私がPMを務める大型建築設計プロジェクトに極めて深刻な事態が発生し、ここ数週間は上層部を含めた電話会議で日々のスケジュールが立て込んでいます。ひどい時は同じテーマで日に三回会議がセットされることもあり、事態の進展に合わせて瞬時に適切な行動が起こせるよう、途切れることのない緊張を強いられています。
ディレクターのビバリーは超多忙で日中なかなか会話が出来ないため、深夜に電話会議をすることも。彼女の声には疲れが滲んでおり、時々弱気な発言も漏れるようになりました。
ディレクターのビバリーは超多忙で日中なかなか会話が出来ないため、深夜に電話会議をすることも。彼女の声には疲れが滲んでおり、時々弱気な発言も漏れるようになりました。
「ここまで働かされて、それでも上層部がまだ文句を言うのなら、会社を去るしかないわね。」
励ますこっちも相当疲れがたまっているようで、帰宅して食事するとすぐに眠くなる毎日。
ある日息子と映画の話をしていた際、作品中で急激な体重の増減をやってのける俳優の話題になり、「レイジング・ブル」を例に挙げました。ところが、肝心の俳優名が出てこない。どんなに考えても浮かばないのです。「ほら、ゴッドファーザーPart IIにも出てた、ほら、」なんて自分にヒントを与えてもやっぱりダメ。翌日、仲良しの同僚と挨拶を交わした際も、彼女の名前が全く思い出せないことに気づき、背筋が凍り付きました。いかん。これは本当にヤバいぞ。ボケが始まったのか?いや、そんなわけない、疲れてるだけのことだ。休みを取るか何かしなければ…。しかしプロジェクトが大変な時に穴を開けるわけにもいかんぞ。
それから間もなくし、ビバリーとの電話会議で、
「ねえ、デクラメンテッドの意味分かる?」
と彼女が尋ねました。なんでアメリカ人が僕に英単語の質問するわけ?と可笑しくなりましたが、これはちょうど調べたばかりの単語。
「Decremented でしょ。これ、ジョン(副社長)がこないだ会議で使ってたよね。ちょっと調べてみたんだけど、減らされたって意味みたいだよ。Decrement はIncrement(増える)の反意語なんだって。」
「私そんな言葉、人生で初めて聞いたわよ。」
「実は僕も、周りの同僚に聞いてみたんだ。この単語を聞いたことのある人は一人も見つからなかったよ。」
「ジョンがこないだのレビュー会議で、我々の計算したコンティンジェンシー・リザーブが大きすぎるって言ってたじゃない。ほら、リスク事項の発生見込みに合わせて数値を下方修正してデクラメンテッド版を作れっていう指示があったでしょ。今それに取り組んでるの。後で皆にファイルを送るわね。」
そしてその日の夜12時ちょっと前、複数の副社長宛てに彼女から修正版が発送されました。眠かったのでやり過ごし、翌朝あらためてメールを読んだところ、こんな一文が。
「修正版ファイルを送ります。今気づいたんだけど、添付ファイル名の最後にDecremented(削減版)って付け足したつもりが何故かDemented(発狂した)になってた。修正して再送する気力が残って無いわ。ハッハッハ。」
ビバリー、笑ってる。いよいよヤバいかも。
アル・ヤンコビックが「FAT」のPVの製作談話みたいな話をするときに「甘いゼリーを何ガロンも食べてそりゃぁ大変だったヨ」みたいなパロディを演っていたのが思い出されます。
返信削除オイラも現場に出てこの1年で10kg位体重が落ちて、カミさんは心配しているケド、久々の腹筋の割れ目を見てちょっと感動してたりします(笑)
ワーク・ライフ・バランスというのはななかな厳しいテーマだね。腹筋が割れるのは嬉しいけど、やせ過ぎは不安だもん。僕は三週間前から、「週40時間までしか働かないとどうなるか」という実験を進めています。まだ、何も起きていません。
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