2012年10月28日日曜日

Skimpy スキンピー

つい先頃、総予定額が数百万ドルというロサンゼルスの大型プロジェクトを、うちのチームが獲得しました。喜びに沸いたのも束の間、最初の業務のために提案した予算を受け取ったクライアントが猛反発を見せた、というニュースが伝わって来ました。

「プロジェクトマネジメントのためのコストなんて載せてもらっては困る。うちは技術的な仕事を頼んでいるのであって、その成果にしか金は出さない。プロジェクトマネジメントはそちらの経費で賄ってくれ。」
というのがその理由。じゃあなに?チームをまとめたり、ミーティングに出たり、月例報告を書いたりするのもみんなプロジェクト予算外だっていうの?正直、呆れました。プロジェクト・マネジメントを専門にしている私のような人間にとって、こういうクライアントは本当に頭痛の種です。マネジメント・チームのシェリルは、クライアントのこの態度をスキンピー(Skimpy)という単語で表現しました。どういう文脈で使われたのか思い出せないけど、語感が良いので気に入ってしまった私。
すきんぴー!

でも誰かを相手に使ってみようとして初めて、語意をきちんと理解していないことに気づきました。で、さっそく同僚ステヴに解説を求めます。
「う~ん、スキンピーという単語をそんな状況で使うかな?あまり一般的じゃないと思うよ。意味は通じるけど。」

「そうなの?じゃあどういう単語ならこのシチュエーションに適してる?」
ステヴによれば、Thrifty (スリフティ)とFrugal (フルーガル)が「倹約的」という意味で良く使われるとのこと。

「クライアントに面と向かって、おたくはThrifty ですね、とかFrugal ですね、と言っても角が立たないの?」
「大丈夫だよ。どちらもポジティブな意味だからね。むしろ褒め言葉だな。」

「じゃあさ、陰口を叩く時にはどういう単語を使うのがいい?」
「やや堅い言葉だけど、Stingy (スティンジー)がいいと思うよ。」

「ふ~ん。そんな単語、聞いたことないな。もっと直接的なのない?」
「一般的にはCheap (チープ)だな。うちの奥さんに、しょっちゅう言われてるよ。You are so cheap! (あなたホントにケチね!)って。」

「なるほどね。チープならよく聞くよ。うちのクライアントは、ウルトラチープだ。」

納得して席に戻りかけたんだけど、やっぱりスキンピーが気になって仕方ない。
「じゃさ、スキンピーな予算、っていう言い方はある?」

とステヴに尋ねます。
「無くはないね。でも予算の場合は、meager (ミーガー)の方がぴったりだな。」

「なんだよ。じゃあスキンピーは、一体どんな場面で使えんの?」
「それは大抵、衣服の大きさを表現する時に使われるんだ。小さすぎて肌の露出が多いようなケースでね。」

そしてステヴは、即席で例文を作ってくれました。
“Our client is so stingy and gave us a meager budget. So we can only buy skimpy clothes.”
「うちのクライアントはスティンジー(ケチ)なので、ミーガーな(乏しい)予算をつけられた。おかげで僕らはスキンピーな服しか買えない。」

なるほどね。
「じゃ、スキンピーってのは、ネガティブな言葉なの?」

「そうだね。ポジティブに使う場面はあまり考えられないな。」
「ふ~ん。じゃあやっぱり、使うチャンスは無さそうだな。」

と諦めて立ち去ろうとする私に、ステヴはちょっと考えてから、
Skimpy Bikini(超ビキニ)とかは言うよね。」

と呟きました。立ち止まる私。
「全然ネガティブじゃないじゃん。むしろポジティブじゃん。」

「そうだね。うん、ポジティブだな。」
とニヤつく、スケベ男二人。


席に戻る頃には、自分が腹を立てていたことをすっかり忘れていたのでした。 

2012年10月26日金曜日

Rock Star Syndrome ロックスター症候群

食堂で熟練PMのダグと立ち話をしていた時、CBS 60 Minutes という番組の話題になりました。先月末にシュワルツェネッガーのインタビューがあったのですが、これを観た後、何とも落ち着かない気分になったのです。自伝の中で過去の浮気の数々をあっさりと認め、まるで「もうそれは済んだことだから」ってな調子で淡々と語る元ターミネーターに、インタビュアーのレズリー・ストールが、

「振り返らずに前だけ見て突き進む、というのがあなたのモットーですよね。でもそのモットーがご自身の結婚生活をぶち壊し、奥さんの人生を滅茶苦茶にしたんじゃないですか?」
とチクリ。答えに窮して口ごもる筋肉男を、じわりじわりと追い込んで行くストール。最後のあたりでは、もう正視に堪えないほどの「いじめ」の構図が完成していました。

「特にシュワルツェネッガーの擁護をするつもりは無いんだけど、あのインタビューはフェアじゃないと思うんだよね。だってさ、大した成功体験を持たない人間が、俳優としても実業家としても、そして政治家としても大成功した人物に、お前は次々と迫り来る甘い誘惑に打ち克って聖人君子を通すことの出来ない弱い人間なんだぞって責めてるわけでしょ。そういうアンタはどれほど立派な人間なんだよ、ってムカつくんだよね。」
自説を吐露し終えてから、はっとしました。ダグってガチガチのクリスチャンじゃん。浮気なんか絶対許さない人だよな。これはまずい、お叱りを受けちゃうかも、と身構えていたら、

「それは確かにそうだな。」
と、あっさり同調してくれちゃいました。さも感心したように何度も頷いてから、こう続けます。

NFL(フットボール)の選手でも、引退した人の大半が破産や離婚を経験するっていうしね。とかく成功者ってのは堕落しやすいんだな。」
そこで彼の口から飛び出たフレーズが、これ。

“That’s Rock Star Syndrome.”
「それはロックスター症候群だよ。」
おお、新しい言い回し!一度莫大な富や名声を手にした人間は、キャリアの終焉後も過去の栄光に囚われて虚飾の余生を送ってしまう。そして平凡な現実とのギャップをうまく処理出来ずに、身を持ち崩して行く…。わりと色んなケースで使えそうな英語表現だと思いました。ちょっとネットを調べてみたら、日本に短期間滞在した外国人はあまりにもチヤホヤされるものだから、帰国後このロックスター症候群に陥りやすい、という記事までありました。

さて、シュワルツェネッガー。最近は自伝の売り込みのためにあちこちのテレビ番組に出ているようなのですが、あるトークショーでは、MCの男性にさんざん浮気の告白を笑いものにされた上、こんなことまで言われてました。

「いっそのこと、過去の世界に自分を送り込んで、若き日のシュワルツェネッガーを抹殺しちゃったらどうです?」
映画「ターミネーター」の筋に引っかけてからかったのだろうけど、それはいくらなんでも失礼だろ~!

2012年10月22日月曜日

Get the point across 言いたいことをしっかり伝える

三年ほど前、熟練PMのジムと話していた時、経理のMさんとの意思疎通がどうもうまくいかないんだよね、という話題で意気投合しました。彼女は思い込みが激しいのか、意図を誤解したまま突っ走ってしまう傾向があるのです。

「請求書の構成について質問した時も、こちらの聞いたことには全く答えてもらえなかったんだよ。彼女も延々と喋るんだけど、一時間以上会話したにもかかわらず、何を言いたいのかとうとう分からなかったんだ。」
この時ジムの使った表現がこれ。

“She couldn’t get the point across.”
ふうむ。

"Get the point across."
イント(point)を、向こう側へ(across)、到達させる(get)。
解説するまでもないほど「文字通り」の言い回しなのですが、じゃあ使えるか、と言われるとこれがなかなか難しい。結構クールなフレーズなので、その日以来、使うチャンスをずっとうかがっていました。

今日の午後、同僚マリアと廊下で会った際、藪から棒に、
「サミュエル・ジャクソン知ってる?」
と聞いて来ました。

「もちろん知ってるよ。パルプ・フィクションでは強烈な役だったよね。」
と答えると、彼が最近オバマ大統領のための応援ビデオに出演した、という情報を教えてくれました。

「これがもう最高なの。要チェックよ。」
さっそく自分のオフィスに戻ってグーグルし、鑑賞。内容は、選挙に無関心な家族に対してサミュエル・ジャクソンが凄みの効いた顔で喝を入れる、というもの。Wake the fxxk up! 「ぱちっと目を覚ませ!」というキメ台詞が頭に残るビデオで、最後のシーンではまだ幼い少女までが、このフレーズを叫びます。観る者を笑わせつつ、しっかり共感させる仕掛け。見事な出来栄えです。
http://youtu.be/og35U0d6WKY

 感想を述べるためにマリアのオフィスに戻り、
「あそこまできわどいセリフを、あんな小さな女の子に言わせちゃって大丈夫なのかね。」

と心配すると、

「ギリギリってとこよね。私もびっくりしたわ。でもそうやって観る人を驚かせるのがそもそもの目的なんじゃない?」
「そうだね。あの子の最後のメッセージ、すごかったね。」

そこで満を持して、例のフレーズを打ち込みます。
“She got the point across.”
「あの子の言いたいことは伝わったよ。」

マリアも深く同意して、
"She did. Didn't she?"
と笑いました。

またひとつ、クールな英語表現をモノにしました。

2012年10月18日木曜日

Treat her like gold 彼女を心から大切にする

同僚マリアの友達に、ダニエラというブラジル出身のべっぴんさんがいます。彼女の旦那、リッチーはジャーナリスト。彼と結婚する直前までダニエラは、ドイツ人の色男と4年付き合っていたとか。この彼、常に完璧なお洒落をしていて、立ち居振る舞いに全く隙が無い。「俺ってイイ男だろ」光線を発し続け、傍目からはダニエラと似合いのカップルだったそうです。

「あたしははなっから苦手だったけどね。」
とマリア。
「ダニエラと一緒に飲みに行ってる時でさえ、彼女がちょっと席を外した隙に片っ端から女を口説いてんのよ。もちろんダニエラのことは、ああ、あれはただの友達だよ、なんてうそぶいてね。」

そんな時現れたリッチーは、ハンサムとは程遠く、小太りで挙動不審なおっさん。しかし話し方には人柄の良さが滲み出ていたのだと。ダニエラに一目惚れした彼は、必死になって彼女に近づこうとします。浮気性の彼氏にほとほと愛想を尽かしていた彼女。いつ別れるか、ということばかり考えていたのでタイミング的にはバッチリだったけど、当時の彼女はリッチーのぱっとしない外見が気に入らず、どうしても踏み切れなかったのだそうです。
そんな時ダニエラは、サンフランシスコの女友達から結婚式に招待されます。たまたま当地の友達を訪ねる予定だったリッチーは、僕も一緒に行くよ、と申し出ます。機内でスピーチの練習をしていた彼女に、もし良かったら手伝うよ、とリッチー。ダニエラにとって英語は外国語。お祝いの席でのスピーチですから、文法の間違いなどあったら嫌だなあ、と不安だったのです。じゃあお願い出来る?と原稿を渡したところ、たちまち全部書き直してくれた彼。さすがジャーナリスト、速いわね、どうも有難う、と受け取って練習を再開したダニエラ。

そして結婚式当日。ダニエラのスピーチの順番がやって来ます。リッチーの書いた原稿を手に立ち上がり、淡々と読み始めたところ、会場がしんと静まり返り、やがてあちこちからすすり泣きが始まったのだそうです。え?なに?どういうこと?と慌てつつ、最後まで読み終わった途端、猛烈な拍手に包まれたのだと。出席者が口々に、素晴らしいスピーチだった、感動した、と声をかけてくれるので、「あたしが書いたんじゃないんだけど…。」と内心言い訳しながら、リッチーのスゴさに初めて気がついたダニエラ。
それから間もなく、二人はめでたくゴールイン。ドイツ人の色男とは、「ゴキブリ野郎」と罵ってから別れたのだそうです。

「いい話じゃないか。そんなドラマみたいなことって、本当にあるんだね。」
と私。

「それで終わりじゃないのよ。こないだね、リッチーの連載記事に目をとめたハリウッドの大物が、映画化しないかって持ちかけて来たんですって。実現すれば、リッチーとダニエラはレッドカーペットを歩くことになるかもしれないわ。」
「おお、それはすごい!」

「ドイツ人の元彼は、ダニエラと付き合ってる間に浮気してた女を孕ませちゃって、修羅場になってるそうよ。赤ん坊には気の毒だけど、いい気味だわ。」
「そうか、その男と結婚してたら全く違う人生になってたんだね。」

「天国と地獄ほどね。」
ところで、マリアがリッチーの描写をした際、

“He treats her like gold.”

と言いました。「彼女をゴールドのように扱う」というのは一体どういう意味だ?と気になったので、あとで同僚リチャードに尋ねてみました。
「ゴールドは貴重品だからね。人間に喩える時は、誰かを心から大切にするっていう意味になるね。」

「それって女性に対する待遇のことを言うんでしょ。男女の立場が逆だったらどういう言い方になる?」
She treats him like a king. (彼女は彼を王様のように扱う)だね。」

なるほど、王様ね。分かる分かる。でもそういう関係を続けると、男は結局浮気に走るんじゃないかな。なんでだろ?ゴールドも王様も、相手を大事にするという点では一緒なのに。
これ、とっても不思議です。

2012年10月14日日曜日

ナンパの断り方

ちょっと以前、妻が女友達と二人でゴルフへ行った際、後から追いついてきた中年の白人男性二人が「一緒に回りませんか?」と声をかけて来たそうです。「私達、あまり上手じゃないから。」と一度は断ったのだけど、いいからいいから、と半ば強引に四人で回ることになってしまったのだと。結果的には色々的確なアドバイスも貰ったりして、なかなか楽しく過ごせたそうです。

終了後、妻が手袋を外してクラブを片付けていたら、二人連れの片割れが近づいて来て、
「こんなことを言ったら驚かれるかもしれないけど、君たちのうちどちらか、いや、両方でもいいんだけど、僕らと付き合わない?」
と誘いをかけて来たのだそうです。妻も彼女の友達も、立派な中年です。確かにアジア人は若く見えるというけれど、まさかナンパされるとは思わなかった、と妻。
彼女はゴルフに行く際は結婚指輪を外す習慣があるのです。「グリップに支障が出る」というのがその理由。
「指輪してないのを見られたらまずいなあとは思ってたのよ。」
二人とも結婚していて大きな子供までいるのよ、と告げると男はギョッとして、知らぬこととは言え失礼しました、と退散したのだそうです。
「私、そういうナンパを断る場合に使える爽やかな英語のフレーズ、知らないのよね。しどろもどろになっちゃった。今度、誰かに聞いてみてくれる?」

というわけで、同僚達に聞いて回りました。で、ほぼ共通の答えがこれ。
“I’m sorry but I’m married. Thank you for asking, though. I’m flattered.”
「ごめんなさいね、私結婚してるの。でも有難う。ちょっと嬉しかったわ。」
最後の I’m flattered ですが、「ほめる」とか「お世辞を言う」という意味の flatter を過去分詞にして、「まあお上手ね」みたいなノリで使われるフレーズです。

私としては、妻がナンパされたことよりも、結婚指輪に関する社会的ルールがそこまで明確に確立されている、ということの方がむしろ驚きでした。日本の職場では、結婚指輪をしない所帯持ちなんて山ほどいたのです。
渡米して間もない頃は、うっかり指輪をせずに出勤したりすると、妻に怒られました。「どういうつもり?」と。「すまんすまん」と謝りつつも、なんでそんなに気にすんの?と不思議に思っていた私。たかが指輪じゃん。大体、僕が指輪してないからって誰が寄って来るっていうんだよ?と。
ふと気づいたんだけど、最近は指輪し忘れててもガミガミ言われなくなりました。あれ?もう心配いらないと思ってるのかな。男の色気が枯れてしまったということか?

いかーん!

2012年10月9日火曜日

Ghost Protocol ゴースト・プロトコル

ダウンタウンのリトルイタリー地区に新しいピザのお店が出来たというので、同僚シャノンと一緒に行って来ました。NAPIZZA というのが店名で、他では見られないような種類のピザがショーウィンドウに整然と並んでいます。私はTruffle というのとジャガイモの薄切りを載せたのを注文。

結論から言おうか?(永ちゃん風に)
滅茶苦茶ウマい!これまでの人生で食べたピザの中でも、ダントツなんじゃないかな。病み付きになりそうだ!サラダの野菜もとびきり新鮮。ベビースピナッチがしゃっきしゃき。シャノンと感動を分かち合いながら舌鼓を打ちました。

職場に帰って歯を磨こうとトイレに行き、鏡の中の自分を見てびっくり。前歯から右に四本目、どでかいサラダの葉っぱがはさまってる。うそだろー。笑顔になると、わざとやってるみたいに面白い顔。なんでシャノンは指摘してくれなかったのかな?ずっと向き合って座ってたっていうのに。

後で別の同僚フェリースに、

「人の歯に何かひっかかってるのを発見した時、相手に恥ずかしい思いをさせずに指摘する英語の言い回しを教えてくれる?」
と尋ねてみました。

「それは相手によるわよ。育った環境とかで、受け取り方が違うじゃない。」
とフェリース。そりゃそうだ。これは英語がどうこういう話じゃないな。

“It’s more of a protocol question.”
「どちらかと言えばプロトコルの問題ね。」
と彼女が続けます。おお、ぷろとこる!なんでここでプロトコルが出て来るんだ?そういえばこの単語、前々から使い方がいまいち分からなかったのです。でもここでフェリースに聞くのはちょっと恥ずかしい。で、別の同僚ステヴに解説を求めます。

「大雑把に言えば、手順とかステップという意味だけど、一般には、しきたりとか慣習って意味で使われるんだ。ほら、外国へ行くとご飯の食べ方から挨拶の仕方まで色々違うでしょ。そういうプロトコルをしっかり学んでから行くと困らないよね。」
そういえば、日本の外務省には「儀典官室(プロトコール・オフィス)」という部署があり、皇室関係業務や外交上の儀礼を担当しています。要するにProtocolとは、フォーマルなしきたりを指すのですね。
 
あれ?でもちょっと待てよ。こないだ観た映画ミッション・インポッシブルのサブタイトルに、「ゴースト・プロトコル(Ghost Protocol)」ってあったけど、あれはどういう意味なんだ?幽霊のしきたり?

「ゴーストっていうのは、まるで幽霊みたいに、そこにいた痕跡さえ残さないような極秘任務のことだと思うよ。この場合のプロトコルは、そういう作戦の手順を書いたもの、つまり指令ってことかな。」
とステヴ。ほほう、なるほど。そうすると、ゴースト・プロトコルの和訳は「極秘任務指令」ってとこでしょうか。

ピザ屋のサラダが歯の隙間にひっかかったおかげで、長い間ひっかかっていた「プロトコル」の意味をようやく理解することが出来たのでした。

2012年10月8日月曜日

Like a chicken with its head cut off. パニクってる

金曜日は朝の7時半からフロリダのプロジェクトチームと電話会議がありました。彼らが工事スケジュールの変更内容を伝え、サンディエゴにいる私がプリマベーラ(スケジュール・ソフト)をウェブ上で操作して彼らの確認を得る、という段取り。

真っ先に参加して来たのが、若いマイク。通常はもう一人のマイクとやり取りしているのですが、今回の更新内容は若いマイクの担当も含んでいたので、彼に助力を求めたのです。5分後にもうひとりマイクが加わり、後はPMのルーを待つばかりとなりました。
サンディエゴで朝7時半はフロリダ時間だと10時半。今回の電話会議は長引くことが予想されたため、彼らのランチタイム突入は避けられない見通し。若いマイクがランチ・デリバリーの手配を始めました。
「何がいい?サンドイッチ?ピザ?」
おじさんマイクがサンドイッチを選択。若いマイクが中身の特定を促します。

「ハムとスイスチーズ、それにピクルスをつけてくれ。俺はあのピクルスが大好物なんだ。」
「オーケー。ピクルスね。」

そして一拍置いて、若いマイクが尋ねます。

「シンスケは何にする?」

こういうボケに対する素早いツッコミが英語で出来ればかっこいいんだけど、まだまだそのレベルに至らない私。
「あ、じゃあ僕もハムとスイスチーズで…。」

と、どうしようもなく中途半端な切り返し。う~ん、我ながらダサいなあ。
「今週は滅茶苦茶な一週間だったぜ。やっと金曜日だ。」

とため息をつく、おじさんマイク。
「ルーはオフィスにいないの?」

と私。
「今朝見かけたよ。もうすぐ現れるんじゃないか?」

そして彼がこう続けました。
“He’s like a chicken with its head cut off.”

直訳すれば、
「首を切り落とされた鶏みたいだぜ。」

ですが、要するに「パニクってたぜ」ということですね。ニワトリって、首を落とされた後も暫くあたふたと駆け回るらしく、それになぞらえているのです。ルーが大忙しで駆け回っている様子が目に浮かんで、大爆笑してしまいました。
アメリカ人なんだから当たり前なのかもしれないけど、こんな風に軽妙なイディオムが口をついて出て来るなんて羨ましいなあ、と思ったのでした。

2012年10月4日木曜日

Snippet ほんのさわり

同僚と話していると、こんな発言をたびたび耳にします。

“Let me give you a snippet.”
Snippetを話すね。」
このSnippet (スニペット)はIT用語として知られていて(実際は「スネペ」と聞こえます)、よく「プログラム言語の中で簡単に切り貼りして再利用できる部分のこと」と紹介されます。でも、これが日常会話でも結構頻繁に使われているのです。一体どういう意味なんだ?

ふと今日の午後、この疑問を思い出して同僚シャノンにぶつけてみました。
「スネペってさ、概要(Summary)のこと?たとえばさ、セミナーに参加してきた人が会社に戻ってスネペを話す場合、セミナー全体のあらましを話すわけ?」

「違うわ。そういう使い方をする人もいるかもしれないけど、間違いね。ほんの一部、という意味よ。」

「え?そうなの?」

そこへ、隣のキュービクルからステヴ(人類学者)が上半身だけ振り向いて補足します。
Snip (スネプ)は短く切り取る、という意味だから、Snip it (スネプ・イット)を縮めた結果そういう単語になったんだと思うよ。」

な~るほど。「ポストイット」みたいな感じね。
「一番いいところって意味になるの?」

「ううん。切り取り方はその人の自由よ。つまんない部分を切り取る人もいるかも。」

と、シャノン。それで分かりました。私の和訳はこれ。
“Let me give you a snippet.”
「ほんのさわりだけ話すね。」

「じゃさ、何か例は無い?ほら、ステヴはよく人類学系の調査に出かけるでしょ。それを僕らに話してくれるっていう想定でさ。」
するとステヴは「いいのがあるよ。」と言って全身をこちらを向けて話し始めました。

「こないだの調査でさ、一緒に組んだ年長の専門家がいてね。彼が食事中に自分の体験談を披露してくれたんだ。」
コロラド川沿岸の砂漠の村に、砂に穴を掘って住んでいる部族Sand People(サンドピープル)がいるのだと。彼らの身長は1メートルに満たない。巨大な頭部と短い四肢、そして太鼓腹が特徴。滅多に姿を現さないが、水を溜めた鉢を地面に置いておくと、夜中に穴から這い出してくる。ある家の地下にサンドピープルが棲みついてしまい、夜な夜な物を盗んで行くため、その専門家が呼ばれて彼らを追い払ったのだとか。

「ええ?それ、ホントの話なの?」

「彼は大真面目だったよ。」

「じゃ、その人はサンドピープルを目撃したわけだね。」

「そう言ってたよ。姿かたちはテレタビーに似てるんだって。」

「て、テレタビー?」
う~ん、強烈な話だなあ。

“That’s a snippet of my field trip.”
「それが僕の出張話のほんのさわりだよ。」

思いっきり眉唾っぽいんだけど、お陰でsnippet の意味が理解出来たのでした。

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訂正です。
文化庁のウェブサイトによると、「さわり」とはもともと義太夫などの「聴かせどころ」つまりクライマックスを意味する言葉だとのことです。「ほんのさわり」は間違った日本語だったのですね。すみません。「ほんの一部」と訂正させて下さい。
(09/30/14)