2014年8月6日水曜日

Law of Attraction 引き寄せの法則

昨日は、日帰りでオレンジ支社へ行って来ました。ランチタイムにTown Hall Meeting (タウンホールミーティング)が開かれるというので、是非出席しておこうと思ったのです。環境部長のクリスピンと、南カリフォルニア地域を統括するトラヴィスが、社員との対話を目的に開く集会。今回のメインテーマは、月曜に実施された大規模レイオフの話です。

月曜の定例マネジャー会議に電話で参加していた私は、このニュースを聞いて愕然としました。私の下で品質管理グループのまとめ役をしてくれていたナンシー、サンディエゴ支社に勤務する地質学の専門家ブライアンも、レイオフ・リストに入っていました。全員が息を呑んだのは、最古参PMのタラが切られたことを知った時。タラは、部内でも最大のグループの長です。

「苦渋の決断だった。」
「断腸の思いだ。」

トラヴィスとクリスピンが、代わる代わる呻きます。

「このニュースを聞いたら、若い社員は浮足立つでしょうね。」

暫くして、ようやくレベッカが発言します。

「タウンホールミーティングで、きちんと話すつもりだ。正直に状況を伝える以外に道は無い。」

とトラヴィス。

百人近く集まった社員たちが、トラヴィスとクリスピンの説明を聞き終わると、予想通り水を打ったように静まり返りました。重苦しい空気の中で、皆それぞれ自分の席に戻ります。午後の仕事を開始した私のところへ、元ボスのリックがやって来ました。

「リック、あなたみたいなスーパー・ポジティブ・ガイも、今回ばかりはさすがにガックリ来てるんじゃないですか?」

と笑う私。リックというのは、巨大な嵐がやって来て人々がずぶ濡れになったとしても、彼の頭上だけは雲が切れてやさしくお日様が照っている、そんなタイプの人物なのです。

「解雇者リストに、テドロスも入っていてね。」

とリック。テドロスというのは彼の部下で、博士号を持つ秀才です。

「昨日の午後、彼を僕の部屋に呼んで、人事のコリーンと二人で解雇宣告をしなきゃならなかったんだ。」

「そうだったんですか。それはすみません。」

しまった、軽はずみにからかうようなこと言っちゃった。さすがに今のはまずかったな。恐縮していたところ、リックがこう続けました。

“But it turned out to be great news for him.”
「ところがこれが、彼にとってはすごくいいニュースになったんだな。」

ええっ?なんで?解雇がいいニュースになるわけ?ぶったまげる私。

「ちょっと話さないか?僕の部屋へ来いよ。」

とリック。

どんな逆風の中でも涼しい笑顔を絶やさず、常に明るく行動する。会議では、皆がはっとするほどユニークで前向きな意見を述べる。そんな素敵な元上司ですが、さすがに今回みたいなケースではへこたれるだろう、と勝手に踏んでました。ところがどっこい、またしても良い出来事が訪れた、というのです。

「こういうの、何て言うんでしたっけ?あ、そうだ、Law of Attraction (引き寄せの法則)でしたね。」

と私が言うと、

「ああ、The Secret という本に出てたあれね。」

とニッコリ笑うリック。自分が日々考えていることが、周りの出来事を決めていく。ポジティブな思考がポジティブな出来事を引き寄せる、それを「引き寄せの法則」と呼ぶらしいのですが、まさに今回の話が、これに当てはまるでしょう。

「テドロスと僕は、彼のスキルがコンサルティングよりも研究職に向いているという話を常々してたんだよ。ここのところ業務量の低下が続いてたから、彼も解雇の危機に気づいて、職探しを進めてたらしいんだ。それでコロラドに調査研究職のポストを見つけて、ついこないだ採用が決定したんだな。で、昨日の午後、僕に辞職届を出そうとしてたんだ。もしも解雇宣告が半日遅ければ、Severance Package (退職手当)を受け取れなかったところだったんだよ。本当にちょっとした差だった。ハッピーな転職が決まった上に、とんだボーナスが転がりこんだってわけさ。」


もう、この人ったら、いやんなっちゃう…。

0 件のコメント:

コメントを投稿