3月に若い女性社員を雇いました。彼女はベトナム生まれのアメリカ育ち。私の部下三人はこれで全員女性。男所帯で育った私は、女性に囲まれた職場環境を楽しく思う反面、何か思わぬ失態をやらかして一斉にそっぽを向かれたらどうしよう、という不安を常に抱えています。
先日シャノンとラスベガスの話をしていた際、あるエリアでは夜になるとホテル周辺にエスコートと呼ばれる女性が立って競い合うように客引きしてるのよ、と教えてくれました。
え?そうなの?と大げさに驚いてみせる私。
時々経験することですが、女性との会話の流れが下世話な方に向いた場合、ノリで下品なジョークをかます度胸が無いためか、思わず過剰に聖人君子的反応をしてしまいます。それから、さして興味も無いギャンブルの話題に切り替える私。
ラスベガスといえば、一時期テレビで盛んに流していたコマーシャルが非常に印象的でした。
“What happens here, stays
here.”
文字通り解釈すれば、
「ここであったことは、この場限り。」
つまり、
「ここで起きたことは、口外無用。」
ですね。どれだけ羽目を外して乱痴気騒ぎしたとしても、この街を出たらそのことは言いっこなしだぜ、とウィンクしながら使いそうなキメ台詞。ラスベガスという享楽の街が醸し出す背徳の匂いを表現するのにこれ以上ピッタリのフレーズは無いなあ、と感心しきり。こういうシンプルで気の利いたセリフを普通の会話でも使えないもんかな、と企んでいたところ、つい先日、思わぬところから飛び出しました。
同僚のディックとリンドンと三人でランチへ出かけた際、女性の多い職場というのは気を遣うよね、という話題になりました。
「最近じゃ、逆差別されてるなあと感じることすらあるよ。」
とディック。
「会議室を見渡して男は自分ひとり、という状況だと、ちょっと気圧されるね。」
と私。
「一番コワいのが、気の緩みから自然に口をついて出る下ネタなんだ。」
ここで私は、以前の職場でベテラン社員のジムが、出産後復帰する女性社員のために設けられた搾乳室にマグカップを持って行く、というジョークを放つのを目撃してヒヤヒヤした、という話題を振りました。
ディックとリンドンが、同時にのけぞります。
「それはヤバいだろ~!」
圧倒的に男性の多い職場だったから事なきを得たけど、今の我々のオフィス環境なら間違いなく一発退場だよね、という見解で一致しました。その時ディックが、ふいにこう言ったのです。
“I wouldn’t need a mug
cup.”
「マグカップなんて必要ないっしょ。」
ニヤリとするディックの顔を2秒ほど見つめてからようやく意味を悟り、腹を抱えて暫くの間笑い続ける私。そこで彼が、こう締めくくりました。
“What happens here, stays
here.”
「今の会話は口外無用だぜ。」
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