三週間前の日曜日のこと。ここのところすっかり恒常化していた休日出勤から昼前に帰宅すると、13歳の息子が妻に、
「パパってすごいお金持ちなんでしょ。」
と嬉しそうに言いました。その根拠はと尋ねる妻に、
「だっていっつも残業してるじゃない。日曜日も会社に行ってるんだから、沢山給料貰えるんでしょ。」
と無邪気に答える愚息。
「何言ってんの?そんなのサービス残業に決まってるじゃない。余分に給料貰ってるわけじゃないのよ。」
と、半ば呆れたような、私にあてこするような表情で答える妻。ええっ?と素直に驚く息子。
「そんなのバカじゃん!だったらもっと僕と遊んでよ!」
と態度を豹変させ、最近ちっとも遊んでくれない、と文句を垂れ始めました。13歳にもなってまだ親父と遊びたいのか、と驚くと同時に、目を覚まされたような気もしました。
翌週の日曜は妻が家を空けていたので、午前中に息子を連れてラホヤのファーマーズマーケットへ出かけました。彼はダイバーのおじさんが出しているお店で立ち止まり、店主が海底から採って来たという100年前の銃弾を買いました。私はりんごとオレンジ、イチゴ、かぶ、スナップえんどう、ジャパニーズ・トマトなどを購入。どれを取ってもとびきり新鮮で、光り輝いています。帰宅してからサラダや炒め物にして、二人で美味しく頂きました。
「すごくおいしい。また連れて行って!」
と目を細める息子。そしてハッと気づいたように、
「あ、そうだ。パパ、今日は会社行かなくていいの?」
と尋ねます。もう日曜出勤は止めたんだよ、と答えると、
「有難う。そっか、それで僕をファーマーズマーケットに連れて行けたんだね。」
と再び笑顔になりました。
休日出勤というのは、麻薬のようなものです。誰もいないオフィスで効率よく大量の仕事を片付けてしまえば、平日の業務がかなり楽になる。だから一旦そのサイクルにはまってしまうと、なかなか抜けられなくなるのです。しかも「同好の士」が意外にも大勢いて、こっちが週末も働いていることに勘付くと、どんどんメールを送って来たりもする。アメリカ人なんて週40時間以上は働かないとかつては思っていた私ですが、とんでもない。少なくとも私の周囲では、特に組織内での地位が高ければ高いほど、就業時間は長くなる傾向があるようです。
とにもかくにも、この休日出勤という「麻薬」をすっぱり断ち、息子としっぽり過ごした日曜日。忘れがたい一日になりました。
オレンジ支社へ出向いた火曜日の夕方、閑散としたほぼ無人のオフィスで残業していた同僚パトリシアにこの話をしたところ、すかさずこんな合いの手を入れて来ました。
“Out of the mouth of babes!”
ん?何だそのフレーズ?初めて聞く言い回しです。
素直に訳すと、
「赤ん坊の口から出たのね!」
ですが、それじゃ何のことやら分からない。パトリシアの表情には、「ドンピシャのフレーズを使っちゃったわよ」という満足感が滲んでいたのでその場では説明を求めず、帰宅してから調べてみました。
“Prov. Children occasionally say remarkable or insightful things.”
「ことわざ。子供というのは時にびっくりするような、あるいは洞察に富んだことを言う。」
なるほどね。確かに!
そんなわけで、私の訳はこれ。
“Out of the mouth of babes!”
「素朴だけど深い子供の一言ね!」
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