2011年7月31日日曜日

Boilerplate ひな型

先日、オレンジ郡のプロジェクトをゲットするためのプロポーザル・チームが組織され、電話での作戦会議がありました。サンディエゴのダグがPM、サンフランシスコのカレンがプロポーザル・コーディネーター、オレンジのジャックがクライアント・マネジャー。私はプロジェクトコントロール・マネジャーという肩書きです。

プロポーザルの第何章を誰が書くか、という割り振りをしていた時、誰かがジャックに尋ねました。
「この部分のボイラープレートを送ってくれる?」

あまりに頻繁に聞くフレーズなので、これが「テンプレート」とか「ひな型」を指すのだということは、前々から何となく分かっていました。例えば契約書などは、細かいところを修正すれば即使えるバージョンが大抵存在していて、これを「Boilerplate Contract」と呼んでいます。

さっそく同僚リチャードを訪ねて質問してみました。
「あのさ、意味は大体分かってるんだけど、どうしてボイラーが出てくるの?」
「さあねえ。どうしてだろう。考えたことなかったよ。テンプレートと同じ意味なんだけどね。」
「うん、知ってる。でもそれじゃ、どうしてテンプレートって呼ばないのかな。」
「ちょっと気取った(edgy)言い方をしたい時に使う表現なんだよ。」
「たとえば君だったらどういう風に使う?」
彼は机の上に山積みになった図面をちらっと見て、

“Can you send me a boilerplate title sheet?”
「タイトルシート(図面集の最初のページ)のひな型送ってくれる?」

という文例を即席で作ってくれました。

自分のオフィスに戻ってあらためて調べてみたところ、ウィキペディアに語源が載っていました。そもそもはボイラー(水を温水や蒸気に換える装置)を製作するのに使っていた分厚い鉄板を指していたのですが、その昔新聞を刷るのに使われていた鋼板がこれに似ていたため、ボイラープレートと呼ばれるようになったそうです。それが転じて、「標準形」とか「ひな型」「テンプレート」という意味になったみたい。

頭の中で、なんとか「ボイラー」と「ひな型」を関連付けようと少しの間考えたのですが、そもそもボイラー自体が現在の日常生活にほとんど登場しないので、イメージが湧きません。そういえば日本で会社勤めを始めたばかりの頃、当時住んでいた独身寮のオヤジが、
「管理人というのはボイラー技師の免許を持っていないと務まらないんだ。」
と自慢げに話していたのを思い出しました。彼には寮の共同風呂を沸かす仕事があるのです。しかしそのオヤジ、なんとも怠慢なことに、週三回(月、水、金)しかボイラーに点火してくれませんでした。おかげで金曜に風邪でもひこうものなら、四日も風呂に入らないまま月曜出勤、という悲惨な事態になったものです。

思い出したらムカついて来た。

2011年7月28日木曜日

In layman’s terms 素人コトバで

同僚マリアと彼女のオフィスで話していた時、Delegation of Authority (日本語では「権限委譲」)の話題になりました。大まかに言えば、「契約額がいくらを超えたら部長決裁」みたいな会社のルールなのですが、この書類が極端に分かりにくいのだそうです。私はまだ読んだことがないので、「へえ、そうなの」とただ聞いているだけだったのですが。

「だってあれ、とっても重要なポリシーなわけでしょ。だったら少しは分かりやすく書く努力をしろ!って思うのよね。レイメンズ・タームで。」

え?レイメン???

前にも何度か聞いたことのある言い回し。自分のオフィスに戻って調べたところ、彼女が言ったのはこういうことでした。

“They should put that in layman’s terms.”

Layman (ほんとに「レイメン」と聞こえます)というのは、そもそも「聖職者じゃない人」という意味の言葉だそうで、一般には「素人」のことを指します。 “in layman’s terms” は、「素人にも分かる言葉で」という意味になるそうです。

弁護士の同僚ラリーの部屋を訪ね、この表現について質問しました。
「たとえばね、indemnity (賠償)という言葉の意味をlayman’s terms で教えて、というとするでしょ。その時、term は複数形じゃないといけないの? “in a layman’s term” と言うのは間違い?」
するとラリーが少し考えてから、
「Terms というのは、単なるTerm(用語)の複数形として考えるのではなく、言い回し、とか表現という意味の、独立した単語と捉えるべきだね。だから常に “in layman’s terms” という言い方になるんだ。」

な~るほどね。勉強になりました!

2011年7月26日火曜日

Monkey on my back 厄介もの

今朝、久しぶりにロングビーチ支社のマークが電話してきたので、最近調子はどう?と尋ねました。彼は十数件のプロジェクトを抱えて大忙しなのですが、そのうちの一件は同僚ファラネイが担当していたもの。ちょっと前に産休に入った彼女から任されているだとのこと。
「ついに来週、彼女が産休から戻ってくるんだよ。」
「ええっ、もう?そうか。時の経つのは早いね。」

次にマークが発したセリフが秀逸でした。

“I can take off the monkey on my back!”
「これで背中のサルを降ろせるぞ!」

え?サルをおんぶしてたの?

ビジュアル・イメージがあまりにも滑稽で、大笑いしてしまいました。後で同僚リチャードにこの話をしたところ、
「とてもよく使うフレーズだよ。手の掛かる案件を抱えている時にぴったりだね。サルをおぶってるところを想像してごらんよ。大変でしょ。」
「うん、そりゃ大変そうだ。」

“I can take off the monkey on my back!”
「これで厄介ものから解放されるぞ!」

楽しいフレーズをいただきました。

2011年7月21日木曜日

Pent-up feelings 抑えていた気持ち

先日の日曜日は、家族でハンティントン・ビーチにある美容院に出かけました。沖縄出身の女性Hさんのお店で、もうすぐ10歳になるうちの息子がまだベビーカーに乗っていた頃から通い続けています。この日はちょうど女子サッカーのワールドカップ決勝がありました。先に髪を切り終わった妻が、Hさんと一緒に隣の床屋へ出かけては、テレビで試合経過をチェックして我々に報告し始めました(美容院にテレビは置いてないのです)。
「一点負けてる!」
「追いついたよ!」
「また一点入れられちゃった!」

別の美容師さんが私の散髪を終えたところで、他のお客さん達と合わせて8人で床屋へ移動。ほどなくして、日本チームがコーナーキックをゲットします。そして沢の華麗な広角ボレーキックで同点に。日本人集団が、飛び上がって歓喜の雄叫びを上げます。明らかにアメリカを応援している店主のマリオは、

“You brought bad luck!”
「あんたたちが悪運を呼び込んじまったな!」

とふてくされながらも、天井から吊られた三台のテレビのボリュームを上げてくれました。そして延長戦が終了。我々が固唾を呑んで見守る中、落ち着いてPK戦を制した日本が、遂に夢のワールドカップを勝ち取ったのです。全身鳥肌の私。みんな目を赤くし、手を叩いて小躍りしています。マリオにお礼を言った後、みんなで美容室に戻り、シャンパンで乾杯しました。帰宅後も、暫く興奮が醒めませんでした。

さて週が明け、昨日と今日はトレーニングの講師をするためオレンジ支社へ出張。なんと受講していた社員の中に、ワールドカップの審判を務めて帰国したばかりの女性がいました。アメリカ人なので自国の試合の審判はさせてもらえず、決勝戦は一般客と一緒に観戦したそうです。

トレーニング終了後、彼女と話す機会がありました。
「日本チームは本当に集中してたわ。」
「そうだね、特にPKは素晴らしかったね。」
「ううん、そうじゃないの。あの試合だけじゃなく、一ヶ月間ずっと集中を切らさなかったのよ。他の国の選手は、ひと試合終わるごとにホテルの部屋で夜遅くまで騒いだりしてたけど、日本の選手は全員しっかり体調管理してたもの。」
「へえ、そうなんだ。」

それから、表彰台に上がった若い選手たちの姿に話が及びました。
「サワはさすがにベテランだから落ち着いてたけど、若い子たちは随分はしゃいでわたよね。きっとサワは、こう思ってたんじゃないかしら。」
“Come on girls! This is World Cup. We should honor people here!”
「ちょっとあんたたち、これはワールドカップなのよ。敬意を払わなきゃ駄目でしょ!」
「でもさ、きっともう嬉しくて嬉しくて堪らなかったんだよ。」
「うん、私も分かるの。選手たちのこと、ずっと見てたから。抑えていた気持ちが一気に吹き出たのよね。」
この時彼女が使ったのが、この表現。

“They had to release their pent-up feelings.”

「ペンタップ」が何か分からず、ちょっとの間困惑しましたが、すぐにネットで調べて意味を理解しました。Pen は「柵」とか「檻」のことで、例えば野球で控えのピッチャーが投球練習をするブルペン(Bullpen)は、もともと「牛の囲い場」のこと。Pent は Pen の過去分詞で、「閉じ込められている」という意味。Pent-up で「閉じ込められて蓄積していた」となるわけ。

“They had to release their pent-up feelings.”
「きっと、ずっと抑えてた気持ちを吐き出さなきゃいけなかったのよ。」

なかなか格好良いフレーズじゃないですか。これからちょくちょく使って行こうと思います。

ちなみに、ペントハウス(建物の最上階の部屋)の「ペント」はまったく違う語源から来ていて、「追加で取り付けられた」という意味だそうです。

2011年7月18日月曜日

Poster child 代表選手

今朝一番、新しいプロジェクト獲得のための戦略策定会議がありました。熟練PMのダグが、
「デサイン・ビルド(設計施工一体型)プロジェクトの成功例をいくつか集めてプロポーザルを仕上げないと行けないな。」
と言い、オレンジ支社のエリックが彼の関わったプロジェクトの名前を数件挙げたところ、ダグが、
「それだ、それ。Rプロジェクト。それこそデザイン・ビルドのポスターチャイルドだ。」
と飛びつきました。

ポスターチャイルド (Poster Child) というのは、とても良く聞くフレーズ。何となく分かっていたつもりになっていたのですが、よくよく考えると全く理解していませんでした。で、ネットで調査。ウィキペディアによると、「募金集めのためのポスター写真に使われる難病の子供」が語源だそうです。何となくいやらしい含みを感じるけど、今まで仕事で耳にして来た使われ方にはそんなネガティブな響きはありませんでした。

一般的な使われ方を知りたくて、夕方、隣のキュービクルのディックをつかまえて質問してみました。
「語源はそうかもしれないけど、ポジティブにもネガティブにも使われるね。」
「例えば?自分自身を例に使ってみてくれる?」
「それは危険な試みだな。」
と笑うディック。
「俺は asshole (嫌なヤロー)のposter child かもね。」
「マットだったら?」
と小声で尋ねてみる私。壁ひとつ隔て、今の今までバチバチ物凄い音を立ててコンピュータ・キーボードを叩き続けていた若き同僚マットが、出し抜けに大声で切り込んで来ました。

“I am a poster child of a short attention span.”
「俺は集中力の長続きしないポスターチャイルドだ。」

「なんだマット、俺たちの会話、聞いてたのかよ。」
とディック。
「さっきからず~っと聞いてたよ。」
とマット。

そんなわけで、英辞郎には「申し子」という訳がありましたが、私の和訳は「代表選手」です。

“I am a poster child of a short attention span.”
「俺は集中力の長続きしない代表選手だ。」

2011年7月15日金曜日

I was not taken a back. 驚きはしなかった。

ビジネス・スクールに通い始めた頃、教授の言っていることが全く理解出来ず、毎日暗い気持ちになっていました。一ヶ月しても状況は一向に改善されず、クラスメートのジムにその苦境を打ち明けたことがありました。
「分からないって、どんな言葉が分からなかったんだ?」
「いや、自分が何を分からないのかも分からないほど、徹底的に分からないんだよ。」
「何が分からないか言ってくれなければ助けようがないじゃないか。俺は力になりたいんだよ。」
「ありがと。でもほんと、助けてもらえるレベルに至っていないんだ。」
ジムは少し苛立っていたようですが、どうしようもありませんでした。

そうなんです。たとえ誰かの発言がこれ以上無いほど明瞭に聞き取れたとしても、結局ひとつひとつの言葉が自分の語彙に含まれていなければ、意味は分からずじまいなのです。しかも後で調べようと思って書き取りたくても、綴りが分からない。第一、話が猛スピードで展開している場合、書き取る余裕なんかありません。

最近、会議中に何度も次のフレーズが登場し、その度に「?」となっていました。

「アイワズナットテイクナバック」

ていくなばっく?なんじゃそりゃ?ネットで調べているうち、これは

I was not taken aback.

という綴りなのだということを発見。意味は、「驚きはしなかった」です。Aback が「後ろに」という意味で、 “be taken aback” は後ろの方にぐいっと引っ張られる感じでしょうか。昨日の夕方、オレンジ支社の同僚スティーブンに質問してみました。
「サプライズとはどう違うの?」
「おんなじだよ。」
「少し洒落た表現なのかな?」
「いや、そんなことない。同じだよ。」
「でもさ、全く同じってことは無いでしょ。」
「同じ文章の中でsurprise という単語を繰り返し使いたくない時に登場させる、その程度のフレーズだよ。」

な~んだ。クールな英語表現だと思ったのに、そうじゃないのか。ま、とにかく勉強になったぜ、と喜んで帰宅の途へ。久しぶりにマルコム・グラッドウェルの「Outliers」(邦題は「天才!成功する人の法則」)のCDをかけ、車を走らせました。すると10分も経たないうちに、次の一節が出て来たのです。

“He was taken aback.”

このCD、かれこれもう5回は聴いてます。それなのにこのフレーズ、今まで全く聞き取れていませんでした。これで自信が確信に変わりました。

知らない言葉を何度聞かされようが、永遠に理解など出来ない。

そんなわけで、「聞き流すだけで英語がどんどん上達する」という学習法、私にはどうしても信じられません。

2011年7月11日月曜日

He’s a piece of work. 彼って大変な人物なのよ。

明日はアーバイン支社でミーティング。現在私が片足を突っ込んでいる部門の南カリフォルニア・エリアで、プロジェクト・マネジメント・トレーニングをスタートしようという試みがあり、その骨格作りに私が借り出されることになったのです。トレーニングでカバーすべき内容をリスト化してミーティングの出席者に予め送る約束をしていた私は、今朝になって(泥縄ですが)案を練り始めました。しかし10分ほどして、はたと手が止まります。そもそも会社で統一したトレーニング資料が、既に存在しているかもしれないじゃないか!

ラスベガスにいるエリカがその辺の事情に明るいと思われたので、さっそく電話してみました。
「全社とはいかないけど、北米(アメリカとカナダ)統一版の作成が進行中だと聞いてるわよ。」
我が社は一昨年まで激しい吸収合併を繰り返して来て、現在では5万人近く社員がいるので、何に付け全社統一版の資料を作るには時間がかかるのです。

「カナダでは既に完成されたトレーニング資料があると聞いてるし、オーストラリアには誰もが傑作と認める資料が出来てるんですって。」
「お、そりゃいいね。是非見たいな。」
「ところがね、そう簡単にはいかないのよ。」

エリカはここで、北米統一版の作成を進めている人物の名を教えてくれました。そして、たった一言で彼の人となりを評したのです。

“He’s a piece of work.”

え?ピース・オブ・ワーク???

「すごいパワーゲームなの。激しいエゴのぶつかり合いが展開されててね、北米の人間がオーストラリアの資料を取り寄せようとしているなんて耳にしたら、彼が黙っちゃいないと思うわ。とってもバカバカしい話なんだけど。」
「ちょっと待って。ピース・オブ・ワークってどういう意味?傑作(masterpiece)とかじゃないよね。」
エリカは笑って、
「難しい人っていう意味で言ったのよ。物凄く頭が良くて、相手の言うことをまずばっさりと否定してから自分の正しさを延々と主張するタイプなのよね。」
「へえ。そういう人ってうちの会社にいるんだ。」
「そうなのよ。彼にメールを送る時は、表現に細心の注意を払ってね。まずは下手に出ておくのが得策よ。」

う~む。やっかいなことになったな。その人に黙って独自のトレーニング・プログラムを構築したら、後でやいのやいの言われるだろうし、事前に相談したら潰されかねない。これは慎重に事を運ばないと…。

夕方、同僚ディックにpiece of work の意味を尋ねてみました。
「ま、簡単に言えば嫌なヤロー(asshole)のことだよ。」
「ふうん。でもさ、辞書を引いたらポジティブな意味も載ってたよ。立派な人だって。」
「99パーセントはネガティブだね。いや待てよ。そうとも言い切れないな。確かに良い意味にもなるからね。表情や声のトーンによるよ。わざとどちらにも取れる言い方をして相手の判断に委ねるっていう、極めて技巧的なフレーズなんだよな。」
そして壁を一枚隔てて座っている若い同僚マットに聞こえるように、

“Matt is a piece of work.”

と笑いながら言いました。「なんだと!?」と即座に反応して勢い良く立ち上がるマット。彼はディックと私の会話をさっきからずっと聞いていたようで、愉快そうにこう言いました。
「今みたいに、友達をからかう時にも使えるフレーズなんだよ。」

なるほどね。日本語にすると、「彼は大変な人物なんだよ。」かな。こういうのを使いこなせるようになれば、英語学習者としてもワンランク・アップという感じがします。

2011年7月10日日曜日

Euphemism 婉曲表現

同僚リタの音頭取りで、長いこと休眠状態だったウォーキング・クラブが復活しました。業務時間中に30分ほど、「休憩」と称して外へ歩きに行くのです。先週木曜の朝9時半、まだ気温が上がらないうちにと、熟練PMのダグも誘って三人で職場を出発。この日の話題は、最近の子供たちが使う言葉の乱れ(世の東西を問わず、親の世代の好む話題ですね)。

「うちの子(小4)のクラスメートから来た誕生会の招待状なんだけど、いきなりこう始まってるの。“OMG, it’s my birthday again!”」

とリタ。OMGというのは「オーマイガッ」の略語だというのは知ってました。でも、何でそれを嘆くわけ?

「最近、本当に多いよね。テキストメッセージの普及が拍車をかけたんだろうな。」
とダグ。
「ちょっと待って。それって、神様の名前をみだりに使ってるからいけないってこと?」
と無邪気に切り込む、非クリスチャンの私。
「うん、まあそういうことだね。」
「じゃ、Oh, my! (オー、マイ!)っていう表現があるけど、それならOK?」
「いや、それも駄目だ。」
「えっそうなの?God とか Jesus とか口にしなければセーフって訳じゃなかったのね。」
「我々クリスチャンにとっては、そういうのも皆アウトなんだよ。」

ダグとリタは、私が「これはセーフだろう」と思ってたフレーズを次々に挙げ、少しでも神を汚すような意図が元のフレーズにあるような表現は受け入れられないのだ、と解説してくれました。例えば次のようなもの。

Gee! (Jesus! の変化形)
Oh my goodness! (Oh my god! の変化形)
Darn it! (God damn it! の変化形)

ダグが締めくくってこう言います。

“They are all euphemisms.”
「これってみんな、ユーフォミズムスなんだよね。」

ゆーふぉみずむ?

職場に戻って、さっそくネットで調査。「婉曲表現」のことだと知りました。同僚ラリーのオフィスを訪ね、ダグやリタとの会話をかいつまんで紹介した後、こう質問してみました。
「そういえば、ジャック(82歳の同僚)って、相手が誰だろうが話題が何であろうが、ためらいもせず会話の端々にガッデム!(God damn it!)をはさんで来るでしょ。彼も確か、クリスチャンだったと思うんだけど。」
「そうだったっけ?ま、ジャックの年齢であのキャラクターなら、多少言葉の使い方が荒っぽくても、目くじら立てる人いないよね。」
「そこで考えたんだけど、こういう言い方って通用する?」

“Jack is a man of few euphemisms.”
「ジャックというのは婉曲表現無用の男だ。」

ラリーはとても感心したように私の顔をまじまじと見つめ、こう言いました。
「洗練された表現だね。今度パーティーがあったら、彼のことをそう紹介してみるといい。笑いをとれること請け合いだよ。」

英語学習者の私にとって、こういうのはちょっと嬉しい出来事です。

2011年7月7日木曜日

Bells and whistles お飾り

先日、カマリロ支社のロイという人からメールを受取りました。
「マイクロソフト・プロジェクトのスケジュール・ファイルを他支社の社員から受け取ったんだけど、開かないんだ。君ってスケジューラーだよね。開くかどうか試してくれない?」
さっそくトライ。しかし開きません。
「このファイルは上位バージョンのプログラムで作られています。お手持ちのソフトのバージョンを上げるか、作成者にバージョンを下げてもらうかして下さい。」
とのメッセージ。ううむ。私のは2007バージョン。さてはマイクロソフト、断りも無くバージョン上げたな…。ロイにこのことを告げると、
「ITの人間に教えてもらって、2010のファイルを2007バージョンで開くビューアーをダウンロードしてみた。」
という返信。
「開いた画像をコピーして、2007バージョンのファイルに貼り付けてみた。」
へえ、そんなことが出来るのか。知らなかった。その時、次の文章に目が留まります。

“It worked but I lost some of the bells and whistles.”
「うまくは行ったんだけど、鈴や笛をいくつか失ったよ。」

はぁ?鈴や笛(Bells and Whistles)?なんのこっちゃ?

ざっとネットで調べた後、同僚リチャードの部屋を訪ねます。
「ああ、それはものすごく頻繁に使われるフレーズだよ。例えば僕、最近車買ったでしょ。サテライト・ラジオだとかカーナビだとか、オプションはほとんどつけなかったんだ。そんな時言うのが、“I didn’t get bells and whistles.” なんだ。なくても困らない付属品を指す表現なんだよ。」

語源を調べたところ、有力そうなのが次の二つの説。
1.昔の汽車には、種類の違う合図を送るためにベルと笛を備え付けてあった。現在ではすべて電気で制御されているため、もう不要である。
2.無声映画(トーキー)の上映に当たっては、効果音を出すため、オルガンとともに鈴やら笛やらが用いられた。映画に音が加わった現在では、無用のオプションである。

ロイが言ってたのはこういうことでしょう。スケジュールファイルのバージョンを下げる過程で、バーチャートの見栄えをよくするためのツールがほとんど省かれたため、デザインの質は落ちた、と。そんなわけで、私の和訳はこれ。

“It worked but I lost some of the bells and whistles.”
「うまくは行ったんだけど、お飾りがそぎ落とされてみすぼらしくなっちゃった。」

2011年7月5日火曜日

You can’t be so cavalier. そうお気楽でもいられない。

先週の金曜、最近仲良くなった同僚ディックを誘い、バーガーラウンジまでランチに行きました。彼とは立ち話をする程度の付き合いで、仕事の内容もバックグラウンドも全く知らなかったので、歩き出すと同時に質問攻めにしてみました。

彼は数ヶ月前まで若干小さめのコンサルティング・ファームに勤めていたのですが、不況を乗り切るため本社が打ち出した苦肉の策、「新しい顧客の開拓には金を使わず、現在の顧客に勢力を集中してシェアを伸ばせ」(彼は全くの愚策と嘲笑していました)の煽りで、仕事が先細りになったのだそうです。造園設計と生物環境保護の両分野で学位を持っている彼は、それまで業界から引く手あまたで、卒業以来、職にあぶれる心配をしたことなど一度も無かったのだと(なんとも羨ましい…)。しかし上司から週30時間勤務を言い渡された時、これはさすがにヤバイと気がついて転職先を探し始めたのだそうです。彼のコメントがこれ。

“You can’t be so cavalier in this economy.”
「この景気じゃそうキャバリエでもいられないでしょ。」

キャバリエというのはずっと「騎士」という意味の名詞だと理解していたので、形容詞として使われたのを知って驚きました。職場に戻って辞書を引いてみると、「傲慢な、尊大な、横柄な」という意味が載っています。う~む。なんだかどれも、ディックのセリフと少しずれている気がするなあ。別にそこまで偉そうにしてた感じじゃないもんなあ。

という訳で、弁護士の同僚ラリーに今朝質問してみました。
「そうだね、シンスケの言う通り、その文脈じゃ傲慢(arrogant)ほどの強さは無いよね、。彼はきっと、carefree (お気楽な)とか trivializing the seriousness of the situation (状況の深刻さを軽く見ている)という積もりで言ったんだよ。」

なるほどね。あらためて英語のサイトを見てみたら、ちゃんとcarefree という意味が載ってました。

そこで思い出したのが、ずっと昔日本で発売されたアメ車「キャバリエ」のテレビCMを、あの所ジョージがやってたということ。そうか、そうだったのか。初めて合点がいったぞ…。

てなわけで、私の和訳はこれ。

“You can’t be so cavalier in this economy.”
「この景気じゃ、そうお気楽でもいられないでしょ。」

2011年7月4日月曜日

Have a great Fourth! 良い独立記念日を!

先週、ダウンタウン・サンディエゴのオフィス内を歩いていた時、総務のトレイシーの前を通りかかりました。彼女は受付嬢みたいな仕事もしているせいか、デスクの前がカウンターになっています。そのカウンターに、豆電球を等間隔につけた白い電線が、藤棚から枝を垂らした藤のように何十本も飾り付けてあります。私は彼女に挨拶しつつ、
「クリスマスのデコレーションみたいだね。何かあるの?」
と尋ねました。
「だって、今度の月曜は独立記念日じゃない。」

しまった!こいつは気まずい。アメリカ人が大事にしている記念日のことを、すっかり忘れてた。このミス、毎年やるんだよな。なんだこの外国人!ってムカついてるかなあ。
「私、祝日の中で独立記念日が一番好きなの。」
格別気にする様子もなく、興奮した面持ちで笑うトレイシー。注意して見てみると、オフィス内のあちこちが、赤、青、白のアメリカ国旗色に彩られています。

翌日、自分のオフィスに戻って同僚マリアにこの失敗談を漏らしました。
「あたしは別にそんな思い入れ無いな。ただ会社が休みになるのが嬉しいだけ。」
う~ん、マリアらしい意見。ちょっと気が楽になりました。

金曜の午後遅く。退社して行く人が皆こう声をかけて行くのに気がつきました。

“Have a great Fourth!”
「素晴らしい4日を!」

Fourth of July (独立記念日) を短縮しているのだろうと思ったのですが、一応同僚ラリーに確認。
「ああ、最近じゃ皆、最後の部分を省いて言うね。よく使う表現だよ。」
とのこと。そこで私も、退社するまでの間に仕事相手と交わした電話での会話を、すべてこのフレーズで締めくくってみました。皆、

“You, too!”

と返して来ました。日本で年末にする挨拶、「良いお年を」とほぼ同じ雰囲気なので、私はこう訳すことにしました。

“Have a great Fourth!”
「良い独立記念日を!」