2015年6月11日木曜日

ホットな男

12月に三支社を統合し、「オープンオフィス」なるコンセプトの新オフィスに移った際、上層部は
「仕切りを撤廃することにより、コミュニケーションの機会が増える」
という売り口上を高らかに謳いあげていました。

ところが蓋を開けてみると、誰もが四六時中コンピュータに向かって仕事に没頭しているので、意外にも会話が無い。私も隣のべスにおはようを言ったきり、夕方バイバイするまで一切話をしないことがあります。これはさすがにいかんだろうと思い、時々同僚に話しかけてみるようにしました。大抵は皆、夢から覚まされたようにこちらを向き、会話が終わるとまた無言で仕事に集中する。企業なんだから効率重視は当然なんだけど、なんだか味気無いよなあ、昔はもっと大らかだったのに、と溜息が出ます。

先日、総務のヴィッキーが受付カウンターに座っていたので、話しかけてみました。彼女は荷物や手紙の受け取りもするのですが、ちょっと前にUPS (United Parcel Service) の配達員と話してたことを思い出し、

「あのさ、UPSの男たちって一年中半ズボン履いてるでしょ。あれ、何でなのかな?」

この途方も無くどうでもいい質問に、彼女は大笑い。通りかかったディックを呼び止めました。

「ちょっと聞いてよ。シンスケが面白い質問して来るの。」

「シンスケはいつも面白い質問をするよ。」

とディック。

「そうねえ、ホットだから (because they’re hot) じゃない?」

と適当に答えるヴィッキーに、

「それはtemperature hot?それともsexy hot?

と聞き返す私。つまり暑いかカッコいいか、という話ですね。

「温度の方よ。常に大急ぎで荷物を運んでるから、体温が上がるのよね。」

あとで同僚リチャードから聞いたところによると、彼の友達にUPSの配達員がいて、効率が何よりの成績評価になるのだそうです。一秒でも配達時間を短縮するため、配達コースの設定やサインの受け取り方法などに、無駄を排除するありとあらゆる工夫がなされているのだと。だから、アスリートのように心拍数上がりっぱなしで、長ズボンなんか履いていられない、というのです。

「でもね、中に一人、自分のことを本当にホットだと思っている面倒くさい配達員がいるの。」

とヴィッキー。

「半ズボン姿がセクシーだと思い込んでるのよ。」

「え?半ズボンが?」

「配達中にお客さんの女性から、うちのプールに入って行かない?って誘われたりとか、合鍵渡されそうになったこととかあるんだって。一緒に楽しい午後を過ごさない?ってね。」

なんと!そんな妄想漫画みたいな話、実際にあるんだなあ。

「ここに荷物運び込むたびにそんな話していくのよ。本当にやめて欲しいのよね。」

この時彼女が使った表現が、これ。

“He’s full of himself.”

文字通り解釈すれば、「彼は自分のことで頭が一杯」ですが、要するにこういう意味ですね。

“He’s full of himself.”
「ものすごい自惚れ屋さんなのよ。」

「興味湧くなあ。どんなにセクシーなのか、ちょっと見てみたいなあ。」

正直、半ズボンの男などには全く興味が無いのですが、一応ノリでふざける私。

「今度来たらすぐに知らせるわね。」

とウィンクするヴィッキー。

席に戻って30分ほど過ぎた時、ヴィッキーからメールが入りました。

「シンスケ、荷物が届いてるわよ。」

お、さっそく暗号使って来たな。込み入った仕事の真っ最中なんだけど、ああいう会話をしちゃった手前、ここは調子合わせておかなきゃいかんだろうな、と駆けつけました。

「で、ヴィッキー、どこなの?」

声を落としてキョロキョロする私の顔をまじまじと見た彼女が、

「ここよ。」

と荷物を指さします。

「いや、そうじゃなくて、半ズボンの配達員は?」

きょとんとした表情になったヴィッキーが、アッハッハと笑います。

「すっかり忘れてた。でも、今日の配達員は私の話してた人じゃなかったの。ごめんなさいね。今度来たらちゃんと合図出すからね。」

う~む。今の自分、滅茶苦茶カッコ悪い。


8 件のコメント:

  1. sexy hot ってこんな感じカナ?

    http://video.search.yahoo.co.jp/search?p=%E3%81%84%E3%81%A4%E3%82%82%E5%85%83%E6%B0%97%E3%81%AA%E5%AE%89%E6%9D%91&tid=624f5626be80808434fab0ca254b4a93&ei=UTF-8&rkf=2&dd=1

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  2. う~ん、この芸風、面白いけど無事年を越せるかなあ。

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  3. 日本のバラエティの常で、ここんところやたらと出まくってます、ゆえに飽きられるのもかなり早そう。。。そうやって、そこはかとないお笑いをどんどん食い尽くしていくんだよねぇ>日本のテレビ

    この芸、実にくだらないんだけど、所見の時には「不覚にも」笑ってしまった。

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  4. うん、僕も笑ったよ。とにかく明るいからいいね。

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  5. なんか最近英語バージョンとか出しているみたいヨ。
    http://videotopics.yahoo.co.jp/videolist/official/owarai/pdf9c214587eaa463c1bc768e806544f8?pos=3&ccode=ofv

    リアルなアメリカ人の感想聞いてみたいナ。

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  6. う~ん、これ、知り合いのアメリカ人に見せて感想聞くの、やだなあ。他にもうちょっと品のいい芸ない?

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  7. あの超くだらないネタをアメリカ人がどう反応するか興味あるのに・・・・

    正統派漫才のテンダラーがアメリカ公演したとかいう話があったね。
    https://www.youtube.com/watch?v=Z7yWujLstH4

    あと、以前レッドカーペットによく出ていたタンバリン芸人のゴンゾーが今はアメリカで活動しているとか。
    http://matome.naver.jp/odai/2136643610648849201

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  8. ありがと。テンダラーのYouTubeはアメリカからは見られないね。残念。彼らの漫才ならテンポの良さが気に入られるかもね。タンバリン芸は初めて見たよ。一分ぐらいしてからじわっと笑えて来るじゃない。これはいいかも。

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