ロサンゼルスの日系コミュニティ誌「Bridge USA」が主催する夏祭りが、先週末にリバティ・ステーションというエリアで催されました。ここまで大規模な日本式のお祭りがサンディエゴで開催されたのは、私の知る限りでは(過去12年間)初めて。
「大丈夫かな。お客さん来ないんじゃない?」
と集客力を疑問視する我々夫婦。そもそもサンディエゴにおける日本人コミュニティの規模を把握していないので、想像がつかなかったのですね。しかし蓋を開けてみると、凄まじい数の客が後から後からやって来て、終日ごった返していました。たこ焼き屋とかき氷屋には、常に長蛇の列が出来るほど。最終的に、集客数は一万二千人を超えたとのこと。我々の心配は杞憂に終わったのでした。
お祭り中、懐かしい顔にもいくつか会いました。
大学生のスティーブは、付き合いの長い友人一家の長男。東海岸の大学で寮生活をしているので、サンディエゴには滅多に戻りません。彼が小学生だった頃から仲良くしているので、私は親戚のおじさんみたいな位置づけ。久しぶりの再会に興奮して積もる話に花を咲かせたのですが、その隣で終始仏頂面をしている弟のブライアンは高校生。この年頃にありがちなシャイな態度で、こちらが声を弾ませて話しかけても、まともな応答が無い。二人とも180センチを悠に超えており、横にいるお母さんの真由美さん(日本人としては長身)が小柄に見えます。
そこへ、明るい水色の浴衣を来た金髪のべっぴんさんが歩いて来ました。お母さんらしき白人女性と、二名の日本人女性とを連れています。
「あれ、さっきカラオケ大会で熱唱してた女の子じゃない?」
と横にいた妻に確認したところ、そうかもね、という曖昧な同意。この白人女性、数十分前に流暢な日本語で、素晴らしい歌唱力を満員のお客さんに披露していたのです。
「ちょっとすみません。さっきカラオケ大会で歌ってた人?」
と呼び止める私。あとから考えると、普段の自分なら決してこんな行動には出ません。祭りには一種の魔力があって、これが私を一時的にハイにさせたのでしょう。
「はい、そうです。」
と素敵な笑顔で答える浴衣美人。
「なんであんなに日本語上手なの?」
「大阪に三年いました。」
みんなで感心していると、その女の子に付き添っていた日本人女性が、
「ほら、カード渡したら?」
と勧めます。
「あ、これ、どうぞ。」
渡されたのは、オレンジ色のつばつき帽子を被って緑色の古風なビロード地の長椅子に座っている写真がついた、個性的なビジネスカード。Natalie
Emmons という名前の下に、「ナタリー・エモンズ」という日本語表記がついている。更に、Singer/Songwriterというタイトルも添えてあります。
「彼女、いろんなところで歌ってるんです。ユーチューブにも出てるんですよ。」
と、付き添いの日本人女性。
「あ、もしかして、ジブリの歌を歌ってるあれ?」
と、真由美さんが叫びます。
「はい、そうです。」
「あたし見た!」
と、突然声が上ずる真由美さん。
するとスティーブも、
「僕も見たよ!」
と興奮を分かち合います。
「僕、見てない!」
とはしゃぐ私。
「一緒に写真撮ってもらっていいですか?」
と真由美さんがお願いし、撮影大会が始まりました。私と妻も、この機に乗じて記念写真を撮らせてもらいました。
スティーブが小さな声で、
「シングル(独身)かなあ。」
とつぶやくので、
「聞いてみなよ!」
とそそのかしたのですが、頬を赤らめるばかりで何も行動に出ません。と、そこへ、今まで全く感情を表に出さなかった弟のブライアンが、いきなり小型ビデオカメラを両手で構えて前進。おお、ようやくオスの本能が目覚めたか!と嬉しくなった私ですが、彼はナタリーの前を素通りし、会場中央付近に設置されたやぐらの方を目指して歩き始めました。見ると、御輿の練り歩きが始まった様子。人の群れがじわじわとこちらへ向かって拡がって来ています。なんだブライアン、カワイコちゃんよりお御輿に興味があったのね。こ、硬派だぜ…。
にわかに祭りの呪文が解け、我に返った私でした。
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