11月中旬、アパートの管理会社から一通の手紙が届きました。
「いつもご愛顧有難うございます。1月末の契約更新時に家賃が一割上がりますので、どうぞよろしく。」
おいおい、何だその極端な値上げは?何かの間違いじゃないだろうな。これまでも毎年じわじわ値上げはありましたが、その度に何とか耐え忍びました。それが突然一割も上がる?
さっそくオフィスを訪ねてみましたが、管理会社側はガンとして退きません。ここのところ賃貸市場は好調で、彼らからすればまたとない稼ぎ時なのでしょう。かなり大目に見てやっての一割アップなんだぞ、と言わんばかりの態度。環境や治安の良さに惚れ込んで13年も住み続けた場所ですが、今後この調子で毎年ポンポン家賃を上げられたらたまったもんじゃない。この国では賃貸者の権利が弱く、アパートに住み続ける限りこの仕打ちからは逃れられないのです。
「もうあったまきた!」
この暴挙に、憤然と立ちあがる妻。
「家、買おう!」
我々夫婦は日本にいた頃からアパート暮らしの経験しかないので、住宅購入に関してはズブの素人。おまけにここは外国です。何から始めて良いのやら、皆目見当がつかない。しかし怒りをエネルギーに変えた妻は、ここから八面六臂の大活躍を展開します。ちょうど出張が多く不在がちだった私に文句の一つも言わず、毎日深夜までリサーチに没頭。昼間は知り合いに紹介された不動産エージェント(ベトナム人女性)と何十もの物件ツアーをこなし、同時に複数の銀行とローンの交渉を繰り返し、不動産鑑定士、エスクロー(不動産取引代行)業者との打ち合わせなどをほぼ一人でやり遂げました。
そして遂に1月中旬、南に15分下った場所に、一軒家を購入したのです。アパートの契約が切れる直前の月末、滑り込みで引っ越しを完了。とんでもない早業でした。私は一連のプロセス中、妻の爆発的な行動力に圧倒されっぱなしでした。この人、ほんとすげえなあ、と。
ところが、これで万事解決とは行きませんでした。
今回、住宅選びに当たっての私の希望は、
「お客さんが来ても駐車スペースに困らない家で、斜面上に無いこと。」
これに対して妻は、
「洗濯室が室内にある、眺めの良い家。」
米国では洗濯機と乾燥機をガレージに置くのが一般的なようで、内部に洗濯室を設けている物件は非常に限られていました。
「ガレージって基本的に家の外でしょ。外で洗濯するなんて嫌なのよ。」
しかし残念ながら、彼女の希望に適う適正価格の住宅は見つからず、最終的に購入を決定した物件も、寒々としたオンボロガレージの隅に洗濯機と乾燥機を押し込むタイプでした。おまけに、家からの眺めも決して良くはない。結果的に、大して働かなかった私の希望の方を通した形になり、散々苦労してここまで漕ぎつけた妻に申し訳ない気持ちで一杯でした。
そんな時、不動産エージェントに紹介してもらったベトナム人の大工さんに改装を頼めることになり、二週間でガレージを完全リフォーム。古い温水ヒーターや巨大な空調パイプ、その周りを覆っていた黄色い綿のような断熱材、天井の木材などが全てむき出しだったのが、見事に白い壁で覆われ、すっきりとした洗濯室に仕上がったのです。
「室内と同じレベルとは言えないけど、見違えるくらい綺麗になったわよね。」
と喜ぶ妻。
先日、職場で同僚のジョナサンと昼飯を食べながら、今回の顛末を話して聞かせました。彼は我々の新居の近所に十数年も住んでいて、コミュニティへの仲間入りを喜んでくれました。そしてガレージ改装のくだりを話した時、「こんなフレーズ知ってるか?」と微笑みました。
“Happy wife, happy life.”
「ハッピーワイフでハッピーライフ。」
ドンピシャの表現を頂きました。
アメリカでマイホーム購入とは、スゴイ事だね!
返信削除小市民的生活に汲々としているオイラからは、とても遠い所の話のように思えるヨ。
今回のフレーズは日本で家を買う人達も皆言うことだね。メロディ的には「タマホーム」のCMを思い出してしまうけど。
ビバリーヒルズのプール付き豪邸、というのとは違うのでよろしく。まだカーテンも無いんだ。包装用のプチプチをビニルテープで窓に張り付けて凌いでる。初期費用が思ったより高かった。これから暫くは小遣い半額になっちゃったよ。トホホ。
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