大ボスのトラヴィスから、先月出席したワークショップで得た情報をリーダーシップ会議で解説してくれ、と頼まれたので、ロス支社から一緒に参加していたブライアンと共同で上層部の皆さんにプレゼンしました。ウェブを使った電話会議なので、私が作成した資料を喋りが達者なブライアンが説明し、私が適宜補足する、という形式。
プレゼン中盤、ブライアンがこんなことを言いました。
「これまでは、複数のツールに全く同じ内容を何度も書き込まなければいけませんでした。しかも、データベースとの交信に時間がかかるため、イライラしながら待つのがすっかりPMの日常となっています。」
そして、こんな表現をぶちこんで来たのです。
“This has been a big albatross.”
「これはでっかいアルバトロスです。」
え?今なんて言った?アルバトロス?急いでノートに書き留める私。日本語では「アホウドリ」だよな。これって、ゴルフ用語じゃない?パーよりも三打少なくホールアウトするというスーパープレイのことでしょ。そんなポジティブなフレーズを、こんな、ちょっと嫌な場面で使うとは…。
会議は無事終了し、さっそくネットをチェック。なんと、意味は「burden(重荷)」だとあります。ええ?なんで?更に調査を進めると、
A big albatross around one’s neck(首に巻いたアホウドリ)
というのが元のフレーズらしく、サミュエル・テイラー・コールリッジという人の詩が語源と見られているそうです。
船乗りが罪も無いアホウドリを撃ち殺したのを仲間が咎め、罰としてその死骸を首に巻かせた、というストーリー。色々調べたところ、昔のアホウドリは無防備なまでに友好的で、人間が近寄っても逃げないので簡単に仕留められたのだとか。
鳥の死骸を首に巻くなんて、暗い語源だなあ。そんなビジュアルイメージがあったら、使いにくいじゃないか。それにしても、ゴルフでは超ポジティブな用語が、こんなにネガティヴな意味で使われるとは…。あまりにも両極端なので、もう一方の訳に引っ張られてイマイチ呑み込めません。残念ながら、このフレーズは自分のものに出来そうも無いな、と半ば諦めました。
念のため、同僚ステヴを訪ねて解説を依頼します。
「単に重荷と言いたいなら、burdenでいいじゃん。アルバトロスという言葉を使うからには、何か特別な意味合いがあるはずだよね。」
と詰め寄る私。
「う~ん。確かにね。」
「教えてよ。何が違うの?アルバトロスってどういう時に使うの?このままだと、知ってるけど一生使えないフレーズになっちゃうよ。」
「たとえばさ、」
数秒考えて、ステヴがこんなエピソードを語り出しました。
「僕のプロジェクトは一年前に終わってるんだけど、クライアントからの支払が遅れているためにまだ閉じられないでいるんだ。うちの上層部は、最終予測コストを更新して毎月レポートを提出しろと言ってくる。もう終わってるんだから最終予測コストは金輪際変わらないって何度も説明してるんだけど、それでも提出を要求してくるから、もうすっかり諦めて、無意味なレポートを毎月書いてる。これ、アルバトロスだよ。」
「おお~、それなら分かる。ちょうど僕もその手のレポートを出して来たところだから。」
「つまりね、prolonged(長引いていて)、annoying(不快で)、ridiculousな重荷 (burden) を指すんだよ。」
ここで、はっと気づく私。最後の ridiculous
は、「アホくさい」と訳せるじゃあ~りませんか!
アホウドリを首に巻いた姿の「アホくささ」。
つながった!
新しいフレーズが自分のモノになる瞬間を体験した午後でした。
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