2016年7月23日土曜日

Green with Envy うらやまし過ぎて緑色

もうすぐ15歳になる息子が先月、数学の夏期講習みたいなものに登録しました。これは自宅学習を基本とし、期日までに宿題を仕上げて週二回インストラクターに会い、進捗を確認するというスタイル。ウルトラ楽観主義者の彼は、この程度の内容なら7月中に終わらせられるよ、と豪語していたのですが、想像を遥かに超える試練が待っていました。

現地校ではプロジェクト・ベースの刺激的なプログラムに沿って勉強しているので、何時間も教科書とにらめっこするこういうオーソドックスな学習スタイルが、辛くてしょうがないのです。早々に根を上げた彼は、両親の励ましも耳に入らず、ひたすら苦痛を先送りしてごろごろ寝てばかり。もしも約束通りに終わらせなかったらiPhoneの無期没収よ!と妻が宣告したところ、じゃあいいよ、どうせ終わりっこないんだから没収の日までずっとゲームして遊ぶ!と開き直ります。ここで遂に私がキレました。ふざけんな!なんだその怠け者コメントは!すると息子は、要求レベルが高すぎるよ、と涙目になって激しく我々を責め始めたのです。え?その立場で反論するか?

自分で自分の勢いに勇気づけられたのか、ますます興奮して憤懣をぶちまけはじめた息子に、

「まずはとにかく落ち着きなさい。」

とたしなめる妻。聞いてみると彼は、この件以外でもイライラの種をたくさん抱えているのだとか。肩で息をしながら冷静さを取り戻そうとする息子を見ながら、しみじみ思いました。気づかぬうちに、典型的なガラスの十代になってたんだなあ…。

さて先日、出張先のホノルル支社で仕事していた時、コンピュータ画面にMicrosoft Lyncのインスタント・メッセージが開きました。サンディエゴ支社の別フロアで働くソフィアです。

「今オフィスにいる?ちょっと話したいんだけど、会えない?」

「いや、今ハワイに来てるんだ。」

これに対し、彼女がこう返して来ます。

“I’m blue with envy!”
「うらやましくって青くなっちゃった!」

はあ?なんのこっちゃ?

会話を締めくくってからネットを調べたところ、

“I’m green with envy”
「うらやましさ(envy)で緑色になる。」

という慣用句は見つかりました。エンヴィ(Envy)は「羨望」とか「うらやましく思う気持ち」という意味ですね。でもどうしてここで、青とか緑が出て来るのか?

サンディエゴに戻って周囲に尋ねたところ、どうやらこれは頻出フレーズらしいです。みな揃って、

「そこはグリーンでしょ。ブルーとエンヴィは繋がらないよ。」

と指摘します。同僚の中でも飛びぬけて口の達者なソフィアが、単純に言葉のチョイスを間違ったとは考えにくい。私がハワイにいると知り、咄嗟に「ブルーハワイ」とかけて緑を青と入れ替えたんだろう、ということで話が落ち着きました。

でもやっぱり、緑色とうらやましく思う気持ちとの繋がりがしっくり来ません。アメリカ人は、グリーンを見て反射的に羨望を連想するのだろうか?日本人の私からすると、緑は若さとか新鮮さの象徴でしかないのです。ランチルームで同僚ポーラと会ったので、尋ねてみました。

「私も、緑色と羨望を結びつけることはほとんど無いわね。連想クイズ出されても、エンヴィなんて五番目くらいまでは出て来ないと思う。」

ふ~ん、そうなの。でも五番目には出て来るのか…。ちょっと微妙。

昼食後、ネットで調べを進めた結果、これはシェークスピア作品の一節から来ているのだという語源説が見つかりました。

「緑の目をした怪物(Green-eyed monster)に噛まれた人は羨望や嫉妬で頭が一杯になってしまう。」

というのがそのフレーズ。なるほど、身体が緑色になるわけじゃないのね。超人ハルクみたいなのを想像してたんだけど。そういえばハルクは怒ってばかりで、他人を羨ましがってるようには見えないもんな。

別のフロアで予定されているチームリーダー・ミーティングに向かう途中、エレベーター・ホールで若手PMのマットに会ったので、この疑問をぶつけてみました。

「そのイディオムでしか、緑色とエンヴィは結びつかないと思うよ。大抵はポジティブなイメージしか出て来ないでしょ、グリーンからは。」

という返事。

「やっぱり?そうだよねえ。あ、でも今思い出したんだけど、映画Inside Out(邦題はインサイド・ヘッド)で全身緑色の子がいたでしょ。あれ、どういう性格だったっけ。」

Disgust(ムカムカ)だね。」

「それは間違いなくネガティブでしょ。どうして緑をそんな感情と結びつけるのかな。」

マットはちょっと考えてから、こう答えました。

「グリーンって若いってことでしょ。若い時は、何かにつけてイラついたりムカついたりしなかった?」

「おお、なるほど。それなら分かる!」

これが世の中の統一見解かどうかは不明ですが、すっきりと腑に落ちた私でした。


4 件のコメント:

  1. angry と green を掛けてるってことはないのかなぁ・・・そんな連想は日本人だけ?

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  2. そういう洒落た説は聞いたことないなあ〜。複数の同僚に聞いたけど、anger はredと相場が決まっているらしい。

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  3. レッドは正義のレッドじゃないの、パワーレンジャーのリーダーは必ず赤だし(笑)

    ユーシン君の悩みは親としては大変だね。こんな誘導の仕方はどうかな?
    http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/258310/072200054/?n_cid=nbpnbo_mla

    繊細な十代の少年にこのやり方は無理か。。。

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  4. 色のイメージは国や文化によっても違うらしいし、何とも言えないよね。イタリアの男性はブルーを見ると興奮するらしいし。

    新手のコーチング、なかなか効果がありそうだけど、部下と子供は全く別物だからねえ。

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