2016年5月15日日曜日

Diversity 多様性

中間期実績評価(Midyear Performance Review)の締め切りが迫って来ました。上半期(10月から3月まで)の実績を自己評価し、ゴール設定を見直すという活動。イントラネットサイトに行き質問に答える形でこれを行うのですが、いつも引っかかるのがこの設問。

Diversityをどれだけ尊重しているか?」

ダイバーシティ(多様性)を尊重するというのは、年齢や性別、性的指向、人種、宗教、文化的背景などの違いを認めた上で個々人と公正平等に接しつつ、その「違い」を積極的に活かすことだと私は理解しているのですが、5段階評価で何点をつけるべきかでいつも悩むのです。多様性尊重に関する不満をこれまで誰からもぶつけられたことが無いというだけの根拠から、毎回5点(満点)を自分に与えているのですが、そもそもうちの組織は一応の基準を超えて採用されて来たプロフェッショナルの集団です。「多様性の幅」が決して大きいとは言えない「下駄を履いた」環境で、自分に満点をつけるのもどうかなあ、と

さて、実績評価と言えば、二週間に一度の割合で、14歳の息子が通う高校から彼の成績の実況報告がメールで届きます。会社経営者が株価のアップダウンをチェックするみたいに、ほぼリアルタイムで子供の行状が分かるのです。学期末に通知表を渡されるドキドキはもちろんゼロでやや興醒めではあるのですが、この方法の利点は、問題の改善に向けたアクションが取り易い、ということでしょう。

ある科目の成績が突然悪化したのに気付いて息子に尋ねたところ、

「宿題ちゃんと出したのに先生が記録し忘れてたんだよ。明日直しておくってさ。」

と釈明するので半信半疑でいたところ、二週間後のレポートで本当に訂正されていたこともありました。

彼の学校はチャータースクールといって、公立高校でありながらユニークな教育方法が採用されています。教科書は一切使わないし、学科もたった三科目。

Math/Physics 数学および物理
Multimedia マルチメディア
English/World Culture/Geo 英語、世界の文化、地理

最後のは、社会問題についてグループで調査し、討論したり論文を書いたりという、総合格闘技みたいな科目。息子の得意分野のはずなのに成績がイマイチの時があり、どうしたのか聞くと、「ディベートになると手持ちのネタが少なくて不利だ」というのです。意味がよく分からないので更に尋ねると、

Rough neighborhoodに住んでる奴はキツイ実体験に基づいた発言が出来るから、ディベートに有利なんだよ。」

とのこと。Rough Neighborhood(ラフ・ネイバーフッド)とは、荒れた地域のことですね。ギャングが街を徘徊し、麻薬の売買が横行するような街に住んでいる生徒たちは、社会の不正や差別がテーマになると俄然勢いづき、クラス討論での存在感を圧倒的なものにするのだそうです。例えばお題が「銃規制」だと、実際に銃弾の犠牲になった親戚の子の話などを持ち出すものだから、議論のパンチは強烈。うちの息子は、ただただガードポジションで耐えるしかない。

クラスの隅で、彼が級友のノアに、

“I’ve never heard a gunshot.”
「銃声を聞いたことなんて一度も無いよ。」

と言うと、ノアも「僕も無いよ!」と激しく同意したそうです。その会話を耳にしたマーレーンという女子生徒が、辺りをキョロキョロうかがいながら、

“Me, too!”(私も!)

とひそひそ声で打ち明けたのだと。まるで特権階級と見なされるのを恐れ、少数派の仲間を見つけて安堵するかのように。


ダイバーシティの幅が小さい環境で実績評価に悩んでた私ですが、大きいは大きいで大変なんだなあ、と思ったのでした。

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