2017年1月8日日曜日

Damn the torpedoes! 構わず突っ込め!

年が明けました。年末年始に悪い風邪が蔓延したようで、職場はまだ人影まばら。やつれ切った顔で出勤したカンチーが「まだ本調子じゃない」と言いながら咳込むので、「今すぐ帰りなさい」と追い返しました。そんな体調で良い仕事が出来るわけないだろ、百パーセントまで充電してから出直すように、と厳しくたしなめます。「辛いけど精一杯頑張ってますよ」というアピールは本人にとって気持ちいいかもしれないけど、大抵は病気が長引いたり仕事にミスが多発したりして、ろくなことにならないものです。冷静にリスクを管理すべし!

そんな中、いきなり全速航行状態の私。来月いよいよ全米で使用開始するPMツール。そのエンドユーザートレーニングが来週から全支社で一斉展開するので、その準備におおわらわなのです。

さらに火曜の朝、建設部門のPMキースが疲れた表情でやって来ました。二週間後に迫ったプロジェクトの再始動を前に会社としての進退を決めなければならず、一刻の猶予も許されない。この難局を切り抜けるには君の助けが必要なんだ、とあらためて訴えます。大赤字の見込みを知らされて一斉にそっぽを向く南カリフォルニア地域の上層部。クライアントを怒らせるわけにはいかないので何とか続ける方策を絞り出せ、と迫る全米レベルの副社長たち。そんなまとまりのない意思決定者たちを、総員納得させるための書類づくりに追われるキース。データの積み上げや分析は私の得意分野なので助けたいのは山々なのですが、こちらも限界ギリギリの出力で航行しているのです。なかなか痺れる展開。その時キースが、こんなセリフを口走りました。

“Damn the torpedoes!”

直訳すれば、

「くそったれ魚雷砲!

ですが、何のことやら分かりません。彼との会話を終えた後、トイレに立ったついでに同僚ディックを訪ねます。

「ああ、それは歴史の一場面で使われたセリフだと思うよ。」

そう、これは南北戦争の海戦中、David Farrugut(デイヴィッド・ファラガット)という艦長が発した名言らしいのです。

「リスクに構わず突き進め、という意味だね。」

本当に言ったかどうかはともかく、現在に伝わる全文は、こんなのだそうです。

“Damn the torpedoes, full speed ahead!”
「くそったれ魚雷砲、全速前進!」

Torpedo(トルピード)とは魚雷のこと。魚雷にやられる心配をする乗組員の忠告に、そんなこと構うな、突き進め!と指示し、結局この戦いに勝った、というエピソードが元だとのこと。ふ~ん、そうなの、と一旦納得したものの、南北戦争時代に魚雷なんてあったのかな?という疑問が浮上します。ちょっと調べたところ、torpedoというのはかつて地雷や機雷(Naval Mines)の呼称だったようで、やはりこの時代に今でいう「魚雷」は存在しなかったようです。そんなわけで、デイヴィッド館長のセリフはこう訳すのが正しいでしょう。

“Damn the torpedoes, full speed ahead!”
「機雷がどうした、突っ込め!」

前方の海中に機雷が多数仕掛けられている可能性はあるが、構わず進め、という指示。疲労困憊状態のキースは、討ち死に覚悟で不完全な文書を上層部に投げ込もうかと思っていたわけですね。おいおい、そこまで破れかぶれになっちゃ駄目だろ、と慌てて彼のサポートを最優先する私。数時間後、彼の書類中に重大なミスを発見!あらためて積算し直したところ、これなら何とか機雷に触れずに和解点へ辿り着けそうだ、という見通しが立ちました。

「どんなに高くてもいい、好きな食べ物ご馳走するよ!」

と顔をほころばせるキース。

威勢よく突っ込まなくてホントに良かった、というお話でした。

2 件のコメント:

  1. この逸話にこのタイトル画を選ぶセンスはさすが!よくこのシーン覚えてたね。流全次郎カッコ良かったね。
    まさか原作者がこの後グルメ漫画で時の人となるとは思わなかったが・・・

    キミのように[縁の下の力持ち]を心意気でやってくれるキャラクターは自己アピールの国アメリカでは稀有な存在なのでは? ここ日本でも最近は、こういう役回りをイヤがる傾向は出てきてる感じカナ。そもそも、日本でもエラくなる連中は[自己アピール]と[上手な立ち回り]に長けた人種だもんね、あと[上へのゴマすり]も不可欠か(笑

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  2. うちの息子は流統太郎の遺志を継ぐ気でいるぞ。

    僕の仕事は、毎日誰かしらが「サンキュー」と言ってくれる種類のものなんだよね。その度に、「礼には及びません、仕事ですから」とやってるよ。

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