなんて、20年前には想像もしなかった技術革新。しかし逆にここまで便利になると、今度はスピードに対する期待値が高まります。金曜日に提出したっていうのに、火曜日まで放っておくなよな…。微妙にイラッとしていた私。そのピリピリ感を私のメールに感じ取ったのか、ジョスリンは即座に承認。そして私とテリー、そしてマイラに宛て、こんなメールを送って来ました。

“The workflow has gone to Teri. Tag, you’re it.”
「決裁はテリーに渡ったわよ。はいタッチ。あなた鬼ね。」

会計課の一社員が部長にこんなふざけたメール出すなんて、日本の会社じゃ有り得ないよなあ。

2011年8月29日月曜日

Brownbag 弁当持参

今日はダウンタウン・サンディエゴのオフィスで、トレーニングの講師を務めました。私が所属するオレンジ支社で先月3時間かけて教えた内容を、今回は正午から1時半まででやってくれ、というご要望。これにきっちりお答えして、ギリギリ90分のプログラムを組みました。パワーポイントのスライド180枚強。

こうしたトレーニングは、過去数年の間に数え切れないほどこなして来ているので、最近じゃほとんど緊張しません。今回も、聴衆を何度も深く頷かせるパワフルなメッセージをふんだんに盛り込んで臨み、やる前から手ごたえを感じていました。

ところが、いきなり会場のセットアップに手こずります。前の会議が長引いたため、会場入りしたのは開始10分前でした。私は別部門に所属していて、このオフィスでプレゼンするのは初めて。なんと、装置の使い方が分かりません。自分のラップトップを持ち込みたかったんだけど、この会議室では大テーブルの下に埋め込まれたコンピュータを使わないといけない。つまり、自分の手元で画面をチェック出来ないのです。スライドは巻き取り式のスクリーンではなく、前方の液晶テレビに映し出されます。大画面、と言いたいところですが、参加者が40人を超えると、これはちょっと小さすぎる。自然と、テレビに近づいて喋ることになります。しかも私は机上のスピーカーフォンを通して遠隔の聴衆にも話しかけなければいけないので、着席した姿勢でプレゼンする以外に道がない。ようやくセットアップが完了した時は、既に開始予定時刻を5分オーバーしていました。そして気がつくと、参加者は私を中心に半円を描くようにして座り、背後から私の肩越しにテレビ画面を見る格好になりました。こんな状況でプレゼンするのは生まれて初めてです。聴衆に背を向けているわけですから、彼らがどんな表情で私の話を聞いているか全く分かりません。しかも時間が押しているせいで、振り返っていちいちアイコンタクトを取る余裕も無い。

こんな心もとない状況に拍車をかけたのは、開始前に総務のベスが運んで来たクッキーの山。
「え?これだけ?ランチは無いの?」
「無いわよ。Brownbag(ブラウンバッグ)って言ってたでしょ。」
「それは聞いてるけど、普通は昼飯つきでしょ。」
「ブラウンバッグはブラウンバッグよ。」

さすがにこいつは堪えました。タダメシが出ると思ってわざわざ昼飯抜いて来たのに。空腹のまま1時半まで話し続けなきゃならんとは。トホホ…。

ブラウンバッグというのは、「弁当持ち込みの」という意味で、「ブラウンバッグ・セミナー」とか「ブラウンバッグ・トレーニング」という感じで使われる言葉です。アメリカ人の弁当はサンドイッチやハンバーガーが多いので、弁当といえば茶色い紙袋入り、というイメージなのですね。

ここでの問題は、「誰が弁当を用意するか」という点。私の所属部門では、ブラウンバッグ・トレーニングといえば会社が弁当を用意するのが常識になってます。社員が自分の昼食時間を献上して働くわけだから、昼飯くらい会社で出してくれて当然でしょ、という空気があるのですね。

それが今回のは、文字通りのブラウンバッグだったわけ。同じ会社内でも常識に大きな違いがあったのですね。そして「自分のランチタイムなんだからどう過ごそうと勝手でしょ。」という意識からか、皆気安く会議室に出たり入ったりして、最後の30分は、たくさんの人が何も言わずに立ち去っていく気配を背中で感じていました。昼休み明けに別会議が入っている人が大勢いたのかもしれないけど、単に私のプレゼンが退屈なだけかもしれない。まずい、このまま客を帰してはならん、と焦る気持ちから、段々とペースが乱れ始めました。いかん、これはいかん!

まるで売れない落語家の気分を味わった、ラスト30分でした。最近調子に乗りすぎてたな、と反省することしきり。プレゼンのイロハをおろそかにしたのが最大のミスでした。会場のセッティングを事前に調べることは、基本中の基本です。なんでそんな大事なチェック事項を飛ばしてしまったんだろう…。

それにしても、ブラウンバッグの件だけは納得行きません。「タダメシ食わせてやってんだから、そこで最後まできっちり座って話を聞け。」というやり方の方が良いと思うんだけど…。

2011年8月28日日曜日

Another day in paradise 毎日がパラダイス

数年前まで、プロジェクトのレビューのための電話会議に毎月参加していました。出席者は全米のあちこちに散らばっているのですが、年に数回は部門トップのアルがウィスコンシンから、ナンバー2のクリスがヴァージニアから飛んで来てサンディエゴの会議室に陣取り、まる一週間、毎日レビューを続けました。プロジェクト・マネジャーはニューヨーク、シカゴ、シアトル、など様々な場所にいて、会議は大抵、
「こっちは大雪だよ。」
とか、
「雨がもう二週間も降り続いてるわ。」
などという時候の挨拶から始まります。電話の相手が
「サンディエゴはどんな様子?」
と尋ねると、アルやクリスは必ずと言って良いほどこう答えていました。

“Another day in paradise!”
「今日もパラダイスだよ!」

サンディエゴというところは、一年中「暑すぎず寒すぎず、台風は来ないし雨もほとんど降らない」快適な気候で、ほぼ毎日抜けるような青空、海岸線には椰子の木が揺れていて、宮沢賢治が聞いたらきっと、「やってらんねえよ」と怒り出すことでしょう。

さてうちの家族は、今日もエンシニータスのビーチへ。これで三週連続です。息子は友達と一緒に、嬉々として波と戯れていました。金曜の晩、アパートのミニ映画館で「ソウル・サーファー」を鑑賞したのですが、主人公のベサニーがサメに左腕を噛み切られるシーンに衝撃を受けたらしく、帰る道々、
「僕もうサーフィンやだ。生き物がいない、波の出るプールで遊びたい。」
と、耳を疑いたくなるほど情けないコメントを吐いていたのですが、そんなことすっかり忘れたみたい。

次回は私も、いよいよサーフィン初挑戦かな?

2011年8月25日木曜日

Canned と Candid

先日サンディエゴ支社で面接した女性を採用しようという話になり、正式な手続きを開始しました。まずは Job Description (職務内容)を書き上げ、人事を通して会社の人材募集サイトに掲載しなければなりません。アーバイン支社のリサから素案を作ってくれという依頼があり、新人に担当してもらいたい内容をリストアップして送信しました。

さっそく先日の午後、彼女のボスのエリック、それに私に宛てて、リサからこんなメールが届きました。

Please review the attached description and let me know what you think.
添付の文章を見て感想を教えてね。

そしてこう続きます。

I tried to combine Shinsuke’s input with our HR “canned” description.
シンスケの書いたものと、人事部の「缶詰の」文章を合体してみたの。

え?キャンド?缶詰がどうしたって?

この表現、しょっちゅう耳にします。でも意味が分からない・・・。さっそく同僚リチャードに質問。
「既製品ってことだね。色んな場合に使える定型みたいなものだよ。Off-the-shelf (棚から下ろした)という言い方もあるな。」

缶詰になっているということは中身が腐りにくいわけで、何となく美味しそうなイメージもあったんだけど、よくよく考えてみれば新鮮な素材をそのまま食べた方が旨いに決まってる。今回の場合、私の素案を人事部の定型文と合体させたのであって、リサが一から書いた文章ではない。

I tried to combine Shinsuke’s input with our HR “canned” description.
シンスケの書いたものと、人事部の定型文を合体してみたの。

ということですね。折角なので、続けてリチャードに質問。
「あのさ、Candid ってコトバもあるでしょ。それは何なの?」
昔、キャンディッド・カメラ (Candid Camera)、日本で言う「どっきりカメラ」というテレビ番組があり、「隠しカメラ」という意味で理解していたのです。それがある時、

“Can you give me your candid opinion?"
「君のキャンディッドな意見をいただけるかな?」

と人から言われ、混乱したことがあります。
「あ、それはね、正直な、とか率直な、という意味だよ。」
とリチャード。

後で調べてみたところ、Candid は Can と無関係で、語源はラテン語・フランス語の「明るい、光った、白い」だそうです。それが「バイアスのかかっていない」「邪念の無い」「身構えていない」という意味に変わったのだと。キャンディッド・カメラは、最後の「身構えていない」に当たり、「ポーズを取っていない」ところを撮影するカメラ、というわけですね。

“Can you give me your candid opinion?’
「君の率直な意見を聞かせてくれる?」

今日はふたつ学びました。

2011年8月24日水曜日

Off the top of my head

ここ最近、会議やメールでこんなセリフを良く見聞します。

“I don’t know off the top of my head.”
「パッとは出てこないんだけど。」

“Off the top of my head I would say we’ll double our profits in the next three years.”
「おそらくだけど、うちの利益は三年で二倍になると思うよ。」

なんとなく理解した気分になってからよくよく考えてみると、どうも腑に落ちません。my head (頭の) the top of (てっぺんを)off (離れて)と分解してみると、この off という部分が納得出来ないのですね。さっそく同僚マリアに尋ねてみると、
「まったく、ナンノコッチャって感じ(doesn’t make sense at all)の表現よね。」
という反応。アメリカ人でもそう思うのね。

弁護士の同僚ラリーにも意味を尋ねたのですが、
「う~ん。確かにそうだね。なんでそういうのか、 “off the top of my head” 分からないなあ。」
と、さっそくイディオムを使って切り返されました。

後日調べてみたところ、どうやらこれは1900年代半ばから使われているイディオムらしく、「頭の中身を使わずに出した答え」というのがそもそもの意味らしい。だからoff が使われてるのか。「脳みそと離れたところから出た考え。」

ようやく納得です。

2011年8月20日土曜日

Winking in the dark 暗闇でウィンク

木曜日はオレンジ支社へ行き、久しぶりにボスのリックと会いました。彼は今、会社のトップを巻き込んで、大きな勝負に出ています。石油業界で長年使われてきた技術を環境業界に導入し、これまでの常識を覆すコンサルティング・サービスを展開して一気にシェアを伸ばそうという目論見。これを成功させれば、そこそこの規模の会社がひとつ誕生するくらいの勢いです。
「シンスケの力を借りたいんだ。どれだけ時間を割ける?」
「ほかならぬボスの頼みなんだから、もちろん出来る限り協力しますよ。なんでも言って下さい。」

この分野に明るくない私が聞いても、胸が躍るような技術革新です。なんとか成功させたい。一番の難題は、競合たちが気付く前に顧客にしっかり食いつかせること。今の仕事を始めるまで自分の会社を持っていたビジネスマンのリックだから、そのへんはよ~く分かっています。

「どんなに技術やアイディアが優れていても、宣伝しなければビジネスにならない。ほら、良く言うだろ。」
ここで彼が使ったのが、この表現。

“It’s like winking in the dark.”
「暗闇でウィンクしているようなもんだ。」

あるウェブサイトによれば、これは1956年、ニューヨークのヘラルド・トリビューン紙のコラムで使われた表現だそうです。
"doing business without advertising is like winking at a girl in the dark. You know what you are doing, but nobody else does."
「宣伝もしないでビジネスやろうなんて、暗闇で女の子にウィンクするようなもんだ。ひとりよがりで、誰も気付いてないんだから。」

このイディオム、暗闇からWINKの二人に見詰められるイメージが邪魔をして、なかなか腑に落ちません。

2011年8月18日木曜日

Fly on the wall こっそり聞き耳をたてる

本日の電話会議で、リサが財務部門のマイラに尋ねました。
「金曜の電話会議には参加する?」
「実は私、正式には招待されてないの。でも一応会議内容を聞いておきたいから…。」
次にマイラの口から飛び出したのが、

“I’m going to be a fly on the wall.”

文字通り訳せば、
「私、壁のハエになるわ。」
う~ん、なんかちょっとキモチワルイ…。

夕方、同僚リチャードを訪ねてマイラの発言の意味を聞いてみました。
「人に知られないように話を聞くってことだね。その人、電話会議には参加するけど、名乗らないでただじっと話を聞いてるつもりなんだよ。」
誰かが部屋の中で秘密の話をしていて、その内容が気になる時は、

“I wish I were a fly on the wall there.”
「こっそり話を聞きたいな。」

と言うそうです。

「へえ、そうなの。でもさ、そもそもハエになりたいなんて表現、気色悪くない?」
「ウンコ食べるから?」
「え?ハエってウンコ食べるの?」
リチャードによれば、フライとはいわゆるハエだけを意味するんじゃなくて、蚊とかアブなども含むらしいです。
「ギトギトして不潔な印象が強いんだけど、このイディオム自体にはそういうネガティブな意味合いは無いわけね。」
「うん、無いね。ちっこくて翅の生えた虫、という程度のイメージだよ。」
なるほどね。それなら分かる。

「The Fly っていう恐ろしくキモチワルい映画があったんだけど、知ってる?」
と私。
「ああ、憶えてるよ。ジェフ・ゴールドブラムがはまり役だったよね。ハエに変身していく人間を演じるのに、彼ほどの適役はいないよ。あれからどの出演作品を観ても、ハエ男のイメージがちらついちゃって…。」
あの映画で私が一番震え上がったのは、ハエ男の子供を身ごもった恋人が、ウジ虫の形状をした赤ん坊を産む場面。あ~れはキ~モチワルかったなあ。

そんなわけで、このイディオムを映画「ザ・フライ」と関連付けるのはやめた方がいいようです。

2011年8月16日火曜日

Let me ask you point blank. ズバリ聞くけど

オフィスの観葉植物の水遣りに来ているメアリーには、もうすぐ19歳になる一人息子がいます。今年から大学生になるのですが、最近仲間とバンド活動を始めたそうなのです。
「そのバンド仲間って誰なの?」
とメアリーが尋ねると、リーダーは22歳の男で、彼の自宅で練習するのだと言います。
「ちょっと待って。」
聞いたことのない名前ばかりだったので、少し心配になったメアリー。息子の目をまっすぐ見つめ、こう尋ねたそうです。

“Let me ask you point blank. Does anybody do drugs?”
「ポイント・ブランクに聞くけど、麻薬やってる人はいる?」

何てこと言うんだよ、みんな良い人ばかりなんだよ、と驚く息子に、良い人も悪い人も、麻薬やる人はやるのよ。と諭すメアリー。

この「ポイント・ブランク」、過去に何度も耳にしながら、一度も意味を調べたことがありませんでした。今日はネットで調べる前に、同僚リチャードの部屋を訪ねて質問します。
「う~ん、何でそう言うのかは分からないけど、前置き抜きでズバリ聞くよ、という意味だね。」
リチャードが例として挙げたのが、次のセリフ。

“Let me ask you point blank. Did you steal my money?”
「ズバリ聞くけど、俺の金盗んだ?」

「そうか、分かった。でもさ、ブランクって空白ってことでしょ。空白に的を絞って質問する、というのはヘンだよね。」
「そうだね。なんでそう言うのか分かんないね。ちょっと待って。」
答えに詰まったリチャードが、さっそくネットで調査します。
「へえ。これってフランス語由来のイディオムなんだって。ブランクは白ってことで、標的の中心の白い部分を意味してるらしいよ。」
「なんだ。的の中心を狙うっていう意味か。それなら寧ろ、ぴったりじゃん。」

“Let me ask you point blank. Does anybody do drugs?”
「ズバリ聞くけど、麻薬やってる人はいる?」

リチャードによると、「至近距離で」という意味にもなるそうで、 “shot point blank” (至近距離で撃たれる)をグーグルしたら、おぞましい画像がたくさん出てきました。

見ない方がいいです。

2011年8月14日日曜日

Hang Ten ハング・テン

今日は家族でエンシニータスのビーチに行きました。毎週末、日本人の友人が数家族集ってサーフィンやボディボードを楽しんでいるそうで、今回はそこへ仲間入りさせてもらったのです。幼児期に植えつけられた水に対する恐怖心を未だに払拭出来ずにいる私は、単なる息子の付添い人ですが。
準備運動しろという忠告を無視し、9歳の息子はいきなりボディボードに腹ばいになり、友達と連れ立って果敢に沖へと進みます。そして良い波をつかまえては波打ち際まで滑走し、最高の笑顔で立ち上がると、再び沖へ向かいます。昼から夕方5時過ぎまで、弾けるような笑顔で遊び続ける息子達を見て、何ともシアワセな気持ちになりました。そして少しだけ、サーフィンやってみようかな、という気分にもなりました。車を20分も走らせれば波乗りし放題のビーチがいくらでもあるっていうのに、一度もトライしないまま人生終わるのも癪かな、と。

浜で椅子に座ったまま、サーフィン暦30年のGuyさんからサーフィン基礎講習を受けたのですが、そこでHang Ten というコトバが出てきました。中学生くらいの頃、「ハンテン」というブランドの服を着ていたことがあり、その英語表記は憶えていたのです。これがサーフィン用語だったということを、この時初めて知りました。ロングボードの舳先に両足を置いて波に乗る状態をHang Ten、そこから片足だけ後退させて乗るのがHang Five というそうです。そうだったのか!数十年の時を経て語源が氷解し、しみじみ感動したのでした。
さて、夕方になってもはしゃぎまくっている息子を見ながらGuyさんが、
「今日はきっと、風呂に入って晩飯食ったらコテッと行きますよ。」
と笑っていたのですが、帰宅して先に「落ちた」のは私の方でした。水にも入らず、ただビーチで座ってただけなのに!
「パパ起きてよ。遊戯王カードで遊んでよ!」
「ごめん、勘弁して。限界。」

海風に当たってると疲れるのかな・・・。

サーフィン挑戦なんて、無謀な夢でした。

2011年8月13日土曜日

Take a stab at it. 試しにやってみる

ここ二週間ほどは残業続きでした。チームで取り組んでいたプロポーザルの締め切りが一昨日にあったのです。午前中にオレンジ支社のシェリルがクライアントのオフィスまで出かけて、直接提出して来ました。ああ、やっと終わったね!とひと安心したのも束の間、昨日の朝、彼女から電話がかかって来ました。
「ジェリーの作った積算資料が、最終版と微妙に食い違ってたのは覚えてるでしょ。クライアントから裏づけ資料を要求された場合に備えて、今のうちにきちんと作り直しておいた方がいいと思うの。だけど、彼に頼んでもすぐにやってくれるかどうか怪しいのよね。」

このプロポーザルは三部門混成チームで取り組んだもので、一緒に仕事するのは初めて、というメンバーが多かったのです。ジェリーもその一人で、シェリルは妙に遠慮しています。あなたの資料はおかしいから修正してくれ、と単刀直入に依頼しても角が立たないほどには親密な関係になっていない。それで、付き合いも長くエクセル表作りに定評がある私に電話してきた、そんなところでしょう。ここで彼女が使ったのが、次の表現。

“Can you take the first stab at it?”

このフレーズ、過去に何度も聞いているのですが、正直、意味が分かっていませんでした。 “Stab” というのは「ナイフでブスッと刺す」ことだと理解していたので、どうしてこういう場面で刺すとか刺されるとかが出てくるのかな、と毎回不審に思っていたのです。

いい機会なので、ネットで “take a stab at” の語源と意味を調べてみました。意味は「試しにやってみる」で、この場合のスタッブ(stab)は、「試み」という意味で使われています。なんでまたそんな大胆な転換がOKなのかについては、あまり詳細な記述が見つかりませんでした。ある人は、
「獲物が死んでいるかどうか確かめるため、ハンターが長い棒の先で倒れた動物の身体を突いてみたことから、試みという意味になった。」
という説を唱えています。う~ん、ほんとかな。

ま、スタッブの方はそれで良いとして、なんでここで take という動詞が使われるのかについて疑問が残ります。Take って、「何かをつかんで持っていく」というイメージだったので、「試み」を「持っていく」では意味が通りません。さっそく近くにいた同僚ジョッシュに聞いてみました。

「そういう意味の “take” じゃないよ。この場合は “take a chance” と同じ用法だと思うよ。」

え?それでオシマイ?しかもなんか納得いかないし…。

ジョッシュはいい奴だけど、英語の解説をお願いするべき相手じゃないことはこれで分かりました。で、帰宅してオックスフォードの辞典を開きます。なんと、 take の意味が42種類(!)も載ってました。ざっと読んだ限りでは、Take a bath. や Take a break. に代表される、「経験する」「行う」が最も近いのではないかと思われます。そんなわけで、私の和訳はこれ。

“Can you take the first stab at it?”
「試しに原案作ってみてくれる?」

2011年8月11日木曜日

Keep us on our toes 気を抜かないように

最近、プロジェクトメンバーがタイムシートに就労時間を入力しようとしたら、「その番号はチャージを拒否しています」というエラーメッセージが出た、という苦情を度々受け取っています。さっそく、経理のジョスリンに調べてもらうよう頼みました。

彼女の調査結果によると、プロジェクトマネジメント・プログラムに入力したデータが財務データベースに正しく伝わっていない、というのが原因みたい。

「プログラム上ではちゃんと就労時間入力OKと表示されてるんだよ。それなのにどうして財務データベース側で拒否するかね。」
データベース間のリンクの不具合に苛立ちつつ、彼女にメールで質問してみました。ジョスリンの返信がこれ。

“My guess is that they want to keep us on our toes.”

文字通り和訳すると、「きっと私達をずっと爪先立ちさせていたいのよ。」

なにそれ?ジョーク?

さっそく解説をお願いしに、同僚マリアの部屋へ向かいます。
「あ、それはとっても良く使うフレーズね。注意力を途切れさせない、という意味よ。」
「へえ、そうなの。でもなんで爪先立ちなわけ?」
「それは知らないわ。」
やっぱりね。マリアに語源を聞いてもダメなんだよな。
「あのさ、テニスとかボクシングとかじゃ、次の攻撃のために爪先に重心置いとけって習うじゃない。そういうところから来てるんじゃないのかな。」
「あ、そうかもね。調べてみてよ。分かったら教えてね。」

その後ひとしきりネットで調査しましたが、結局確かな語源は掘り起こせませんでした。
「語源、分からなかったよ。」
とマリアに告げると、
「あれから少し、あたしも考えてみたの。爪先立ちって不安定だから、倒れないよう気を張ってなきゃダメでしょ。」
おお、それも何だか信憑性あるぞ。マリア、見直したぜ。
「何か良い文例ある?」
マリアの考えたのがこれ。

“My three-year-old is keeping me on my toes.”
「うちは三歳児がいて気が抜けないの。」

そんなわけでこのフレーズ、語源は不明ながら、自分のモノになりました。

“My guess is that they want to keep us on our toes.”
「油断するなよっていうメッセージじゃない?」

2011年8月9日火曜日

Take a leap of faith 一か八か賭けてみる

ダウンタウン・サンディエゴ支社で、プロジェクトコントロールの人材を増やそうという動きが始まっています。昨日の朝はテリーのオフィスで最初の候補者との面接があり、私も参加を要請されました。三十前後と見られるブロンド女性が現れ、私とテリー、セシリアとミケーラとで質問攻めにしました。

今日はアーバイン支社で行われたプロジェクトマネジメント・トレーニング・プログラム策定会議に電話で参加。南カリフォルニア地域を統括するエリック、そしてナンバー2のリサから、
「昨日の人、どう思った?」
と意見を聞かれました。
「とても良い人だという印象ですね。経験も豊富で、戦力になると思いますよ。」
「シンスケの直属の部下になると想定して、どう思う?」
と、エリック。
「うまくやっていけると思います。」
何か気になることはないか、という質問に、ちょっと考えてからこう答えました。
「そうですね。気になることと言えば、受け答えがちょっとスムーズ過ぎる気がしたんですよね。緊張のかけらも感じられなかったし。本当に優秀だからそうなのか、それとも単に面接の特訓を重ねた成果なのか、私には見分けがつかなかったんですよ。」
これに対するリサのコメントがこれ。

“We should always take a leap of faith on that.”
「そういうのはもうリープ・オブ・フェイスするしかないわね。」

Leap of faith (信仰に基づいた跳躍)をする、つまり理屈抜きでエイヤっと決断する、一か八か賭けてみる、そういう意味のフレーズです。今回の場合、候補者の真の実力は面接で見抜けない、大当たりかもしれないしハズレかもしれない。ここはもう賭けてみるしかない、そういうことでしょう。

すぐに頭に浮かんだのは、浅田真央ちゃん。乾坤一擲、トリプルアクセル!

2011年8月7日日曜日

Connoisseur このっ通はぁ~!

木曜日、同僚達(ラリー、エド、マリア、ジャック)と一緒にランチに出かけました。久しぶりに地中海料理屋へ行こうじゃないかという話になり、ラリーの運転でAladdinへ。その途上、Mr. Dumpling (ミスター餃子)と看板を掲げたお店の前を通過した際、エドが
「こんな店あったっけ?今度行ってみないか?」
と提案しました。
「ちょっと前に行ったけど、そんなに美味しくなかったな。」
と私。するとマリアがやぶからぼうにこう言いました。
「そうそう、私、こないだシドニーで飲茶のお店に行ったの。」
「え?シドニー?」
「姉が住んでてね、去年訪ねた時、この店は絶対行くべきだって強く勧められたのね。飲茶好きの私としては、なんでオーストラリアまで来て、と笑ってたんだけど、行ってみたら長蛇の列。大人気のお店なのよ。入って注文してみてさらに仰天。ひとつひとつの品が芸術作品の域。見た目も美しいし、口の中でとろけるの。間違いなく、私の生涯で最高の飲茶店だったわ。」

ランチからの帰り、もう一度 Mr. Dumpling の前を通った際、エドが、
「シンスケはアジア系の食べもののコノッスゥワ~なんだから、シンスケが勧めないところには行かないよ。」
と言いました。するとマリアが、
「ちょっと待って。飲茶のコノッスゥワ~は私よ。私が今度試してみるわ。」
と息巻きました。

う~ん、これ、前にも何度か聞いた単語だなあ。オフィスに戻り、ネットで調べ始めました。しかし綴りが分からない。マリアのオフィスを訪ね、スペルを聞いてみます。
「知らな~い。」
ハイハイ、そう来ると思ってたよ。で、弁護士のラリーを訪ねます。
「ごめん、スペルは知らない。」
ええっ~??それは意外。もしかして、日本語で言えば「薔薇」とか「憂鬱」に相当する単語なのかな?

何とか色々試した結果、正解にたどり着きました。

Connoisseur

です。専門家、目利き、〇〇通とか言いたい時に使う言葉なのだと。憶え方としては、通ぶってる友達を指差し、
「このっ通はぁ~!」
とからかう調子で言ってみる。どうでしょう。ちょっと苦しいか。